本編







「・・・いや、僕らはまだ!諦めてなんかいない!」




激闘が続く姫神島では、ガメラにギャオスの超音波メスが命中する・・・その刹那、ガメラが海に潜って攻撃をかわした。
海水内では超音波メスの威力は急速に減衰し、ガメラに当たる事は無かった。




「ちっ、逃げたか。けどそれも、いつまでも続かない!逃げ回ってるだけじゃ、ギャオスには勝てない!」




ギャオスは海面近くをゆっくり飛びながら海を見渡し、再び超音波メスを出す準備をしつつ海中に潜むガメラを警戒する。




「紀子、こんな事を提案したくないんだけど・・・もう一度だけ、あの攻撃に耐えられる?」
「大丈夫。私はレンがいれば、どんな痛みだって怖くない。だから・・・」
「分かった。ごめん、そしてありがとう。紀子・・・よし、いっけぇ!ガメラ!」




グァヴウゥゥゥヴァァン・・・




憐太郎が叫んだ、その瞬間。
突然ギャオスの真下の海面が盛り上がったかと思うと、水飛沫の中からガメラの顔が現れ、ギャオスの右足に噛み付いた。
数々の鋭い牙はギャオスの足に食い込んで押さえ付け、ギャオスがいくら抵抗しても離れる気配は無く、紀子と同じく樹の右足にも痛みが走る。




「ぐうっ!これが、ギャオスの痛みか・・・!やっ、ぱり!不意打ちを仕掛けて来たな!でもそんなの、狙ってくれって言ってるようなもんだ!ギャオス!真っ二つにしてやれ!」




樹がそう言うや、ギャオスは準備していた超音波メスを足元のガメラに向かって放つ。
黄色い閃光がガメラの後頭部から首筋に掛けて鮮血の傷を作り、ガメラは口を離してしまう。




「ううっ・・・!!で、でも!」




ガメラは口を離すと同時に、両手が収納された代わりに既に光熱を発する上半身を露わにする。




「っ!?ま、まさか!!」
「今だあぁぁぁ!!」




そしてガメラはそのまま、バーナーをギャオスへ向けて放った。
すんでの所で気付いたギャオスは急速に上昇して回避を試みるが、予測不能かつある程度の追尾能力のある光熱線をかわしきれず、胴体に直撃。
焼け付く高熱がギャオスの体を焼き、樹と共に悲鳴を上げる。




ギャウウゥン・・・




「あああああぁぁぁっ!!」




バーナーの勢いのままギャオスは樹の後方に叩き付けられ、周囲を湯煙が包む。
ギャオスの体は若干焼け焦げ、激痛からうずくまった樹の体も火傷のような状態になっていた。




「・・・樹さん、痛い?今。」
「あ・・・当たり前・・・だろ!詭弁ばかり言いながら、やってくれるな!ほんと・・・!」
「・・・でも、これが紀子が巫子になってから受けた痛みの、ほんの一部なんだ。紀子はこれよりたくさん傷ついて、苦しい思いをして・・・それでも、負けないで戦ったんだ。僕とガメラと、ずっと一緒にいたいって言ってくれたんだ!」
「レン・・・」
「僕も紀子も、本当にリアルが充実してるかって言われたら、ちょっと違うと思う。紀子と一緒に学校に行きたい、もっと紀子と色んな所に出かけたい、本当はガメラも紀子を傷付けたくない、何の不安も無い世界で、いつまでも傍にいたい・・・!でも、僕と紀子は2人でいられないくらいなら、どんなに辛い事にも立ち向かう決意をしたんだ。そして、僕らと同じ不安や苦しみを感じてる人達がいるなら、その人達も救いたい!どんな事を言われても、どんな事があっても!それが僕と紀子とガメラが決めた、生き方なんだ!!」
「・・・!」
「そして、救いたいと言う気持ちは貴方も同じです。樹さん。今の貴方はとても私達の話を聞ける状態じゃない、『命を奪う、奪われる』と言う事がどんなに辛く、痛みが伴う事なのかを理解していないと思って、貴方の体が拒絶症状に対して何の対策も取れなかった影響で、虚弱体質に近い状態になっている事を分かっていながら、手荒な手段を取りました・・・ごめんなさい。ですが、その痛みでもう分かった筈です。死の恐ろしさを・・・」
「・・・」
「貴方が攻撃しないなら、私達も攻撃しません。貴方が朱雀の事を公にしたくないなら、それに従います。ただ、朱雀もガメラも本当に危険な存在なのか、それだけは知りたいんです。かなり時間は経っていますが、爾落のエキスを使っての症状抑制や、「G」関係の情報の提供もします。だから同じ巫子として、もう争うのは止めて下さい・・・!」




ヴォウァァァァォォオン・・・




海から戻って来たガメラが憐太郎・紀子の背後に降り立ち、ギャオスに何かのメッセージを伝える。




ギャァオォォォォ・・・




起き上がったギャオスも何処か違和感を感じたような様子でガメラを見つめ、樹に自分の意見を伝える。




ーー・・・えっ?
あの玄武は、何か違う?どういう事なんだよ、ギャオス。
・・・やっぱり、別人みたいだって?
そういえば、飼ってた亀を取り込ませてたって言ってたような・・・


「・・・ガメラも朱雀と戦いたくない、同じ四神として仲間になりたいと言っています。」
「さっきも言ったけど、僕らは貴方と争いたくなんかないんだ。だから、戦いは止めて話し合おう。」




憐太郎と紀子は黙り込む樹を見て今ならば説得出来ると確信し、樹へと歩み寄って行く。
ガメラは2人を見守り、ギャオスも再び戦闘体勢に入る様子は無い。
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