本編
「おい! 特殊部隊だ!」
「警察がそこまで来てる!」
SATの突入によりターミナルビル内は騒然となった。爆破された2箇所からは隊員達がなだれ込み、GUARD構成員はサブマシンガンや自動小銃で応戦していた。
「作業員用搬入口からも突入されてる! 手を貸せ!」
「無理だ! 防げない!」
だが日々訓練を重ねているSAT隊員にGUARD構成員は敵わず、次々と撃たれていく。
それとは対称的に、隊員は小型防弾盾で身を守り絶妙なフォーメーションで次々と構成員を仕留めていく。
しばらくすると三方向から各班の隊員が合流し、構成員で逃亡を図る者も出始めた。
状況は圧倒的にGUARDに不利だ。生き残った構成員は何かのスイッチを掲げ人質に銃を向ける。
「動くな! 撤退しなければ仕掛けてある爆弾を―――!」
その構成員は要求を言い終わる前に問答無用で射殺された。
それを目の当たりにした別の構成員は人質の女性を盾に後ずさる。起爆スイッチを回収しない所を見ると爆弾はハッタリだったのだろう。
「く、来るな! この女殺すぞ!」
手の空いている隊員達はその構成員を円形に囲み、ゆっくりと間隔を詰めていった。最後に残された構成員はうろたえ、今にも女性に引金を引きそうな勢いだ。
構成員の心拍数が極限に達した時、構成員の頭をライフル弾が貫通、そのままの勢いで血に塗れたライフル弾が床に着弾した。
制圧班に続き潜入した狙撃支援班が吹き抜けの上の階から狙撃したのだった。
これでGUARDは全滅し、ターミナルビルはSATにより制圧されたと思われた。GUARD構成員は一掃。だが八重樫は依然として爾落人と「G」を感じている。恐らく爾落人は人質の中に居るのだろう。
八重樫は未だ怯えている人質を見回す。そして八重樫は見つけた。妙に落ち着き払っている若い男性を。
相手も共振する何かを感じたのか、八重樫と目が合った。
「制圧全班から指揮班へ、コンコース制圧。これよりターミナルビル内を消毒…ぅぐあっ!」
指揮班に報告を入れていた隊員が銃声と共に断末魔の悲鳴をあげた。
八重樫や隊員が振り向くとそこには信じられない光景が広がっていた。
人質だった民間人数名が自動小銃で隊員を射殺していたのだ。
この状況が意味する事。それは人質の中にGUARD構成員が紛れていたのだ。
生き残りの構成員は射殺した隊員の小型防弾盾を奪うと、それで自分の身を守る。
しかし別方向にいた隊員から背後に銃撃を受け、時間差で吐血した後敢え無く倒れ込む。
「クソ……クソォッ!」
最後の最後まで残った構成員も抵抗虚しく容赦ない銃撃を正面からくらい、無念にも両膝をついた。
やがて仰向けに倒れた構成員の生死を確認する為に隊員が近付くが、隊員は我が目を疑う。
撃たれた箇所のシャツからは血が滲み出ている。問題は血の色だ。
たった今射殺された構成員の血の色は真っ青だったのだ。
「な…なんだコイツ!」
撃たれた構成員は隊員の動揺を感じ取ったのか、目を大きく見開いた。その瞳の奥にさっきまでの恐れの感情は微塵もない。
さらに両手は肥大化しており人間のものとは思えない程鋭利な鉤爪に変貌していた。