本編







『ちょっと待ったっ!!』
「「「「!?」」」」




・・・と、そんな現場に聞こえて来る、やや場違いな感のある甲高い一つの声。
その乱入者に、一丸となってエアロ・ボットに立ち向かわんとしていた憐太郎達も意識を持っていかれ、既視感(デジャヴ)を感じた亨平が目を覚まし、声の主の名を呼ぶ。




「お、お前は・・・パレッタ、か・・・?」




そう、姫神島の前で引田と共に待機していた筈のパレッタと・・・




「おい、コラ!怪我人が待ちやがれっ!」




急いで彼女を追って来たと、誰もが推測出来る験司の姿であった。






『・・・創造主、パレッタ様の姿を確認。
創造主への、負傷の可能性を考慮し・・・攻撃行動を、一時停止する。』




パレッタの乱入はエアロ・ボットにも影響を与え、「生みの親は絶対に傷付けない」と言う、平司の野望の駒になってもなお「0と1の意識」の奥底に刻まれた、アーク自身の意思・・・創造主・パレッタへの忠誠心「プライム・ディレクティヴ(最優先指令)」が平司の悪意に染まったキルプロセスを上回り、エアロ・ボットはその動きを止めた。




「エアロ・ボットが、止まった?」
「パレッタさんって人が来た途端に、動きを止めたけど・・・」
「そうか!あの兵器は、パレッタさんが造ったんだ!」






「エアロ・ボットが、停止しただと!?どう言う事だ!キルプロセスが作動している以上、私の指示のみに従う筈・・・!!もしや、パレッタ君がいるからか?ガッデム!!」
「やはり、爾落人はその存在だけで全てを覆しかねないと言う事ですか。たかが約千年生きているだけの、取るに足らない爾落人だと考えていましたが、お父様に近い「G」を持つ『想造』のパレッタ・・・その力、十分に警戒する必要があるようですね?」







「すみません、こいついきなり『海の向こうから青龍が来る!』とか言ってオレ達を騙した隙に、いつの間にか逃げ出しやがりまして・・・」
『だって、エアロ・ボットちゃんはあたしが生み出した、あたしの子供みたいな存在なのよ!そんな我が子の勝手を、指を加えて見てなんていられないでしょ!』
「・・・だが、その理由ならば俺も、分からなくは無い・・・」
「そうだね・・・私や亨平のように、あのパレッタさんと言う人にとって、この兵器は何としてでも止めたい子供と同じなんだ・・・」
『あっ!あたしに酷い事して、エアロ・ボットちゃんを奪ったサイテー人間!何でここにいるのよ!』
「すみません、ボクの父親が迷惑を掛けたみたいで。でもこれはあの人なりに反省して、必死にエアロ・ボットを止めようとした結果なんです。だからあまり、責めないであげて下さい。」
「この人は・・・亨平さんは今はちゃんと樹とお父さんとして向き合って、全ての責任を取ろうとしました。それは、私達が保証します。」
「あなたと一緒にいた拓斗と透太にも、後で謝らせます。だから、今は許してあげて下さい!」
『・・・ふ~ん、そっか。じゃあ、今は許してあげよっかな?』
「い、意外とあっさりと言うか、軽い?」
「・・・すまないな。」
『千年生きてたら、キミみたいな人間にも何度か出会っちゃったりするしね~?まっ、その中でも筋金入りのサイテーさだったけど、反省しておしおきも受けたみたいだし、何より四神の巫子の紀子ちゃんと樹君に、ぴゅあぴゅあはーとなレンタ君に許してって言われたらねっ☆』
「何だか、凄い理由・・・」
「あ、ありがとうございます。」
「それで、お前は何しにここに来たんだよ?あれを止められるプログラムでも持ってんのか?」
『ん~っ、平司君にいじくり回されて勝手に付けられた「キルプロセス」って言うのがメインに書き換えられてるみたいだし、今は多分アークちゃんがあたしを見て動揺したから止まってくれてるけど・・・これはもう、完全に壊さないと止まらないわ。でも、エアロ・ボットちゃんはあたしが考えた「ペダニウム」って言う金属で出来てるから、普通に攻撃しても完全に壊すのは難しいし・・・じゃあ、「アレ」を教えるしかないか・・・』
「『アレ』?」
『・・・エアロ・ボットちゃんはね、矛と盾を同時に持てないんだ。』
「矛と、盾?」
「それって、『矛盾』って事?」
「どう言う事だ、何か弱点があるんならはっきり言いやがれ!」
「・・・エアロ・ボットは、攻撃と防御は同時に出来ない・・・つまり、荷電粒子砲とE・シールドを同時に展開出来ない、と言う事か。」
『そうだよ、堅物君。そして、エアロ・ボットちゃんは背中のファンを破壊されると、四大元素を取り込めなくなるの。』
「じゃあ、そこを破壊すればあの兵器を大幅に弱体化させられると言うわけですね・・・!情報、ありがとうございます!」
『ううん。あたしに出来るのは・・・これくらいしか、無いから。後は、みんなのヒーローのガメラとギャオスと、巫子のみんなに任せたっ!』






『・・・キルプロセス、最起動。
能登沢憐太郎の抹殺を実行する。』




最優先指令を書き換え、エアロ・シールドは再び殺人マシーンと化し、ターゲットの憐太郎目掛けて爆進して行く。
その様子を見る・・・いや、打倒エアロ・ボットの手段を伝えた辺りから、いつも通りに見えるパレッタの笑顔には、憂いが潜んでいた。




「憐太郎、紀子。ボクとギャオスで気を引きながら、後ろのファンを破壊出来ないかやってみる。だから2人はガメラにありったけの、火球攻撃以上の強い攻撃をさせてくれ。」
「ブレイ・インパクト以上の攻撃・・・分かりました、やってみます。」
「でも、ギャオスの旋回突撃も貫通性は高そうに思えるけど・・・」
「ボクにはまだ君達のような、強過ぎるくらいの愛は無い。なら君達じゃないと出来ない、君達だからこそ出来るって思えるんだ。それにガメラも、パワーアップしたんだろ?適任だよ。」
「・・・分かったわ。ありがとう、樹。レン、やろう!」
「うん!」
「ギャオス、ガメラを守りながらその兵器の後ろにあるファンを、破壊するんだ!」




ギャァオォォォォ・・・




樹の指示を受けたギャオスは槍形態となり、エアロ・ボットの背後へ距離を詰めて行く。
エアロ・ボットもその動き、ギャオスの狙いを察知し、その場で本体を回転させてギャオスに背中を見せないような体勢を保ちながらファンを回し、荷電粒子砲の発射準備をする。




「・・・パレッタ、俺が言えない立場なのは分かっているが、このやり方は我が子を殺させるようなものだ。本当に、破壊以外の手段は取れないのか?」
『だって、子供が悪い事をしたらひっぱたいてでも止めるのが親でしょ?それに壊さないともう止められなくって、その為の方法があるなら教えなきゃ。』
「子供の不始末は、親が責任を持って何とかする・・・と言う事ですね。」
『堅物君には少し話したけど、エアロ・ボットちゃんを造った時ね・・・あたしの友達だった能力者の子が、ネットからの悪口で袋叩きにされ続けて自殺しちゃったって事があって、今の人間達へのほんのちょっとの復讐心を入れちゃったんだ。だから、今のエアロ・ボットちゃんはあたしのサイテーな気持ちの現れなのかもって思えるし、そんなサイテーな気持ちに惑わされた、あたしにも責任はあるから・・・
ほんとはね、教えたくなかったんだよ?でも、レンタ君達を死なせるわけにはいかない。あたしの子供に・・・そんな事は絶対にさせちゃダメだから。』
「・・・お前は親としても、俺より上だったと言う事か・・・」
「千年も生きると言う事に、想像が追い付かない所はあるけど・・・やっぱり、千年生きても人間としての根っこの所は変わらないんだろうね。」
「引田に叱られるような所もな?でもまぁ、そんな感性がお前にあったとはオレも驚きだけどな。」
『失敬な!本当ならあたしは仙人みたいに崇められたっていいんだよ?トゲトゲ君!』
「そう言う所があるから、マトモに崇められねぇんだろうが!ってか、そのトゲトゲ君って言うふざけた呼び名をいい加減止めやがれ!」
「ふふっ、まぁ許してあげて。験司君。でもこれは、私がこれまでやって来た事も・・・お前がこれからやろうとしている事も、間違ってはいないと言う事さ。亨平。」
「・・・そのようだな、晋。」
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