本編







ギャォォゥ・・・


ギャァォォ・・・




「・・・小さい、ギャオス?」




姫神島内部では、奥に入った憐太郎が子ギャオスを発見していた。
樹以外の人間を見た子ギャオスは、幼体とは思えない険しい顔付きで憐太郎を睨み、威嚇する。




「ま、待って!僕は君達に危害を加えに来たわけじゃないんだ!話を聞いてくれ!」




憐太郎は両手を前に出しながら必死に子ギャオスを宥めるが、親がいない事もあって子ギャオスの警戒心は頂点に達しており、口を開いて超音波メスを発射しようとする。




ーー・・・ここで、背中を見せたら駄目だ・・・!
多分、あの大きなギャオスと同じ技を使おうとしてるんだろうけど・・・何とかかわすんだ・・・!




憐太郎もまた覚悟を決め、子ギャオスの攻撃に備える。
暫し後、子ギャオスは超音波メスを発射。
親ギャオスのものに比べるとかなり細いが、それでもカッターに等しい光の刃物が憐太郎の首目掛けて進んで行く。





ーーまだ・・・死ねない!
僕は、紀子を助けるんだ・・・!!




憐太郎は足を少し屈ませ、すんでの所で超音波メスをかわす体勢に入る。




『そこまでっ!』



・・・が、そこに聞こえてきた場違いな程に高い声と共に、憐太郎の前に唐突に鏡が現れる。
超音波メスは鏡に吸い込まれて憐太郎に当たらず、そのまま鏡の中へ消えて行った。




ギャォォゥ!?


ギャァォォ?




「えっ!?鏡・・・?」




憐太郎と子ギャオスが同時に驚く中、憐太郎の後ろの出口から鏡を出した張本人・・・パレッタが入って来た。




『九死に一生、だったね~?キミが能登沢憐太郎君?』
「は、はい。」
『あたしはパレッタ!「想造」の芸術家にして、「G」の探求家だよ☆長くなるから詳しくは省くけど、キミと紀子ちゃんを探しにキミの友達と一緒に来たんだ~。』
「「想造」・・・と言うか、僕の友達ってまさか、拓斗と透太ですか!?」
『そうだよ~?今はみぃちゃんと一緒にトゲトゲ君に預って貰ってるから、ここはあたしに任せて会いに行って来なっ☆』
「えっ?でも・・・」
『あたしなら大丈夫♪と言うか朱雀の子供なんて、あたしも色々確かめたくてたまんないしっ!だからほら、友達と感動の対面をして来なよ~♪』
「あ、ありがとうございます!」




疑問は色々あれど、パレッタから妙な安心感を感じた憐太郎は踵を返して洞窟の出口に向かった。
一方でパレッタは憐太郎に手を振ると、自分に威嚇のターゲットを変えた子ギャオスを観察するように見ながら、溢れ出る好奇心からニヤリと笑う。




『それにしても、子供なのに同じ攻撃が出来るなんて、やっぱり四神の子供はスゴいね~♪ワクワクが止まんないっ☆さぁ、迷える子朱雀ちゃん?おね~さんの胸に、飛び込んで来なさいっ!』






「あっ、レンだ!」
「お~い!!レ~ン!!」
「ほんとに、拓斗と透太だ・・・!拓斗~!透太~!」




洞窟を出た憐太郎は、拓斗・透太と対面。
験司・蛍も合流した引田と共に紀子を見ながら憐太郎の無事を確認し、晋は憐太郎に駆け寄る。




「無事か、憐太郎?」
「うん。大丈夫。」
「良かった・・・」
「レン、それで中で何があった?」
「えっと、中に二匹の子供のギャオスがいた。攻撃されたけど、僕を助けてくれたパレッタさんって人に任せてって言われたから、帰って来たんだ。」
「そう・・・ちなみにね、昨日験司が言ってたつがる市で紀子ちゃんを探していた人、そのパレッタさんみたいなの。」
「パレッタさんは『爾落人』って言う、「G」を産まれながらに持っている人で、千年くらい生きている人なんだって。」
「何でもその場で作っちゃう人でよ、おれと透太を鏡みたいなので一瞬でここで運んでくれたんだぜ!」
「そ、そうなんだ・・・」


ーーあの鏡は、瞬間移動する為の道具だったのか・・・
それで、「みぃちゃん」は確か本名が「深紗」だった引田さんで、「トゲトゲ君」は・・・験司兄ちゃん?


「それで、こいつらが言うにはエアロ・ボットもあのパレッタが造った兵器らしいんだが、兄貴と逸見に騙されてああして駒として使われちまったようなんだよ。」
「わたしは逸見さんに襲われて負傷したパレッタさんを、遊樹さんと城崎さんが支えているのを見て、治療してから同行したの。」
「分かりました。それにしても、あの人を騙して手に入れた兵器であんな事をするなんて・・・酷い奴らだ・・・!!」
「亨平は更に、パレッタさんと一緒にいた拓斗君と透太君にも銃口を向けたらしい・・・あいつはもう、本当に手段を選ばなくなっているようだ・・・」
「ごもっともだなっ!んでよ、あの中に子供がいたって事は朱雀はママって事だよな?」
「レン、きっと朱雀・・・ギャオスは子を守る為に必死に戦っているんだ。『大巨獣ガッパ』と一緒だよ。」
「ガッパと・・・じゃあ、ギャオスにとってきっと樹さんも自分の子供みたいな存在なんだ・・・!だからあんなにガメラに攻撃を仕掛けて、今も・・・」




憐太郎がギャオスの真意に気付いた、その時。
街の方から一筋の閃光が走ったかと思うと、その閃光に押されたギャオスが姫神島付近の海岸線に叩き付けられた。




「「うわあっ!?」」
「大丈夫かい、2人共!?」
「「「あれは!」」」
「ギャオス!」




ギャァオ・・・ォォォォ・・・




海岸線に倒れ込むギャオスの腹部は閃光・・・エアロ・ボットが放った、対象を原子レベルにまで分解する必殺光線「荷電粒子砲」によって、臓器が見えそうな程に抉り取られ、酷く化膿していた。
幸い、すんでの所で無理矢理胸部から出した煙をコーディングして防御した為、命に別状は無かったが、ガメラとの戦いの傷が癒えぬままの体で負ったこの深手は、ギャオスから再起させる余力を大幅に奪う。




「あ、あれが朱雀か!?」
「ひ、酷い怪我・・・」
「元々重症とは言え、四神の一体へ簡単に致命傷を負わせるなんて・・・」
「あの兵器、こんな武器まで隠し持ってやがったとはな・・・!」
「爾落人が造った兵器だからでしょうね・・・間違いなく、ガンヘッド以上の兵力よ・・・」
「ギャオス・・・やっぱり、あそこにいる子供と、樹さんを守る為に・・・」
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