本編





「「ガメラ!」」
「ギャオス!」
「「行けっ!!」」




憐太郎・紀子・樹の叫びを合図に、二体の進撃が始まった。
ガメラは足を踏みしめながらギャオスに向かい、ギャオスは両翼を羽ばたかせて飛び上がり、上空からガメラの動向を伺う。
ガメラは口からの火炎噴射でギャオスを狙うが、目で追うのが精一杯な程に高速で空を舞うギャオスに火炎は全く当たらず、逆にギャオスの急降下からの足の引っかき攻撃を後頭部に受けてしまう。
ガメラは大きく前に仰け反り、ガメラの痛みが紀子にも伝わる。




「うっ・・・!」
「紀子!ガメラ!大丈夫!?」
「うん、これくらい平気よ。」
「ちくしょう、空ばかり飛んでないで降りて勝負しろ!」




憐太郎の焦りに同調するようにガメラは火炎をひたすら吐き散らすも、ギャオスにかすりもしない。
飛行型の巨大「G」との戦闘の経験の無いガメラにとって、空中こそがテリトリーのギャオスの相手は何倍も不利であり、あまりにも多くのハンデキャップを強いられているような状況だった。




「わざわざ天敵がたくさんいる陸に降りる、馬鹿な鳥がいるわけないだろ?それになんかのアニメで言ってたじゃないか、『当たらなければどうという事は無い』ってね。」
「駄目、対空での戦闘経験が無さ過ぎるのに、この状態を続けたら勝ち目は無いわ!」
「それなら・・・こっちも飛べ!ガメラ!」




グァヴウゥゥゥヴァァン・・・




状況を打破するべく、ガメラは両足を甲羅に仕舞うと同時にジェットを噴射し、こちらも飛行する事で空中戦に持ち込んだ。




「飛べばいいってもんじゃ、無い!空中戦こそがギャオスの真価が発揮される事を、教えてやる!」




樹の自信に満ちた台詞の通り、ガメラは全力で沖合いへ飛ぶギャオスを追うも中々追い付く事が出来ず、焦りが募るばかりの状況になる。
無論、火炎噴射が当たる気配は微塵も無い。




「頑張れ!ガメラ!どうにか追いつくんだぁ!」




憐太郎の思いに応えようとガメラは首と両手も甲羅に仕舞い、円盤飛行でギャオスを追う。
両足飛行に比べてスピードが増し、今度は雲へ目掛けて舞い上がるギャオスに少しずつ追いついて行く。




「ちっ、しつこいな。でもそれなら、こうするまでだ!」




ギャヴォォォ・・・




するとその時、上空を目指していたギャオスが突如停止して振り返り、下方から向かって来るガメラと向かい合ったかと思うと、胴体から黄土色の煙を噴射して真っ直ぐ飛んで来たガメラに煙を浴びせる。
煙を浴びたガメラは途端にジェット噴射が不可能になり、瞬く間に遠ざかって行くギャオスを睨みながら海へ落ちて行った。




「ガ、ガメラ!?紀子、ガメラはどうなったの!?」
「なんだか、あの煙を浴びたせいで炎が出せなくなったみたい・・・だから、飛べなくなったのよ・・・」
「そう、あの煙はあらゆる火を消してしまうんだ。だからギャオスには、炎は効かない!ガメラじゃギャオスに、勝てないのさ!さぁ、今度はボクらの番だ!」




ギャァオォォォォ・・・




樹の指示を受け、ギャオスは急降下しながら喉の中で空気と声を反響させると、それを黄色く鋭い光線にして発射した。
光線は直ぐ様、海上に出てきたガメラの右肩に直撃し、いとも容易くガメラの皮膚を切り裂いてしまった。
ギャオスの技「超音波メス」だ。




グァウゥゥゥン・・・




「うぅ、ああああっ!!」
「紀子!ガメラ!」




傷口から緑の血を噴出しながらガメラは悲鳴を上げ、ガメラと同じ状態になった紀子の右肩も血で染まり、赤い服越しでもかなりの出血量と苦痛なのが、憐太郎にも嫌と言う程に伝わった。
激痛からうずくまりながらも紀子はどうにか意識を保ち、憐太郎は肩で紀子を支えてどうにか彼女を立たせた。




「紀子、ほら!僕の肩に捕まって・・・!」
「あ、ありがとう、レン・・・私もガメラも、まだ大丈夫だから・・・」
「くっ、なんて威力なんだ。あんなに簡単にガメラの肩を切り裂くなんて・・・!」
「当然だよ。あれは超音波を使って、メスのようにどんなモノでも切り裂く、ギャオスの得意技なんだから!でもこれで済むと思うなよ、リア充が!お前らが間違ってるのを、まだ証明してないんだからな!嫌なら今のうちにボクに土下座して、謝るんだ!!」




ギャオスは翼を畳んで槍のような形の高速形態になり、次の超音波メスの準備をしながら、猛スピードでガメラへと迫っていった。








一方、ホテルのGnosis貸切り部屋には連絡船の早朝便で来た蛍が合流していた。




「それにしても、まさか本当に今朝に来るなんてな・・・」
「だって、いてもたってもいられなかったんだもの。」
「それで、サブリーダーが目撃した守田について聞き込みをしていた者は、どんな外見ですか?」
「そうね・・・一言で言えば、派手な女の人だったわ。怪しいと言えば怪しいけど、悪い感じは受けなかった、不思議な人だったわね・・・」
「へぇ。そりゃ被写体としちゃ、悪くねぇかもなぁ。」
「それじゃあ、大丈夫とちゃいます?コンドウみたいな「G」のオタクとかおっても、おかしないですし。」
「岸田さん、朝から関西弁。それに、人を見かけや情報だけで判断してはいけないわ。そういう見かけは大丈夫そうな人程、危険な一面を持っていたりするの。」
「まぁ蛍の話を聞く限り、間違いなく怪しい奴なのは確かだがな。」
「そうだ!天使のような悪魔の笑顔をした者が、この街にあふれている世の中だ!怪しい人に着いて行ってはいけないと、ダイゴロウも言っているからな!」
「それっていつの時代のネタなの、兄者・・・」




と、その時蓮浦が持っていたタブレットが突如として振動し始め、それと同時に全員がタブレットの画面を凝視した。
「Gigantic「G」search」と書かれた画面には福江島の地図が表示されており、姫神島に点滅する赤丸のアイコンが被さっている。




「巨大「G」、出現!」
「おいおい、これって・・・!」
「姫神島!?朱雀のおる場所やん!ここ!」
「あくまで予測よ、岸田さん。それにまた関西弁。でも・・・」
「遂に朱雀が現れたの!?」
「おお、いよいよお出ましか!」
「待って、能登沢君と紀子ちゃんって今、朱雀の調査に行ってるのよね!?じゃあ、まさか!」
「間違いねぇ、ガメラと朱雀が交戦してるって事だ!おい、お前ら!早く支度しろ!」
「「「はい!」」」




嫌な予感が消えない験司は隊員達を急かし、数分も経つ間に準備を整えたGnosis達は姫神島に向かって行った。




「レン!紀子!今行くから待ってろ!」
「2人共、無事でいて・・・!」
14/42ページ
スキ