本編





――やった・・・やったぁ!
僕の一世一代の偉業が、今叶った・・・!朱雀が、誕生した!
朱雀、僕が分かるかい?僕はスーツェー、君を創った者だよ。つまり・・・君の父親。
君はいずれ「万物」に至る、神となる獣・・・「四神」。
このアトランティスの、希望なんだ・・・






――・・・ねぇ、朱雀。
君の父親代わりの僕が言うのもおかしいかも、しれないけど・・・君は僕の母になってくれる存在、かもしれないんだ。
単位生殖出来るようにしてしまったのも、きっと僕が母の事を忘れられないからだろうね・・・
もし、君がいいなら・・・いや、僕に巫の力は無いから無理な話か。
じゃあせめて、その耐久卵から生まれた子供には、いい母親になって欲しい。






――・・・ごめんよ・・・ごめんよぉ・・・
僕がもっとちゃんと造っていれば、僕が君に単位生殖なんて付けなければ、僕が「あいつ」に負けなければ・・・アトランティスはああはならなかったのに・・・!
だから、もう君は子供を作れないようにしないといけない・・・前に僕の母になってとか言いながら、最悪だ・・・
僕の事は、一生恨んでくれていい・・・だからせめて、次に目覚める時には誰かの母親みたいな存在になって欲しいんだ。
君を造れた事は、僕の人生最大の誇りだから・・・それじゃあ、さようなら。
僕の、もう一人の、お母さん・・・!










――お待たせ、やっと会えたね・・・ギャオス。




・・・ギャオォォォッ!




一方、姫神島の洞窟内に引き返してすぐ一時的な仮眠状態になっていたギャオスが、ようやく目を覚ました。




ギャォォゥ・・・


ギャァォォ・・・




親が目覚めた事に気付いた子ギャオスは、親の傷を舌で舐めるのを止め、心配そうに親の顔を見上げる。
ギャオスもまた、子に心配はかけまいと両翼で子を覆うような形で、子の頭を両手で撫でる。
子ギャオスが傷を舐めていた事が軽度の治癒になり、ある程度傷は塞がっていた。
しかし、巫子の樹とのリンクを切った事によってガイアの「G」は激減し、自力でこれ以上のガイアの「G」を吸収するのはガメラのように再び仮眠状態に、しかも長期の間行わなければ不可能であった。




ギャァオォォォォ・・・




しかし、それでもギャオスは飛び立たなければならなかった。
この洞窟に向かって来る脅威、エアロ・ボットの存在を感じたからだ。
この脅威を放っておけば、洞窟にいる子供が、福江島の何処かにいる樹が危ない。
どちらも失いたくない、守る為ならばこの命を投げ出しても構わない・・・
耐久卵から生まれた最後の子供も、自分を「母」代わりに思ってくれる巫子も、ギャオスにとって分け隔ての無い自身の「子供」だからだ。




ギャォォゥ!


ギャァォォ!




かくして、断腸の思いで子供を洞窟に置いて行く形で、まだ傷が完全に癒えぬ状態のまま洞窟の天穴から再び外に出たギャオスは、エアロ・ボットの進撃する町へ向かって行った。






「験司、あれ!」
「朱雀!?」
「ギャオス・・・!?」




憐太郎達もまた、エアロ・ボットへ向かって飛び去って行くギャオスを目撃した。
験司達にはその理由が分からなかったが、憐太郎はギャオスが去って行った理由を察する事が出来た。




「・・・ギャオスは、樹さんを助けに行ったんだ。」
「逸見君を?」
「勾玉が砕けてるって事は、もう逸見の子供とはリンクしてねぇ筈だが・・・」
「それでも、樹君が大事なんだね・・・ガメラにとっての、憐太郎と紀子のように。」
「それから、これは紀子が今日ここに来た時に言ってたんだけど・・・ギャオスの他に、ほんの微かに「G」の気配が二つするって言ってたんだ。だからもしかしたら、あそこに紀子が無理をしてギャオスも守った理由と、ギャオスがボロボロなのに飛んで行った理由があるのかもしれない。」
「レン、紀子はオレ達が見ていてやるから、あそこに行って来い。」
「確かめて来て、能登沢君。朱雀、ギャオスと逸見君を救えるのは、貴方かもしれないわ。」
「でも、危険だと感じたらすぐに戻って来るんだ。いいね?」
「・・・分かった。紀子を頼んだよ、験司兄ちゃん。光先生。父さん。」




腕に抱えていた紀子をゆっくりと地面に降ろし、験司達に見守られながら憐太郎は姫神島へ向かった。
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