本編





「「守田さぁ~ん!」」
『眠り姫のお目覚めだ~!どんな巫子なのか、観察させて貰いま~すっ♪』
「起きたばかりだから、それは程々にしてね?パレッタさん?それはさておき、無事そうで安心したわ。紀子さん。」
「本当に、起きたんだ・・・」
「起きてくれて、本当に良かったわ・・・紀子ちゃん・・・!」
「・・・待ってたぜ、紀子。」
「験司兄ちゃんに、光さんに引田さん・・・それに、拓斗君と透太君と・・・貴女は?」
『まぁまぁ、細かい事は気にしないっ☆』




暫し後、紀子に優しい言葉を掛けながら近寄る験司達。
眠っていた間に、この場にいる筈の無い2人と知らない1人が加わってはいたが・・・




「紀子・・・はっ!?ご、ごめん!いきなり抱き付いちゃって・・・!」
「ううん。それより、やっと私を抱き締めてくれたね。レン。」
「え、ええっと・・・はい。」
「・・・おかえり。紀子ちゃ・・・
いや、紀子。」
「・・・ただいま。皆さん。
ただいま・・・お父さん。」




誰もが自分が目を覚ました事を喜んでくれる、温かい人の輪。
右手を開くとそこにあった、ヒビ一つ無い美しい光沢を放つ翡翠の勾玉が、ここにいる「誰」もが自分の存在を望んでいる事は確かに分かった時、紀子は自然と晋を「お父さん」と呼べたのだった。




「あっ、勾玉が元に戻ってる!と言う事は、ガメラも・・・!」
「いえ、ガメラはまだ眠っているわ。でも、私も眠っている間にガメラの記憶の一部を見て来たの。少しおぼろ気だけど、確かにガメラ・・・玄武が天まで届きそうな巨大な塔のある町を、龍と虎に似た怪獣と無数のギャオスと共に滅ぼしているのを見たわ。」
「「!?」」
「おい、それってアトランティス滅亡の時の記憶か!?」
「ボクもギャオスと繋がりが切れた後に、同じような夢を見たよ。無数のギャオスはきっと、昔のギャオスの子供達だと思う。」
「それなら、残り二体の龍と虎の怪獣は四神の青龍と白虎と言う事・・・?」
「そんな、ガメラもアトランティスを滅ぼしてたなんて・・・」
「お、おれは信じねぇぞ!!きっと、悪い奴に操られてたんだ!!」
「それは間違いかもしれないし、そうじゃないかもしれない。樹さんがギャオスから聞いた通り、昔の玄武は全く違う人格・存在だったみたいだから・・・」
「・・・でも、今は違う。玄武なんかじゃない、今はガメラさ。みんなを怪獣から守る、僕らのガメラなんだ。そうだろ?拓斗。透太。」
「「うん!!」」
「そうよ、レン。私はその後東京で験司兄ちゃんとGnosisに入って、巫子としての力を上げていた辛い日々の事と・・・つがるに帰ってからレンと、みんなと過ごした愛おしい日々も思い出して・・・改めて思ったの。
確かに、昔のガメラはアトランティスを滅ぼした、凶悪な存在だったかもしれない。でも、痛みに耐えてなった『玄武の巫子』の誇りに掛けて、今の玄武は・・・ガメラは絶対にそうはさせない。それが、私が巫子になった理由なんだって。でも、その側にはやっぱり貴方がいないといけないの。レン。」
「そうさ、紀子。今あそこにいるのは・・・『僕らの守護神』、ガメラなんだ・・・!!」
「私は、2人を信じるよ。憐太郎、紀子。お前達の言う事を・・・お前達なら出来ると、ね。」
「お父さん・・・」
「ありがとう、父さん。」
「お願い、ガメラ。また一緒に戦わせて。私とレンの心に触れて・・・私もレンも・・・いえ。世界中の人々が、貴方を待っているの・・・!」
「僕と紀子の、みんなの声を聞いてくれ・・・僕の、紀子の、みんなのガメラ・・・!また僕と紀子と一緒に、あの空を飛ぼうよ・・・!」
「「だから、起きて・・・ガメラ!!」」




憐太郎と紀子は手を繋ぎ、繋いだ手と手に重なる勾玉に願いと「愛」を込めながら、動かないガメラへ叫んだ・・・










・・・グァヴウゥゥゥ・・・!




・・・その時、ガメラの全身が炎に包まれると同時に、辺りに突然振動が起きた。
それは地面だけで無く、空間そのものを揺るがすような小刻みな感覚であり・・・




「うおっ!!」
「じ、地震!?」
『ちょっと違うかなぁ?だって揺れてるのはこの場所そのものって感じだし、何よりあたしの杖がビンビン反応してるっ!』
「その杖、「G」の探知にも使えると言っていたわね?」
「じゃあ、この揺れは・・・」
「あぁ。間違いねぇ・・・!」
「感じる。そう、これはきっと・・・」






「「・・・さぁ、行こう!」」
「僕と・・・」
「私と・・・」










「「みんなの、ガメラ!」」






ヴォウァァァァォォオン・・・!




振動が収まり、勾玉「玄冥」が緑色に輝き・・・纏った炎を振り払いながら雄々しく立ち上がる、復活の咆哮を上げるガメラの姿がそこにはあった。




「「や、やったあぁぁぁ!!」」
「ほんとに、復活した・・・」
「やったね。憐太郎、紀子・・・!」
『これが四神・玄武・・・いえ、僕らの守護神のガメラなのねっ!!つよいぞガメラ~♪』
「・・・ねぇ、引田。験司。ガメラの姿が、少し変わってない?」
「ガメラの姿が?確かに、多少の変化が見られるわね・・・」




蛍の指摘通り、復活したガメラは基本的なフォルムに変化は無かったが、全身の色が玄により近くなり、両肘の暗器であるエルボー・クローは以前より大きく鋭くなった事で、常に付き出した状態になっていた。
顔も精悍な印象が強くなり、誰もが見て進化を果たしたと思える容貌だ。






「大臣、朱雀に続いて玄武が復活しました。」
「ほう、以前よりアヴァンに近付いたあの姿・・・グッジョブ!」




上空のヘリから静観する平司も、ガメラの進化に強い興味を示していた。




「だが、グレートとは言えない・・・何故なら、あくまで『近付いた』だけで『アヴァン』では無いからね・・・やはり、あのグリーンユースが邪魔をしているのか・・・本当にグロリアスッ!!」






「・・・あの姿は、きっとレンと紀子の思いにガメラが応えた『絆』の姿だ。オレはそう思うぜ。」
「私もそう思うわ、験司。だって、あれを見たら・・・きっとそうだと、思えるもの。」




平司が結局は辛辣な評価を下す一方で、験司と蛍は正反対にとても満足気な印象を抱いていた。




「「・・・おかえり、ガメラ!」」





グォウウウウウ・・・




ガメラに歩み寄る憐太郎と紀子。
憐太郎と紀子を受け入れるガメラ。
ガメラが新たな姿となった理由が、目の前にあったからだ。




「ガメラ、今エアロ・ボットって言う兵器が暴れてる。ギャオスの巫子の樹さんのお父さんが、ギャオスも君も・・・「G」を全部、無理矢理消そうとしているんだ。」
「ギャオスは樹さんを、あそこにいるたった二匹の子供を守る為に、今必死にエアロ・ボットと戦ってるの。貴方がこれまで子供達を、みんなを守る為に戦って来たように・・・」
「だから、ギャオスと一緒にエアロ・ボットと戦ってくれ!」
「私とレンと貴方、それから樹さんとギャオスで、エアロ・ボットを・・・」
「樹さんのお父さんを、止めるんだ!!」




ヴォウァァァァォォオン・・・




ガメラは頷く事で2人の願いに答え、両足からジェットを噴射して空へ飛び上がった。
更に両手を真っ直ぐ広げて腕の裏から鰭を伸ばし、まるでウミガメの前足にも似た形状に変形させると、これまで以上の速度でエアロ・ボットとギャオスが激戦を繰り広げる戦場へ向かって行った。




「おお~!!はえ~っ!!」
「ガメラ、やっぱりパワーアップしてるよね!」
「より高速で飛行する為の、一時的な形状変化・・・能登沢さんと紀子さんの強い感情が、ガメラに著しい変化・・・いえ、進化をもたらしたと考えていいわね。幼体の時もそうだけれど、多くの無駄と時間を経て行われる進化を一瞬にして果たす・・・やはり巨大「G」は、四神は常識に当て嵌められない存在ね・・・!」
『さっすがみぃちゃん♪あたしの心の友だけあって、目の付け所が違うっ!』
「わたしは貴女の友達になった覚えは無いわよ。それに貴女も千年生きているなら、能登沢さんを追い込むような空気の読めない事を言うのはやめなさいっ!」
『は、はいいいっ!』



ーー・・・千年生きようが、人間は大して進化しねぇって事も分かった気がするな・・・
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