本編







一方、樹が向かう姫神島では平司と験司達による緊迫した状況が続いていた。




「エアロ・ボットを出撃させただと?あんたは朱雀を、ギャオスを駆逐しちまう気か!」
「験司兄ちゃん、エアロ・ボットって何?」
「あいつが少し前に持って来た、誰が造ったかは知らねぇが爾落人が造ったらしい巨大兵器だ。オレ達にとっちゃ未知の技術ばかり使われてて、下手すれば巨大「G」すら単独で駆逐出来るって結果が出てる、とんでもないヤツだ・・・!」
「そんな・・・!」
「あんなのが暴れたら、この島は危ねぇ!お前ら、今すぐ住民を町から避難させろ!」
「「「りょ、了解!」」」
「験司、私は残るわ。私は今は、貴方の支えになりたいの。」
「・・・あぁ。ありがとな、蛍。」




験司の指示を受け、蛍以外のGnosis隊員達は即座に住宅街へ向かって行った。
しかし、平司は気にも止めていない様子だ。




「意外だな?オレはあんたか後ろのヘリのパイロット辺りに止められるのを承知で、あいつらを行かせたんだがな?」
「烏合のグループが慌てふためこうが、関係無い!!ヘリのパイロットも、そんな事で動かすような人では無いのでね・・・折角だ、君達にも紹介しておこう!出てきたまえ!松田君!!」




平司の大声に急かされ、今までの舌戦をヘリコプターの中から聞いていた女性がヘリから出て来るや、憐太郎以外の面々は驚愕する。




「えっ!?」
「この女・・・確か!?」
「某大学理事の、松田明日香さん!?」
「流石に君達なら知っていると思っていたよ!だが、そこのグリーンユース君は分かっていないようだから、改めて紹介しよう!!
彼女は松田明日香君!あの政界きっての大物・松田東前の娘にして某大学の理事、そしてこの私の協力者だよ!!」
「松田明日香です、よろしくお願いします。」
「某大学って、父さんがさっき昔通ってたって言ってた・・・」
「つまり、先輩はとてつもなく強力なパイプを得ていると言う事だよ、憐太郎。バイラスシリーズで言えば、ミステリアンにキラアク星人が協力しているようなもの、かな?」
「・・・凄く良く分かったよ、父さん。」
「でも、それならどうして亨平を巻き込んだんですか!「G」を憎む亨平と貴方は、間逆のはずだ!」
「間逆だからこそ、だよ!彼には証者になって貰う・・・エアロ・ボットは私が政界で嫌と言う程見て来た、「G」を受け入れずに『対「G」条約』などと言う下らない法を作ろうとしている愚者・愚民達を従わせる、抑止力としての圧倒的な力を持った存在である事の証明に!!
たとえ彼が死んだとしても、それは「G」を受け入れぬ者の末路を示す礎となる!!そして世界は、「G」と共に生きていく道を見つけるのだ!!」
「な、なんて事を・・・!」
「あんたはやっぱり、人間じゃねぇ!」
「・・・松田理事、貴女はそれでも先輩に協力するのですか?人の命を軽々しく考えている先輩の計画がおかしいと、思わないのですか?」
「はい。なので私は今、ここにいるのですが?」
「えっ・・・?なんでそんなに簡単に、そんな返事が出来るの・・・?」
「最初から私達を理解しようとしたり、止めたりしようなど思わない事だ!!あらゆる事象を『反転』させる松田君と、空気を吸い疑似的に四大元素を扱える兵器だからこその「エアロ・ボット」と言う名を持ったあの兵器は、もはや四神ですら止められないのだから!!
四神自体は私が長年求め続けた存在である事に変わりは無い、だが私のモノにならないのならそれ相応の対処をするまで・・・もう一度だけ聞こう。守田君と玄武を、私に渡せ。さもなくば、エアロ・ボットを使って玄武と朱雀を攻撃する。なに、巫子が死ぬが四神は生存する程度には留めるがね?」
「の、紀子を・・・!?」
「先輩、本当に止めて下さい!貴方は・・・間違っている!」
「いくら貴方がGnosisを発足し、管理している私達の上司だとしても・・・身勝手過ぎます!」
「あんたは紀子と、逸見の子供までも殺す気か・・・!」
「また時間はかかるが、新しい巫子を見つければいいだけの話だからね!時間ならこれまでもかけて来たんだ、それより確実に私のモノになるかどうかが問題なのだよ!!」
「・・・ふざけるな・・・!」
「ん・・・?目上の人物への口の利き方も忘れたのか?グリーンユース君・・・?」
「ふざけるなって、言ったんだ!!紀子や樹さんが死んでもいい?ガメラとギャオスは私のモノ?違う!!あんたのモノなんかじゃない!あんただけには渡さない!あんたみたいな自分勝手な人が紀子の、ガメラの全部を決めるな!!」
「レン・・・!」
「能登沢君・・・」
「憐太郎・・・」
「・・・」
「それなら、口の利き方を改めろぉ!!君如きが、私に偉そうな口を・・・」
「うるさいっ!!僕はあんたが誰かなんてもう知らない、僕はあんたなんか大嫌いだ!!ガメラを、紀子を傷付けるなら!誰だろうと僕は許さない!!この世界はあんた1人で回ってるんじゃないんだぞ!何でもあんたの思い通りになると思うな!!」
「・・・!!」




憐太郎の最後の絶叫を聞いた平司の脳裏に、あの記憶が蘇る。
それは某大学を卒業したあの日、自分が世界で一番欲しいと願った「彼女」から言われた、全く同じ言葉・・・




――この世界は、貴方1人で回ってるんじゃないの!
何でも貴方の思い通りになると思わないで!!




「・・・君も・・・お前も!同じ事を言うのか!美愛と同じ事を!!その目でぇぇ!!
たかが偶然!玄武覚醒の場にいただけの子供が調子に乗るなぁ!!お前みたいな不純物のせいで玄武は!グレイテストな存在で無くなったんだぞぉ!!お前が、お前さえ、いなければぁぁ!!」
「なら、オレも何度だって言う!レンも紀子も、オレが守る!あんたなんて・・・必要ねぇんだよ!」
「私も験司やみんなと一緒に、能登沢君と紀子ちゃんとガメラを守ります!たとえどんな目に遭っても、私達は屈しません!」
「貴方の後輩として、憐太郎と紀子の親として、私も貴方に反対します!この命に変えても・・・私は子供の未来を守る!」
「・・・交渉決裂ですね。どうしますか?全員消しましょうか?」
「いや、大丈夫だよ松田君・・・!少し予定を変更すればいいだけだ・・・!最初は逸見の野望に合わせてやろうと思ったが、まずはお前を・・・能登沢憐太郎ぉ!!お前をまず!エアロ・ボットで消してやる!!それから次は、お前達だぁ!!
そしてその瞬間は!私が空から見ていてやる!!覚悟しておくんだなあぁ!!」
「大臣、行きましょう。」




平司と明日香はヘリに乗り込み、そのまま上空へ飛び立って行った。
ひとまず平司が去った事に安堵し、験司と晋は幾多の感情と共に大きく息を吐き出す。




「「・・・はあぁ・・・」」
「験司、貴方は本当に凄いわ。あれだけ避けていたあの人に、あれだけの事が言えたなんて・・・」
「そうだな・・・自分でもなんであれだけ言えたのか、びっくりだぜ。」
「験司兄ちゃんも光先生も、父さんもありがとう。僕、父さん達がいてくれて本当に心強かったよ。」
「いや、お前の強い意志が私達を奮い立たせたんだよ。憐太郎。お前こそが、真に強いんだ。」
「私もそう思うわ、能登沢君。それから、土井大臣の言う事は気にしないで。貴方がいたから玄武はガメラになれて、紀子ちゃんは女の子に戻れたの。今の紀子ちゃんとガメラがいられるのは、貴方がいたからなのよ。」
「そうだぜ、レン。だから紀子とガメラを取り戻すのも、お前にしか出来ねぇんだ。だからお前は、オレ達が絶対守るからよ。」
「うん。僕が、やるんだ!絶対に紀子とガメラの目を、覚まさせるんだ・・・!」




憐太郎は紀子を抱きかかえ、勾玉を握りながら強く彼女とガメラの無事を願う。
この思いが、力になる。
それだけを信じながら。




ーー紀子・・・!
ガメラ・・・!
お願い、目を醒まして・・・!
また、僕の名前を呼んで・・・!
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