‐GetterⅡ‐ 逸見樹のある一週間










木曜日。
この日、ボクにとってずっと忘れられない出来事が起こった。






「あのさぁ、逸見って今日の放課後空いてる?」
「放課後?ボクは別に、何も予定は無いよ?」
「じゃあさ、ちょっと体育館来てくれね?」
「建て付け悪い扉を直してくれるらしいから、逸見も来てって。俺ら手伝うからさ?」
「分かった。ありがとう。」






学校では体育の授業があったくらいで、特に何も無かった。
・・・いや、無いと思ってた。
でもボクは、その時までに気付くべきだった。
ボクの身体が「女」である、と言う認識に囚われている「ヤツら」が、クラスにいた事に。
「ヤツら」はいつも体育館に早く来て、ボクのいる倉庫の扉を少しだけ開けて、ボクの着替えを覗いていた事を。
そしてそんな「ヤツら」からの呼び出しにボクは、応えちゃいけなかったんだって事を。






「・・・えっ?」




・・・気付けばボクは、ボクを呼び出したよせあつめブラザーズに押し倒され、それを今まで見た事が無いような冷たい眼差しで、渡辺が見ていた。




「こ、これどう言う・・・」
「はぁ・・・やっぱこの感触『女』だわ・・・!」
「明らかに柔らかいよなぁ~。」
「うんうん!俺ら『男』とは違うなっ!」
「ちょっと、何やって・・・」
「上は残念ながらノーブラでシャツだったが、下はパンティなんかな!あの隙間じゃ見えなかったし・・・」
「早く脱がしてみようぜ~♪」
「えっ!?ちょっとやめてよ!冗談キツイって・・・」
「それより、逸見のちっぱいを確かめようぜぇ・・・!あるのは分かってるからなぁ・・・!」
「それもそうだな!」
「まずは、服の上から・・・」
「ま、待って・・・やっ!!」
「柔らけぇ・・・やっぱあるぜ!」
「俺も俺も!」
「待てよ、俺もモミモミするんだよ!」
「やめっ、やっ!やだあっ!!」
「ふぉぉぉぉっ!!」
「女のカラダだ・・・倉庫から見てた、逸見のカラダだぁ・・・♪」




よせあつめブラザーズはボクの両手両足をそれぞれ押さえ付けて、息を荒くして、ボクの胸をまさぐる。
全身に寒気が走ってたまらなくって、吐き気がしそう・・・
気持ち悪い・・・気持ち悪い・・・!
こんなの「男」が「女」を、こいつらがボクを襲ってるだけじゃないか・・・!!




「倉庫って、まさかお前らが開けて・・・ってか、なんで渡辺まで・・・」
「・・・ほら、やっぱり女みたいな声出した。」
「えっ?」
「私さ、分かってんだよね。スカートじゃなくてズボン履いて、心は男だとか言って、自分の事『ボク』とか言ってるけどさ?それ、あんたのキャラ作りでしょ?アニメとか最近のドラマとかで見る、『ボクっ娘』ってやつ。だって自分の事『ボク』って言う女、リアルでいたら気持ち悪いしさ?だから、こいつらがあんたの事をやらしい目で見てたって知ってさ、あんたのキャラ作りを確かめようと思って色々入れ知恵したってわけ。」




・・・はっ?何言ってるの?
キャラ作りとか、ボクっ娘とか、そんなんじゃない!ボクは男だから、自分の事を「ボク」って言って、ズボンを履いてるだけなのに・・・渡辺はずっとボクの事、そんな目で見てたのか!
許せない、許せないけど・・・なにも、出来ない・・・!




「ふ、ふざけるな!ボクは男だ!誰が何と言おうと!」
「じゃあ、裸の付き合いでもしてみなよ?あんた、男なんでしょ?私が立ち入り禁止の札付けといたからさ、もうしばらくは誰も来ないし、いっそ脱がしちゃえば?」
「!?」
「マジか!さっすが~、ナベ様は話がわかるッ!さぁ、俺達とハダカの付き合いしようぜぇ・・・♪」
「でもやっぱ、ほんとに女子とシてるみたいで興奮するなぁ!」
「い、いや・・・やだああああ!!」
「あ~、もし外から声聞かれたらマズいからさ、口は塞いで?」
「そうだな!よし、じゃあお口チャックの時間だぜぇ?」
「んむっ!!むうううううう!!」




こいつら、こいつら・・・卑怯だ!
男の体だからってボクを一方的に押さえ付けて、好き勝手に触って・・・!
ボク、このままこいつらなんかに好きにされて、弄ばれて・・・!
嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・嫌だっ!!
助けて、ギャオス!助けて、父さん!
誰でもいいから、ボクを助け・・・
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