本編





「樹さん。また巫子に戻れて、良かったですね。」
「あっ、その・・・さっきは、ごめんなさい。それと、ありがとう。」
「いいえ。それから、きっと貴方もレンに何か言われて変わったのね。さっきの貴方より、いい感じで自分に正直になれてる気がする。」
「それは余計だよ。ほんと彼氏も彼女も、ボクが気にしてる事をあっさり言うカップルだよね・・・でも、あながち間違っては無いし。今のボクなら許せるから・・・まぁ、いいや。」
「私も、今の樹さんはいいと思い・・・」
「樹、でいいよ。敬語気味な喋りもいらない。同い年みたいだし、もうただの他人じゃないし。」
「・・・分かったわ、樹。」
「ありがとう、紀子。」




二度目の巫子同士の会話は何のすれ違いも無い、お互いに笑い合えるものに終わった。




「あっ、でも彼氏の方はボクに敬語、使ってね?気付いたらタメ口だし、一応年下だし。」
「は、はい。」
「もう、いいじゃない樹。レンだって・・・」
「まぁまぁ、憐太郎は確かに感情が高ぶると少し口が悪くなる所はあるから、そこは直さないとね?」
「と、父さんまで・・・」
「ただ、そんな憐太郎にみんなが共感して、励まされて・・・いつもの自分より、強くなるんだ。今は許してね、樹君。」
「分かってます。だって、あいつが・・・憐太郎が、なりたい自分になっていいって言ってくれたから、ボクはまたギャオスと繋がれた。それは間違い無いですから。」
「樹さん・・・ありがとうございます。」
「さて、ガメラもギャオスも復活したから、後は亨平をどうにかしないとね・・・」
「あいつは、父さんは今あのエアロ・ボットとか言う兵器と、一緒にいるんですよね?それならまず、兵器を止めてからじゃないと・・・」
「・・・ダイレクトに思いを届けたいなら、目の前に行かないと。」
「えっ?」
「お父さん、それって・・・」
「行こう、直接亨平の元へ。験司君、私は憐太郎と紀子と樹君を連れて亨平に会いに行ってくるから、光先生達と一緒に拓斗君と透太君を見ていてくれないか?」
「それはいいですが・・・相当な危険が伴います。やっぱりオレくらいは・・・」
「君は、憐太郎達の『帰る場所』を守って欲しい。それに危険だからこそ・・・『僕らの守護神』がいるんだろう?」
「・・・分かりました。必ず無事に帰って来いよ、レン。紀子。」
「遊樹君と城崎君は、私達が守ります。だからどうかみんな、ここに帰って来て・・・」
「レン、守田さん、頼んだよ!」
「あんなデカブツ、ぶっ潰しちまえっ!!」
『それならあたしも一緒に、レッツ・・・』
「それは駄目よ。貴女もまだ怪我がちゃんと治っていないんだから。わたしと一緒にここで待機する事。いいわね?」
『はぁ~いっ・・・』




ギャォォゥ・・・


ギャァォォ・・・




「大丈夫。ボクは絶対に、お母さんと一緒に帰って来るから。ここで待ってて。」
「じゃあ、行こうか。」
「「うん!」」
「はい・・・!」




憐太郎・紀子・樹・晋は験司達に手を振りながら、亨平がいる戦場へと向かった。










ギャヴォォォ・・・




その戦場では、ギャオスがエアロ・ボットからの激しい対空攻撃を受けていた。
正確無比なエアロ・ボットのレーザー攻撃は、本来なら地上側が不利な筈の地対空と言う状況を覆しかねない程であり、戦闘機以上の高速飛行が可能なギャオスだからこそすんでの所での回避が出来ていた。
通常の飛行と槍形態による飛行を駆使しての回避後に、何度か超音波メスでの攻撃を試みてはいたが、E・シールド抜きでも全身をペダニウムで構築されたエアロ・ボットには少しの切り傷程度しかダメージを与えられず、直ぐに即時回避しなければ確実に命中してしまうレーザーによる反撃が来る。
ギャオス一体では、現状維持が精一杯であった。




「ちょこまかと、億劫なバケモノめ・・・!だが、AIを侮るなよ・・・貴様は不規則に動いているつもりだろうが、思考しての行動である以上は、規則性は必ず存在する!そしてそれを、エアロ・ボットは逃さん!」




亨平が力説する通り、エアロ・ボットのレーザーは少しずつギャオスの軌道を予測・捕捉し、「当たりそう」な攻撃の確率を確実に増やして行く。




「一撃だ・・・一撃でも命中させた時、貴様はもう逃れられない!そして次は、荷電粒子砲だ!!」




必殺の一撃へと導くレーザー攻撃を、ギャオスは急上昇と急降下を駆使して回避する・・・が、レーザー攻撃は三段仕立てであり、ギャオスが急降下すると予測した三回目のレーザー攻撃が、急降下後に体勢を立て直す一瞬の隙を突くように、ギャオスに迫った。




グァヴウゥゥゥヴァァン・・・




・・・が、ギャオスに命中する筈だったレーザー攻撃は、突如割り込んだ玄の色をした鱗のような壁に妨害された。
壁はレーザー攻撃の直撃を受けながら健在であり、亨平だけで無くギャオスも驚愕する。




「なっ!?き、貴様は・・・やはり、貴様も俺の邪魔をするのか・・・!玄武!!」




そう、ガメラがギャオスをその背で庇ったのだ。
憐太郎と紀子の願いを聞いたガメラは、背中の壁・・・甲羅でレーザー攻撃を軽々と受け止めながら、悠然とした表情で先程までは争い合っていた相手へ、もう今は敵では無い事を伝える。




ギャァオォォォォ・・・




ギャオスもまた敵として傷付け、それでも樹の事も守ろうとしていた目の前の相手へ、一度頭を下げて感謝の意を示し・・・翼を羽ばたかせてガメラの壁を一瞬で飛び越え、エアロ・ボットへ超音波メスを発射した。
ガメラもまた振り返り様に、以前よりも火力が増した火炎を口から噴射し、エアロ・ボットのレーザー発射口に同時攻撃を浴びせた。




「ぐううっ・・・!」




ギャオスの超音波メスだけでは傷しか付けられなかったエアロ・ボットも、ガメラの火炎噴射が加わる事によってダメージが上乗せされ、形状に歪みが生じたレーザー発射口は機能不全に陥った事で、レーザー攻撃が不可能になった。




ヴォウァァァァォォオン・・・



ギャァオォォォォ・・・




ガメラとギャオスは天高く舞い上がり、阿吽の呼吸で空中で交差するとそれぞれ円盤飛行・槍形態となって、エアロ・ボットへ向かって行く。
今ここに、玄武と朱雀・・・「護る者」が力を合わせ、「壊す者」に立ち向かわんとしていた。






「見て、兄者!ガメラと朱雀が、一緒に戦ってるよ!」
「本当だ!これは、ダイゴロウとゴリアスがザノン星人を倒す為に初めて力を合わせた時の感動に匹敵するぞ!」



「どうやら我らのガメラ様と仲直りしたようだなぁ、朱雀様よぉ!当然、バッチリ撮らせて貰うぜぇ!」



「巨大「G」、いや四神同士の共闘は初めて見るが・・・この根拠の無い勝利への確信は何なんだ・・・一先ず、メモさせて貰うぞ・・・!」



「よし、深紗さんも首藤さんもおらんし、ええやんな・・・!
いけぇ~!!いてこましたれ~っ!!」






「「「ガメラだ~!!」」」
『ゴー!ゴー!ガメラ~!!』
「あんなのぶっこわせー!!」
「ねぇ、ガメラとあの怪獣・・・一緒に戦ってない?」
「だよな?」
「じゃあやっぱり、あの怪獣はいい怪獣なのね!」
『オー!ブラボー!!』
「なら、どっちも応援するぞ!!」
「「お~!!」」
「ああ・・・どちらもきっと、わしらを救って下さる神様なんじゃ・・・ありがたや、ありがたや・・・!」
「「「いけ~!ガメラ~っ!!」」」
「「「とりさんも、いけ~!」」」



「パパ!ママ!ガメラがきてくれたよ!しかも、とりさんとなかよしだったんだね!」
「そうだな。きっとガメラが来るまで、一人で頑張ってたんだ!」
「でも、もう安心よ。だからみんなで、ガメラと朱雀さんにエールを届けましょう!」
「うん!がんばれ~!!ガメラ~!!とりさぁ~ん!!」




Gnosis達と島民達の、期待の目線と激励を受けたガメラとギャオスはエアロ・ボットの荷電粒子砲を回避し、ギャオスの鎌鼬とガメラのエルボー・クローが、エアロ・ボットのサブアームを湾曲させた。
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