本編








「はぁ・・・しっかし、昨日の『クレクレタコラ』の一挙放送、ヤバかったなぁ・・・」
「うん。一時間くらいでもう確実に頭がどうかしてきたね。先に『大巨獣ガッパ』を見るべきじゃなかったかな?」




つがる市では、憐太郎の親友である遊樹拓斗・城崎透太が趣味の特撮談義に花を咲かせながら道端を歩いていた。




「しっかし、レンがいたらもっと面白かったのによ~!なんで守田さんとデートに行っちまうんだよ~っ!!」
「いやいや、一応四神の調査って言う目的もあるし、レンのお父さんも一緒だからね。それにしても、守田さんも中学校に行けたらもっといいのにね。守田さんにも色々特撮の素晴らしさを教えやすくなるのに。」
「そうだよなぁ。いつもはなんかレンに独り占めされてる感じだし、とりあえず一緒の学校にいるってだけでテンション上がるし・・・」
『四神?守田?もしかして、キミ達守田紀子ちゃんを知ってるの?』




と、そこに突然何者かが拓斗と透太の会話に割り込むように話しかけて来た。
拓斗・透太の方はその者の姿を見て、つい黙り込む。




「「っ!?えっ・・・?」」




そう、その者の風体はあまりに常識から離れた姿だったからだった。
銀髪に紫のメッシュ、着色中のパレットのようなビビッドカラーの服、身の丈程ある金色の杖。
幼げだが比較的美人な北欧人の女性である事を差し置いて、確かに初見ではつい目を奪われてしまう外見だ。




「・・・杖だ。」
「外人のねーちゃん・・・」
『あたしの名前はアンマルチア!「アンちゃん」って呼んでくれても・・・あれれ?ねぇ、キミ達守田紀子ちゃん知ってるんだよね?玄武の巫子の、守田紀子ちゃん!』
「・・・ああっ!は、はい!知ってます!」
「ぼくも・・・って、ちょっと拓斗!」
「あっ、やっ、やっぱ知りません!ぜってぇ知りませんっ!!」
「ぼ、ぼくも知りません!別の守田紀子さんと間違えてるのではないでしょうか!」
『ん~?あからさまに怪しいなぁ~?でもこの写真に間違いがなかったら、9ヶ月前にキミ達も乗ってたよね~?ガ、メ、ラ、に♪』



アンマルチアと名乗ったその女性は少々悪戯気味にそう言うや、ズボンのポケットから何枚か写真を取り出し、2人に見せる。
写真には昨年のクモンガ戦後、憐太郎達を手に乗せ空を飛ぶガメラが写っており、手の部分を拡大してある写真にはやや歪んでいるが憐太郎や紀子だけでなく、あの時助けた蘭戸家の子供達と一緒に拓斗と透太も写っていた。
動かぬ証拠に、更に動揺する2人。




「先に蘭戸家に行ったんだけど、留守だったのよね~。弦義君の知り合いって言ったら大丈夫かなって思ったんだけど・・・だから今度は紀子ちゃんかボーイフレンド君か友達君に会いに行こうと思ったら、キミ達がいたんだ~!」
「レンの事まで知ってっぞ、この人!?」
「これはもう、ごまかしきれないね・・・」




降参した2人はアンマルチアに今までの経緯を話し、彼女も一つ一つの事柄を興味深く聞いていた。
ただ、流石に国家機密情報であるGnosis関係の事は極力伏せたが。




『・・・うんうん!噂には聞いてたけど、やっぱり四神って凄い!あたしがこれまで出会って来た「G」の中でも最上級!あ~!やっぱり自分の目で見たいな~!ねぇねぇ、今紀子ちゃんとレン君ってどこにいるの?』
「いやぁ、それが今2人共九州にデートに行ってまして・・・」
「もう、拓斗ったらそんな言い方しない!」
『毛沢東?あぁ、マオ君か・・・あんな変な事ばっかりするんだったら、教師の時に止めとくべきだったかなぁ?』
「「えっ?」」
『あっ、ごめんごめん。ちょっとした昔話。それで、紀子ちゃんとレン君は九州の何処にいるの?』
「えっと、五島列島の福江島です。」
『うっそ~!!そこ、ちょうどそろそろ行こうって思ってたんだ~♪じゃあ、お礼にキミ達も一緒に行かない?』
「へぇっ!?い、今からですか?」
『うん、今から☆だって待ちきれないんだもん♪』
「で、でも明日の夜には帰ってきますし、それに今から行っても・・・」
『だいじょ~ぶ!あたしは「想造」の芸術家にして「G」の探求者よ?あたしにかかればここから九州なんてあっという間!大船に乗ったつもりでいてね☆』
「は、はぁ・・・」
「決めた!おれはもちろん行きます!透太もいくよな?」
「えっ、行くの!?」
「なんか、別にこのねーちゃんは怪しくなさそうだし、せっかくだからレンと守田さんを驚かせてやろうぜ?なっ!だから透太も行こうぜ~!!」
「わ、分かったよ。ぼくも行けるなら、行ってはみたいし!」
「よっしゃあ!!」
『決まりみたいね♪それじゃあ福江島までレッツ、ゴ~!!』
「あの、それでどうやって福江島まで・・・」
『これを使うの、よっと!』




するとアンマルチアは杖の先を取り、出てきた巨大な毛筆を使って地面に魔方陣を描き始める。
中央に門が書かれた、見慣れない紋様や文字が散りばめられた「いかにも」な魔方陣だ。




「ま、魔方陣だ!」
「すっげぇ・・・」
『サラサラ~と、あとは・・・開け、ゴマっ!!』




魔方陣が完成し、アンマルチアがお決まりの開門の呪文を唱えるや、魔方陣から2m程の大きな長方形の鏡が現れた。
マジックのように華麗なこの光景に、開いた口が塞がらない2人。




「か、鏡が、出てきた・・・!!」
「す、すっげぇぇぇぇぇぇっ!!」
『でしょ?この鏡は頭の中でイメージした場所に通るだけで行けるんだ♪ちゃんとイメージしないと変な所に行っちゃうけど、福江島はあたしも最近行ってるから安心してね☆』
「どこでもドアじゃん!やっぱすっげぇ~!」
「うん・・・なんか不思議な説得力が出てきたよ、ぼく・・・!」
『それじゃあ、旅は道連れ世は情け!お2人様、ごしょうた~い!!』




こうして拓斗と透太はアンマルチアに連れられ、鏡の中に消えて行った。




――待っててね、エアロ・ボットちゃん!
ママのあたしが、貴方の活躍を見に行くから!
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