本編
八重樫の率いる班と技術支援班は突入ポイントに到着した。
すると技術支援班はオフホワイト色の粘土を外壁に設置し始める。
C-4爆薬。世界中で使用されているプラスチック爆薬の代表格だ。形状は粘土で耐久性、信頼性、化学的安全性には定評がある。主に米軍を始めとする各国特殊部隊が使用している。
『狙撃支援班、配置完了。視界良好、問題なし。』
『指揮班了解。』
『黒瀬班、技術支援班共に配置完了。』
『こちら菅波班、技術支援班がC-4設置完了。』
『指揮班了解。各班指示を待って下さい。』
無線からは各班の状況報告が次々と聞こえており、着々と突入の準備が進んでいた。
やがてこちらの技術支援班もC-4を設置し終えた。
「技術支援班、C-4爆薬設置完了。」
『指揮班了解。八重樫班は突入ポイントにて待機して下さい。』
「了解。」
これで全て整った。後は対策本部で総合的な指揮を執っている警備部長が突入命令を下すだけだ。
隊員達はそれまで息を潜めて命令を待つ。
八重樫は爆破予定の壁の向こうに人間を感じた。それが罪のなき民間人でない事を祈りながら突入命令を待った。
そしてすぐに時は来る。警視庁のヘリコプターがターミナルビル上空を通過した瞬間だ。
『警備部長より突入命令が下されました。全班突入して下さい。』
「突入! 行くぞ!」
八重樫の怒号の瞬間、技術支援班はC-4を起爆させた。壁は爆風で吹き飛びポッカリと穴が空く。そこを小型防弾盾を前面に展開させた八重樫班は突入した。
『警備部長より突入命令が下されました。全班突入して下さい。』
「了解、起爆させろ。」
突入命令が下された時、菅波班も八重樫班と同じく技術支援班が壁を爆破し突入した。
突入した菅波班は早速、構成員によって銃撃を浴びせられた。だが小型防弾盾に守られた彼らにその意味はない。
リロードの為に物陰へ隠れた構成員を確認した菅波は手信号で隊員を向かわせるよう指示する。隊員も手信号で了解の旨を菅波に伝えると指示通りに接近する。
それからすぐ構成員は接近する隊員に気付き発砲するも、別方向にいた菅波らに注意が及ばず射殺される。
構成員を掃討した菅波班は隊列を崩さずに前進を始めた。
一方の黒瀬班は、技術支援班がバッティングラムと呼ばれる大型ハンマーで扉を中破させ、隊員が蹴破って突入していた。
「マズいぞサツだ!」
突入した矢先、近くに居た構成員に自分達が警察だとバレた。それもその筈で小型防弾盾には威圧効果も兼ねて「POLICE」とマーキングされているのだ。
「GoGoGoGo! 行け行け行け!」
狙い通りかGUARD元々の統率力の無さかは不明だが、構成員は焦って火器を携え急行してくる。しかし発砲する前に射殺されていく。
「何だ?!…ぐぅぁっ!」
突入した八重樫は爆破に驚く人間が構成員だった事に安堵しつつ、それを射殺した。
続いて八重樫は進路の先に8人の人間を感じる。しかし構成員かどうかまでは分からない。そこは対象を目視した瞬間の判断力が補うのだ。
やはり来た。武装した人間だ。それをGUARD構成員と判断した八重樫は誰よりも早く射殺する。
SATの突入は順調だった。