本編


「チッ…」


空港を出た凌は車で帰路につこうとしたが、肝心な事を忘れていた。
今は事件解決直後、空港は現場検証や遺体処理等の理由から駐車場ごと警察に封鎖されていたのだ。


凌は空港の封鎖区域から出た後に透明化を解除し、携帯電話を開くと驚いた。
6件ほど着信履歴があったのだ。全て綾からだ。


凌はすぐ綾に電話を掛ける。数回のコール音の後、聞き慣れた女性の声が聞こえた。


『東條君! 無事!?』
「はい、無事です。ご心配おかけしました。」
『良かった…』
「今からタクシーか何かで戻ります。」
『帰ろうにも封鎖されて車を動かせない。でしょ?』「えぇ。」
『今空港の近くまで車で迎えに来てるわ。』
「ありがとうございます。では大通りのコンビニで合流しましょう。」
『分かったわ。』


凌は徒歩で目的地のコンビニへ向かう。日は地平線の向こうに隠れ始めるも警察官や報道関係者は定時で帰れそうもない。


道中、何台もすれ違う警察関係の車両に、事の重大さを改めて認識したところで目的地に着く。
いつも使っている覆面パトカーが駐車場に停まっているのを発見した凌は迷いもなく助手席に乗った。


「戻りました。」
「大変だったわね。」
「いつもの事です。綾さんはいつから待っていたんです?」
「警視庁に入電があってすぐだから…4時間近くかしら?」
「そんなに長く…」
「心配だったからかなり飛ばして来ちゃった。」
「何か…すみません。」
「謝らなくていいわよ。こっちが勝手に来たんだから。それより混雑する前に早く本庁へ戻りましょ。」
「運転を代わりましょうか?」
「いいわ。疲れてるでしょ?」
「では、お言葉に甘えます。」


シートベルトをかけた凌を確認した綾はエンジンを始動させると発車させた。


「それで、テロ組織はどうだったの?」
「GUARDは統率力がありませんでした。特殊部隊の突入くらい予測してトラップを仕掛けておくべきなのに何もしない、案の定成す術もなく射殺され詰めの甘さが目立っています。俺は連携の取れない傭兵集団の印象を受けましたね。」
「かなり酷評するわね。」「それ程構成員への管理が行き届いてなかったんです。お陰で早期解決できたんですが。まだ19年の京都での奴らの方が―――」


2人の乗る覆面パトカーは首都高速に進入した。
8/18ページ
スキ