本編
同刻、警視庁の地下駐車場に八重樫と菅波の姿があった。先日の事件について報告しに本庁へ出頭したのだ。
「久しぶりだな。桜田門は。」
車から降り立った菅波はコンクリートの柱を軽く叩きながら呟く。ちなみに桜田門とは、警視庁を指す隠語だ。
一方の八重樫はある気配を感じ取る。
「(桜田門に爾落人が3人と能力者が1人。ついには菅波にも力が……「G」は確実に世界に浸透しつつある、か。)」
「どうした? 行くぞ。」「あ? あぁ。行こう。」
八重樫と菅波、連れの隊員は警備部の階層へ向かうエレベーターに乗った。
捜査二課。
「瀬上さん!」
若い捜査員が1人、何かのカードを持ちながら慌てて入ってきた。
その捜査員は息切れの状態で瀬上と呼んだ男のデスクの前に到着する。
「どうした? らしくないな。」
若い捜査員の上司―――警部補の瀬上浩介は、捜査員とは正反対に落ち着いている。
「来るんですよ! 僕達の管轄に「G」ハンターが!」
「「G」ハンター……か。」
「G」ハンター。この名前に何か思う節がある瀬上は捜査員を落ち着かせると課長へ報告に向かった
特捜課。ここに警備部長への報告を終えた八重樫が突然訪れていた。
「八重樫さん。」
その存在に真っ先に気付いたのは凌だ。彼は八重樫に身振りで綾と一樹を示す。
「良いんだ。そこの2人も爾落人と能力者だろ? なら構わない。」
いきなり入ってきた見ず知らずの男性に事実を見破られた綾と一樹は驚きを隠せない。
この反応を見た八重樫は凌が自分の事を話さなかったと悟る。
「どうやら誰にも、俺の力について話していないみたいだな。」
「八重樫さん、座って下さい。ただ顔を見せに来たのでは無いのでしょう?」
「あぁ。」
凌は八重樫を1つだけある来客用の椅子に座るように促す。
「東條君、この人は?」
凌は八重樫の目を見る。八重樫は頷いた。
「この人はSAT制圧班の指揮官であり爾落人の八重樫さん。能力は…簡単に言えば「G」や爾落人の気配や位置を感じ取れます。」
「とりあえず宜しく。」
唐突な爾落人の登場に綾は最初こそ警戒したが、凌と関わりがあると知るとその警戒は徐々に薄れた。