本編


大槻ら捜査員の詰める部屋に例の警官が入ってきた。
少数の捜査員は単独行動の警官を怪しがったがもう遅い。


「さあ、ゲームの始まりだ…」


警官の呟きが聞こえた捜査員は訝しげ凝視したが、警官が指を鳴らすと意識が飛んだ。
この現象は次々と伝染し大槻や一樹を始め博物館一帯を巻き込んだ。


博物館内には例の警官だけが意識を保っている。
警官は気絶している捜査員達を尻目に展示室のドアの前まで進むと電子ロック装置に手をかざした。


するとエラーを示す赤いライトの点滅が始まりロックが解除された。さらに警官はドアのチェーンをレーザーカッターで切断する。


警官は片手に手袋をはめて扉を開けると展示室全体に目を通す。それからは赤外線を恐れず室内を歩いたが警報は鳴らなかった。
宝石は箱型のガラスで保護されていたがこれもレーザーカッターで切断した。


警官は輝く宝石を手袋をはめた手で掴むと懐のポケットにしまう。目的を達成した警官=「G」ハンターが展示室を出てきた時だった。


「!」


ポケットに入れていた宝石が「G」ハンターから勝手に離れ、待ち構えていた女性の手に引き寄せられた。

「G」ハンターから宝石を念力で回収した綾は、身動きが取れないように「G」ハンターを念力で拘束した。


「はい、そこまで。」
「…全員気絶させたと思ったんだが。」
「あの電気ショックなら私が弾き返したわよ。ただいきなりだったから自分しか守れなかったけど。」
「まさか警視庁に能力者がいたとはな。」
「さぁ、素顔を拝ませて貰うわよ。」


綾は「G」ハンターの顔を念力で自分の方へ振り向かせる。すると素顔が露になった。


「…驚いた。こういう怪盗は素顔を隠すものだと思うけど。」
「それもそうだな。」


そう言った「G」ハンターは念力に拘束されたまま何の動作もなしに顔と服装を変えた。


「これでどうだ?」
「…あなた、一体何の能力者?」
「答える義理はないね。」「あらそう。ならこれからゆっくり取り調べて吐かせるわ。」


綾は手錠と能力封じのブレスレットを携えて「G」ハンターに接近する。


「!」


綾が「G」ハンターに触れた瞬間、彼女にスタンガンと同じ電気ショックが巡り気を失った。


「悪いな、能力者なんかに俺は捕まえられない。」


念力の拘束から解放された「G」ハンターは、倒れた綾から宝石を回収すると部屋を後にした。

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