本編
「G」ハンター逃亡から数分後、連絡の取れない博物館に急行した警官により事態が発覚した。
凌はあらぬ疑いを向けられないよう、咄嗟に気絶したフリを装う。
それからしばらくし、痺れを切らしそうになった凌を起こしたのは意外な人物だった。
「…………瀬上さん?」
「君も気絶していたらしいな。」
凌はあたかも状況を知らない無力な捜査員のような仕草で瀬上と話す。
「瀬上さん。何があったんですか?」
「してやられた。私が捜査員を率いて不審者の確認に向かう途中、気絶させられたらしい。その間に奴は宝石を……」
「…盗まれたんですね。」
瀬上は無言で頷く。
「さっき博物館を見て回ったが酷い有様だ。円形に切り抜かれたシャッターに破壊された電子装置、パトカーまでもが両断されている。一体何が…」
仕方がなかったとは言え自分が破壊してしまった惨状に、凌の表情が引き攣った。
「あれは…「G」ハンターの仕業ですよ。」
この返答に僅かながら瀬上の表情が曇った。
そして瀬上は何故か、そう発言した理由を凌に聞かなかった。
「とりあえず私は失礼する。……そうだ。君、名前は何だったかな?」
「…東條凌、巡査長です。」
「東條凌…。覚えておこう。」
瀬上は1人で去り、凌は特捜課の2人を捜しに行く。
「東條凌…か。」
瀬上は意味深に呟くと大槻達と合流した。
「綾さん。」
凌も無事、綾と一樹に合流した。
「無事みたいね。「G」ハンターはどうだった?」
凌は周りにいる捜査員に聞こえない声量で答える。
「かなり厄介な輩でした。詳しくは撤収の車中にでも。」
「そうね。」
イヤホンからの情報を聞いていた一樹が、最新情報を2人に伝えた。
「二課長は慌てて非常線を張ったらしい。」
「逮捕は期待できないな。」
「皆そう思っているさ。」
「今回の事件で、特捜課を含む警視庁の信用は地に堕ちたわね。」
「「G」ハンターの能力も分からず仕舞いだし、警視庁は完敗だな。」
「そういう宮代君も、一発でノックダウンされたでしょ?」
「あれは不意打ちな上にオレには防ぐ手段が―――」
凌は会話を聞きつつも「G」ハンターのある言葉を思い出す。
―――お前、やっぱり爾落人だったのか。
「(「G」ハンターは俺を知っている人物なのか…?)」
屈辱感、敗北感、疑惑。今後忘れる事のできない感情を胸に、凌と他の2人は引き続き逮捕の期待できない応援に加わった。
―――了