本編












「関口さぁん、もう帰りましょうよ!もう2万も使ってんすよ!」
「いやぁ、ボーナスが入ったしたまにはこうしたい気分なんだよ。だから、ねっ!あと一軒だけ!」
「嫌ですよ!そうやって潰れるくらい呑んで明日になって後悔するんですからぁ!」




その日の夜、東京・錦糸町の駅前を2人の男が歩いていた。
顔を赤らめながら叫ぶ中肉中背の男、名は関口亮。
同じく赤い顔で彼を支える大柄の男、名は田冶冬樹。
2人は日本の大学の中でも有数な某大学出身と言う共通点があり、住む場所は違いながらこうして機会を設けては会う仲である。
更に2人には、互いを結び付けるもう一つの共通点があった。




「ほら、こことかいい感じじゃないか。この『ほのか』って言う響き!妹のいる兄である君にとって、なんか良い感じじゃあないかい?」
「まぁ、確かに・・・って!何言ってんですか!全く・・・じゃあ、本当にここで最後ですよ!」




関口の妙な説得に応じ、冬樹は渋々錦糸町駅前の居酒屋「ほのか」に入る。
完全個室ダイニングの居心地の良さが魅力の店だ。




「さぁて、酒とアテが来る間にコンドウ君のサイトでも見とこうかな。」
「あっ、俺にも見せて下さいよ。」




関口が鞄から取り出したノートパソコンを冬樹も覗き込み、「GALLERIA(ガレリア)」と言うサイトを一緒に閲覧する。
このサイトは「G」に詳しい者のほとんどが知っている、「G」専門の情報提供サイトであり、他にも特撮・アニメ関係のコンテンツも有名である。
そしてこのサイト、ひいては「G」こそが関口と冬樹のもう一つの共通点であり、某大学清水キャンパスにいた関口は何度かの「G」との遭遇を経て「G」調査専門会社「J.G.R.C」の開発部に所属し、冬樹も2年前に某大学湘南キャンパスで「G」が起こした事件の当事者になった経験がある。
そんな2人がこのサイトに行き着くのは自然の摂理とも言え、今や管理人のコンドウとはサイト内での交流だけでなく、何度もオフ会を開催する程の仲でもあった。
ただ、コンドウは某大学出身ではない生粋の大阪人なので、2人に比べると気軽に会えない立場ではあるが。




「最新の「G」の情報は・・・おっ!昨日現れた大トカゲの「G」について載ってるじゃないか!」
「名前はジーダス・・・これ、多分Gnosis内でのコードネームだと思うんだけど、よく調べられたなぁ。」
「うーん、俺みたいな理由有りか?」
「えっ?」
「いいや、なんでもないっと・・・あっ、お酒ありがとうございます!ほら、冬樹君。」
「すみません。じゃあ、三度目の正直の・・・乾杯!」
「乾杯!」
「「・・・ぷはぁ!」」
「くう~っ!禁煙外来中の身には、やっぱりこの一杯は必要だね!」
「いやいやぁ!この一杯って言って、あんた今日何杯呑んでんですか!」
「そう言わずに、ほら!新しい「G」の情報来てるよ!」
「またまたぁ、そう言ってはぐらかして・・・って、朱雀の目撃情報!?」
「そう!朱雀と言えば四神の一体!そして四神と言えば巨大「G」の代表格、玄武のガメラ!」
「ガメラ出現から他の四神の情報が影も形も見付からない中、ようやく二体目の情報が来たのか・・・昨晩、福岡県・五島列島の福江島付近で漁師が鳴き声とシルエットを確認・・・ジーダス出現とほとんど一緒?」
「この調子で他の四神も見付かればいいんだけどなぁ・・・でも巨大「G」ネタはうちの会社にあんまり還元出来ないのは分かってるんだけど・・・よし!とりあえず更なる情報を願って、僭越(せんえつ)ながら俺は歌いまぁす!!つよいぞ、ガメラ!つよいぞ、ガメラ!」
「こら!いくら個室の居酒屋だからって騒がない!しかもその歌、子供達が勝手に作ったガメラの応援歌じゃないか!今話題なのは朱雀だって・・・」





2人の宴は、朝陽が顔を出すまで続いた。
12/42ページ
スキ