本編







「進め!エアロ・ボット!!障害を全て排除しろ!!」




その頃、町ではエアロ・ボットが平司・亨平共通のターゲットがいる姫神島への進撃を続けていた。
Gnosis隊員達によって住民の大半は避難し、死亡者が確認されてはいないものの、エアロ・ボットの進む先は家も、店も、教会も、その全てが強靭なキャタピラに押し潰されて行った。
二本のアームも、ミサイルも、光線も使わず、目標へ向けて進む・・・ただそれだけで、新たなる合金「ペダニウム」でその体を固めたエアロ・ボットは、破壊と被害を生み出す兵器であった。




「ほんま、なんて奴なんや・・・!歩く解体屋かいな!」



「自分達が避難誘導を始めたのは、ギリギリのタイミングだったのかもしれない・・・もし、少しでも避難誘導が遅れていたら、どうなっていたか・・・!」



「こんな時、ダイゴロウさえいれば!お~い、ダイゴロ~ウ!聞こえるか~いっ!!」
「兄者!ダイゴロウは現実にいないから!せめてガメラにしとこうよ!」






「よぅし、あんたらで最後だ!精一杯走れよ!」
「「は、はい!」」
「うっ、ふえっ・・・」




Gnosis達がエアロ・ボットの脅威を感じる中、首藤は逃げ遅れた3人の親子――今にも泣きそうな娘を背負った父親と、必要最低限の荷物を持った母親――と共に、野良猫すら見当たらない道路を全力で走っていた。
その理由は、静閑な道路にこだまする奇妙な駆動音・・・エアロ・ボットの接近を知らせる音が、だんだん大きくなって来ていたからだ。




「ちっくしょぉ!あんのデカブツ、よりにもよってこっちに来やがってよ!」
「パパ、ママ、こわいよぉ・・・!」
「心配するな!お父さんにお母さん、それにこの人もいるぞ!」
「大丈夫、パパとママが絶対に守るから・・・もう少しの辛抱よ・・・」




必死に逃れようとする首藤達だが、移動速度が違い過ぎるエアロ・ボットとの距離は広がるどころか確実に縮められて行き、遂に右斜め後ろの方角からエアロ・ボットがマンションを破壊しながら出現。
瞬く間に瓦礫に変わったマンションと、強引に折られた電柱が首藤達に降りかからんとしていた。




「はっ・・・!」
「なっ!?」
「あ、危ねぇっ!!」
「うわああああああああん!!」






・・・ァオォォォォ・・・!




・・が、その全ては首藤達に降り注ぐ事は無かった。
空に輝く太陽を背に、巨大な影が放った閃光のメスがエアロ・ボット諸共、瓦礫と電柱を切り裂いたからだ。




「・・・あれ?私達、生きてる・・・?」
「俺も、怪我一つしてない・・・」
「ねぇねぇ、パパ!ママ!あのおっきなとりさんはな~に?」
「す、朱雀・・・!」




ギャァオォォォォ・・・




そう・・・朱雀、またの名をギャオスによって。
ギャオスはあくまでエアロ・ボットの破壊が目的で飛来したので、首藤達を助けたのは偶発的だった。しかし・・・




「朱雀って、あの伝説の生き物の?」
「あぁ、間違いねぇぜ・・・」
「すざくさん・・・わたしをたすけてくれたんだ!」
「きっとそうね・・・あなたがいい子にしてたから、助けてくれたのよ。」
「・・・もしかしたら、半分合ってて半分違うかもしれねぇ。でもよ・・・」




「す、すごい・・・!」
「なんだろう、顔はこわいけど・・・安心する・・・」
「かっこい~っ!!なんか、ガメラみたいだぜ!!」
「そうだ、ガメラだ!あの鳥も、きっとガメラの仲間なんだ!」
「じゃあ、あたし達を助けに来たのね!」
「ああ・・・神様や。ありがたや、ありがたや・・・」
「いけ~!がんばれ~!」
『レッツ、ゴー!!』




「この島の人達にとっちゃ、間違いなく救世主に見えるよなぁ!なら俺も写真家の端くれとして、救世主様の写真を撮っとくぜぇ!」




首藤がその姿を新品の一眼レフに収めたと同時に、ギャオスは再び超音波メスをエアロ・ボットへ向けて放った。










「・・・違う、違うんだ。ギャオスは自分の子供を、守りに来ただけなんだ。そんな都合の良い理由なんかじゃ、ないんだ・・・!」




首藤達から少し離れた路地裏では、家を出て行った樹がギャオスを見守っていた。
だが、勾玉の無い今の樹にはギャオスの前に出て来る気は起こらず、歯痒い思いを抱えたまま見ている事しか出来なかった。




「しかもあの兵器、なんでギャオスをあんなに狙ってるんだ・・・!」


ーーボクに、勾玉さえあれば。
ギャオスの声も痛みも、分かるのに。
力になれるのに、一緒に戦えるのに。
なんで、なんで、今のボクには勾玉が無いんだ!
今なんだよ、ボクの七年間を台無しにしてまでなった、巫子の力が必要なのは!
今、必要なんだ・・・!






「ぐううっ・・・!忌々しい朱雀め、やはり俺の邪魔をしに来たか!だが、二度目は無い!エアロ・ボット!シールドを使え!」




『第一排除対象から、最優先排除対象へ目標を変更。
空気吸引開始、四大元素変換開始。
E・シールド、展開準備完了。』




一方、ギャオスの攻撃の衝撃でエアロ・ボットから降りた亨平はエアロ・ボットに指示を出し、胴体部に超音波メスによる切り傷が付いたエアロ・ボットも即座に背部のファンで空気を急速に吸い込むと同時に、メインアームのアタッチメントを広げる。




『97、98、99、四大元素変換率、100%。
E・シールド、展開。』




エアロ・ボットがファンを停止すると共に、アタッチメントから玉虫色の半透明なエネルギー波が放出され、エアロ・ボットを亨平ごと包み込む。
間も無くしてギャオスの超音波メスがエネルギー波に直撃するが、どれだけギャオスが頭を振って切断しようとしてもエネルギー波に阻まれ、エアロ・ボットに掠り傷一つ付ける事が出来なかった。
このエネルギー波「E(エレメント)・シールド」は、万物に存在する四大元素「火・風・水・地」をエネルギー波の障壁として防御に転用したものであり、純粋に物理的な耐衝撃性は勿論の事、同じく「ガイアの「G」」を自身の持つ四大元素に変換して攻撃・防御技を出す四神の攻撃には、特に強い耐性を発揮する。
「火→風→地→水→火」の得手不得手が存在し、最大でも二つの元素の掛け合わせが限度の四神の攻撃に対して、全ての元素への耐性を持つE・シールドは鉄壁以上の防御性を獲得しているのだ。
とどのつまり、相性が悪すぎるのである。




「貴様を消せば、樹は正常になる!待っていろ、樹・・・!今、お前を普通の女にしてやる!エアロ・ボットよ、荷電粒子砲を撃て!!」




亨平の指示と共にエアロ・ボットは再びファンを回転させて空気を吸引し、「E・シールド」が解除されると同時にアタッチメントに激しい電流が迸る。




「荷電粒子砲、てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
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