本編











「そう、それでその2人、周りに見せ付けるように歩いて来てさ。ほんと、不愉快だった。こう言うの『リア充』って言うんだけど、それはともかく周りの目を考えろよ、って話。」




一方、姫神島の洞窟。
樹は勾玉を持ちながら、目の前にいる巨鳥に話し掛けていた。




ギャァオォォォォ・・・




その巨鳥は確かにシルエットは「鳥」、翼の付いた二本足の生物であったが、そう一言で片付けるには些(いささ)か奇妙な印象を持っていた。
蝙蝠(コウモリ)のような頑強な骨を包む柔和な飛膜が張られ、羽毛が無く骨が付いた翼。
赤と茶が混ざったスマートな色の体と尾にも毛は存在せず、上部が下がった六角形のような独特的な頭頂部に、眼下の樹を見つめる紅(くれない)の瞳を持った顔。
そう、この巨鳥の正体はGnosisが最重要「G」として探し求めていた巨大「G」、四神・南方守護を担う「朱雀」であり、樹が呼ぶ名はギャオス。
そして、樹はギャオスと交感出来る朱雀の巫子だったのだ。




「・・・だよね。でも、ボクもいつかそうしたくなる日が来る?ははっ、そんなわけないだろ。こんな生まれた時から矛盾してる、このボクが。」




出会ったのは昨晩だが、樹はまるで今までも一緒にいたような感覚・・・家族同士で世間話をしているかの如き自然体でギャオスと会話していた。
更に樹はギャオスの足元にいる、二つの影に話し掛ける。




「お前達もそう思わないか・・・って、まだ分からないか。」




ギャォォゥ・・・


ギャァォォ・・・




ギャオスの足元にいたのは、大人程の大きさの二匹のギャオスであった。
体の所々がデフォルメされ、大型のギャオスに比べて幼げな雰囲気を出しているが、それ以外は大型ギャオスとの大差は無く、臆病な者に恐怖心を抱かせるには十分な迫力もまた感じさせた。
二匹の後ろには卵の殻が散乱しており、この小型ギャオスの正体を示唆する。




「ほんとこうしてると、家にいるみたいだよ。正直実家より、いいかもしれないくらい。誰がおかしいって言ったって、お前らの方がおかしいって言ってやる。そうさ、だってここにはボクの母さんと兄弟みたいなギャオス達がいるんだ、父親なんていない理想の家が・・・」




喋りながら段々と険しい表情に変わって行く樹を、ギャオスが勾玉を通して静止する。
勾玉が少し赤く光り、ギャオスの言葉を聞いた樹は普段通りの表情に戻った。




「・・・うん、大丈夫。冗談だから、そんなにきつく言わないでよ。まぁじいちゃんなら、入れていいか。ちょっと、めんどくさい所があるけど。」


ーーでも、ギャオスが母さんみたいなのは本当かな。
ボクは母さんの事、あまり知らないから。
そう、ボクの小さい頃に母さんが死んで、それからだ。
ボクの世界が、おかしくなったのは。
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