本編





「よし、やろう!紀子!」
「ええ。でも、その前に少しだけ聞いて。レン。」
「いいけど、どうしたの?」
「私ね、さっき眠っている間に色々なものを見て来たって言ったけど、その時に本当のお父さんとお母さんに捨てられた時の事も、思い出していたの・・・」










ーーごめんな、紀子。もう一緒にいられなくて。でも、浦園君がいるから大丈夫さ。



ーー私達は、紀子の幸せをずっと願っているわ。だから、じゃあね。










「・・・あの時、多分私が嫌に思わないようになるべく優しく接してたと思うんだけど、その時のお父さんとお母さんの目はもう私じゃなくて、多額のお金で築かれた、私のいない自分達の平和な生活・・・それだけを見ていたのが、小さい私にも分かったわ。」
「僕も最初聞いた時は、あんなに優しかった紀子のお父さんとお母さんがそんな人だったのかって思って、ショックだったよ・・・」
「多分、私が普通の子だったらそうはならずにずっと家族でいてくれたのかな、って思う。私は改めて普通じゃない、場違いなモノ・・・巫子と言う名の「G」なんだって思って、Gnosisでの日々もそれを理由にして耐えられた・・・でも、本当はそんな私を『守田紀子』として見てくれるみんなが・・・」






『・・・耐えろ、紀子。第三「G」化が終われば、お前は爾落人と同様の存在になる。そうすれば、もう苦しむ事はねぇんだ・・・
いつか絶対に、レンに会わせてやる。だから、それまで一緒に頑張ろうぜ・・・!』



『紀子ちゃん、能登沢君は今日も元気に友達と遊んでいたから、安心して。
だから、また能登沢君に会えるその日までに、能登沢君が腰を抜かしちゃうくらいにうんとキレイな女の子でいましょうね。』



『そう、月経が来たのね・・・
でも、落ち込まないで。紀子さん。それは貴女が場違いなモノなんかじゃなくて、確かに「女の子」である証なの。
だから、どうか自分をバケモノだなんて思わないで。わたし達はいつでも貴女の味方と言う事を、忘れないで。』



『守田、ちょっと被写体になってくれねぇか?
なんでかって?そりゃ、お前が美少女だからに決まってんだろぉ?
あっ、そうそうこの前おれがリーダーに紹介した「GALLERIA」ってサイトだけどなぁ、ここの管理人のコンドウってのが・・・』



『紀子ちゃん、今度俺とお忍びでメシ食いに行かへん?めっちゃ美味しいたこ焼き屋見つけてな・・・
えっ?なんでお忍びかって?だって、紀子ちゃんみたいな美人が街ブラブラしてたらスカウトされへんわけ無いし、そんなんめんどくさいやろ?
「Gnosis」に咲く一輪の花の紀子ちゃんは、誰にも渡さへんで~!』



『すまないが、守田。能登沢憐太郎との過去を聞かせてくれ。
理由は、お前にとって最も大切な男なのなら自分も知っておくべきだと思った、それだけだ。
心配するな、もし本人と会う機会があった時に手荒な真似をしない為でもあるからな・・・』



『聞いたよ、紀子ちゃん!紀子ちゃんもアニメが大好きだって!
僕もアニメが大好きだからさ、これから色々と話そうよ!
ちなみに、どんなアニメが好き?僕はね・・・』



『守田、まずはダイゴロウを見るんだ!
ダイゴロウは人生で何が良くて何がダメなのかを教えてくれる、人生の教科書のような特撮番組だ!
にも関わらず、弟だけで無く俺以外のメンバーの誰もダイゴロウを見ようとしない・・・だから、守田はちゃんとリアルタイムで見て欲しいと思っている!』






『それから、それから!僕は・・・
君が、好き・・・!!』






「・・・験司兄ちゃんやGnosisのみんな、そしてレンの存在が私の中にあったから、私は耐えられて・・・」






『わぁ、こんな数式をすらすらと・・・ありがとうございます!やっぱり、守田さんってすごく頼りになる素敵な人だなぁ・・・』



『レンから聞いたんですけど、守田さんって巫子になってから運動神経やばくなったんですよね?だったら、おれ達と一回サッカーしてくれませんかっ!!』






『おはよう、紀子。今日もいい天気だね。だから、朝ごはん食べたらあの丘に行こっ!』






「レンや拓斗君に透太君は、等身大の女の子として接してくれて・・・」






『・・・じゃあ、父さんを『父さん』って呼ぶ練習をしようよ!』



『・・・おかえり。紀子ちゃ・・・
いや、紀子。』





「晋さんとレンが、私に『家族』をもう一度信じさせてくれた・・・私、幸せよ。やっと本当に『能登沢家』の一員になれた事。」
「・・・当たり前だよ。父さんにとっては紀子が家に来たあの日から、君は家族で・・・僕にとっては最初に会ったあの時から、君はずっと一緒にいたいって思った、運命の人なんだから。」
「ふふっ。そうやって、ちょっと恥ずかしいくらいの愛の言葉も胸を張って、私の目を見て言ってくれる貴方が・・・」






『世界中の人が君を化け物って言っても、君が何度傷ついても!僕は君の傍にいる!僕が、君の事を守る!もう離ればなれになんて、なりたくない!
僕は・・・僕は君が好きなんだぁーっ!!』






「・・・私は好き。大好き・・・!
だから、もう絶対に離れたくない。私はレンと、貴方とずっと一緒にいたい・・・!」
「僕も、君が大好きだよ。紀子・・・だから、何があっても二度と君と離れない。どんなに辛い事が立ちふさがっても、紀子を傷付けて引き裂こうとするなら・・・強い怪獣にだって、偉そうな大人にだって・・・神様にだって、僕は立ち向かう!そして、絶対に諦めない!」
「「だから・・・!」」
「私とレンを・・・」
「僕と紀子を・・・」
「「この勾玉で繋ぐ、みんなのガメラに!守る為の力を!」」




憐太郎と紀子の互いへの「愛」が最高潮に高まり、繋がれた手から発せられた勾玉の光の奔流が2人を包み込み、まるで柱のように天へと伸びる。




ヴォウァァァァォォオン・・・




2人の「愛」はガメラにこれまでに無い力をもたらし、腹部の紋章からの炎はまるで噴煙を上げるマグマのように、ガメラを一瞬で灼熱に染め上げた。




『玄武から、約400%のエネルギーゲインを確認。
原因、巫子の守田紀子と能登沢憐太郎からの「マナ」を変換したガイアの「G」の急速な供給。
第一抹殺対象の能登沢憐太郎へのターゲット変更は無し。
荷電粒子砲、発射準備・・・』






「そうは、させない!ギャオス・・・ボクの思いを、力に!」




ギャァオォォォォ・・・




ガメラからの最大級の攻撃を阻止しようと、エアロ・ボットは荷電粒子砲を撃とうとする・・・が、それを阻止せんと樹はありったけの思いを込めながら勾玉を翳し、樹の思いを受け取ったギャオスは天空よりの超音速の槍となって、エアロ・ボットを貫かんとする。




『朱雀、上空より超音速で接近。
直ちに荷電粒子砲発射を中止。
E・シールド展開に切り替える。』




・・・が、エアロ・ボットはすかさず「矛」から「盾」に持ち替え、E・シールドを展開してギャオスの必殺技を軽々と受け止めてしまった。
ギャオスは更に回転力を上げてシールドを穿こうとするが、エアロ・ボットの最強の「盾」はギャオスによる螺旋を描く一撃を受け続けても尚、ヒビ一つ入らない。




「ぐっ、ううううううううっ!!」




しかし、それでも樹とギャオスは攻撃を止めようとせず、痛みの共有によって伝わるギャオスの頭部の激痛に耐えながら、樹は勾玉を翳してギャオスに思いの力を与え続ける。




「子の不始末を、親が何とかするのなら!親の不始末だって、子が何とかする!ボクの故郷は、みんなは、家族は・・・父さんは!ボクとギャオスが、絶対に守る!だから、だからっ・・・!」






「・・・樹!!負けるなあっ!!」






「・・・ボクの心からの、この『気持ち』に!応えてくれっ!!ギャオスゥゥゥゥゥゥゥッ!!」




ギャァオォォォォ・・・!




樹の「気持ち」、ようやく実感した父への「愛」を後押しにしたギャオスはシールドを僅かに貫き、その隙間から超音波メスを発射。
回転しながらの切断光線は瞬く閃光のように周囲へ乱反射され、ギャオス自身の翼や足、胸部や顔を傷付けながら・・・一筋の光線が、エアロ・ボットのファンを両断した。




『背部ファン、破壊により稼働不能。
四大元素、チャージ不可。
E・シールド、展開不能。
荷電粒子砲、発射不可。
本機は・・・』




エアロ・ボットの「盾」は消え失せ、ギャオスは即座に翼を広げて空中へ飛ぶ。




「僕と紀子の!」
「私とレンの!」
「「想いをその手に!」」




それと同時にガメラは全身の炎を両手に集束させ、重ね合わせながら空に掲げる。
すると両手から凄まじい猛火が吹き上がり、天空を貫くかのような巨大な炎の剣が出来上がった。




「すげぇ・・・!これが進化したガメラの、レンと紀子の更に強まった想いの力か!」
「憐太郎・・・!紀子・・・!」
「「いけえええええええっ!!」」






「これが、私と!レンと!ガメラの最強の力!」
「バニシング!スォォォォォォォォォォォォォォォドッ!!」




ヴォウァァァァォォオン・・・!




そして、紀子と憐太郎の叫びを乗せてガメラは猛火の大剣「バニシング・スォード」をエアロ・ボットへ降り下ろした。
大剣は一瞬でエアロ・ボットを炎で焼き尽くし、核弾頭にも耐えうるペダニウムのボディを塵に変えて行く。




『・・・本、機は、戦と・・・不、の・・・
これ、以じょ・・・の・・・く、戦・・・遂、こ・・・不可・・・
ミ・・・ショ、ン・・・しっ・・・ぱ・・・
・・・申し、わ、け・・・ありま・・・せ、ん・・・
パレ・・・タ・・・さ、ま・・・』




紅蓮の中でアークは再び「最優先指令」を、自我を取り戻し・・・猛火の大剣が収まった後に広がる焼け野原には、つい先刻まで「エアロ・ボット」だったスクラップの破片しか残されていなかった。




「や・・・やったぁー!!」
「・・・本当に、やっちゃったよ。」
「やったね・・・!レン、ガメラ。それに樹と、ギャオスも。」
「うん。今なら胸を張って、言える・・・これは君達と、ボク達の勝ち。だよね!」
「はい!ありがとうございます、樹さん!ギャオス!」
「いいや、礼を言うのはボクとギャオスの方さ。ありがとう、『僕らの守護神』。」
「私からも、改めてありがとう・・・樹。ギャオス。ガメラ。レン・・・」
「僕からも、ありがとう。紀子、ガメラ。また、僕を必要としてくれて。僕と一緒に、戦ってくれて。僕の願いを・・・叶えてくれて。」




グォウウウウウ・・・



ギャヴォォォ・・・




互いに感謝し、笑顔で称え合う傷だらけの2人の巫子と、1人の男子。




「レン!紀子!やったな!」
「「験司兄ちゃん!」」
「無事で良かったよ・・・!憐太郎。紀子。」
「・・・ありがとう、お父さん。」
「大丈夫!僕達は、絶対に負けないよ!」
「樹・・・お前の決意と強さ、見届けたぞ。お前は、立派な男だ・・・」
「父さん・・・うん、ありがと。」




そんな3人を労り、見守る大人達。






「あっ!!ガメラととりさんがかった!!」
「「「やった~!!」」」
「俺達・・・助かったんだ!!」
「よかった・・・よかったわ・・・!」
「ああ、神よ・・・我らをお救いになられた、この世に舞い降りた二柱の神よ・・・」
『サンキューッ!!』
「「「ありがとう、ガメラ!!」」」
「「とりさんも、ありがと~!!」」




「・・・外の騒がしいのが、やっと終わったみたいじゃのう。樹と亨平も、もうそろそろ帰って来るかの?帰って来たら、色々と聞かんとなぁ・・・亨平がこの騒ぎを起こしとったのか、あの大きな亀と一緒におる大きな鳥が『ギャオス』なのか、のう?」




ガメラとギャオスを称える、福江島の人々。
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