本編




「……人は愚かだな?」

 絶叫と破壊の音の中、地面に跪いた男が呟いた。男の腕の中には少女が全身を血で染め上げて力なく倒れていた。すでに彼女の脈は止まっている。

「………この文明を生み出したのは、この者達を知識ある人にしたのは、間違いだったのかもな?」

 彼は少女の顔についた血を優しくて手で拭うと、また呟いた。整った美しい顔をした少女で、その深緑の黒髪は蛇を象った金のカチューシャで後ろに流されている。

「男、それは金だな? 王族だろう?」

 俯く彼に声をかけたのは、血で染まった剣を片手に持つ男であった。

「………いる」
「ん? まぁいい、その娘の元に送って……」
「貴様は既に死んでいる! ……朽ちろ!」
「!」

 彼は男を睨みつけてそれだけ言った。
 刹那、男は白目をむき、手から刀が落ちた時には肉が朽ちる骸になっていた。
 彼は骸に目もくれず、娘を両腕に抱えて、ゆっくりと立ち上がった。

「……ラムセスよ、貴様の世だ。貴様にも共にこの罪を背負って貰うぞ? ……人類は滅びるがいい」

 彼は、呪いとも言える言葉を吐きながら、王の神殿に向かって歩き始めた。
 彼をこの時代の人々は神々の祖と呼び、後に『神々の王』と呼んだ。




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 2021年春、エジプト・アラブ共和国。

「……なんだ? 今の夢は……? ガラテア?」

 目を覚ました後藤銀河は周囲を見回した。空気はシンと冷える夜の砂漠と空に浮ぶ星々と月だけが彼を包み込んでいた。
 そして、彼の脳裏にこびりついている夢の断片に残る少女は、朝鮮で出会ったガラテア・ステラに酷似していた。

「恐ろしくリアルな夢だった。……エジプトに来たからなのか?」

 まるで返事を求めるかの様に銀河は呟いた。そして、マントを整えると、ふらつく足でぼんやりとしながら歩き始めた。
 一面の砂漠で、明かりは月と星だけにも関わらず、銀河は迷う事なく、盲目的に砂の大地を進んでいく。

「………俺は、ここを知っている。何故だ?」

 銀河は自問しながらも、その足を止める事なく進める。
 やがて小高い砂丘を登り始めた銀河は突然全身を震わせた。

「………何か、何かがいる! 「G」なのか?」

 銀河は身を掲げて、ジッと砂丘の上を睨み付ける。片手に「G」封じの方陣を描いた護符を取り出し、いつでも敵に放てる様に構える。

「そこにいる者、立ち去れ! ここは人の立ち入るべき場所ではない!」

 砂丘の上にラクダに乗った男のシルエットが現れた。男が銀河に言っていることは瞭然としていた。

「盗賊か?」
「我々をその様に言っている者も多くいる。だが、我々は墓守の一族の末裔だ。お前はこの場にいるべきものではない」
「……地獄耳だな?」

 ボソリと呟いた銀河の言葉に答えた男に、銀河は肩を落とした。

「言っておくが、俺はろくに荷物も持っていないぜ?」
「我は追い剥ぎではない。立ち去れ、ここは神の領域だ」
「わかったよ。だけど、一ついいか? あんたがここを神の領域で、俺に出て行けっていうんなら。あんたは? あんたもこの地にいちゃいけないんじゃないか?」
「……素直に立ち去ればよいものを。口は禍いのもとだ」

 男が片手を銀河に向けた。
 次の瞬間、彼の後ろから数十人を越える盗賊団が現れ、銀河に襲い掛かった。

「「「「オォオオオ!」」」」
「…ちっ、人間かぁ!」

 銀河は襲い掛かる盗賊団の刀から逃れ、砂丘を転がる。

「うぇ、砂食っちまったぁ。……うわぁっ!」

 底まで落ち、口に入った砂を吐き出す銀河の目の前に銃弾が打ち込まれる。思わず、仰け反る。

「ガザの連中のがもう少し場を弁えてたぞ?」
「………遊びは終わりだ」

 男が銃口を銀河に向ける。数多くの戦場に立ち会った銀河にはわかった、彼は絶対に自分を打ち抜くと。
 銀河は軽く舌打ちをすると、砂丘の頂に立つ男を睨みつけ、息を大きく吸い込んだ。

「殺せない!」
「!」
「お前らは、俺を殺す事はできない!」
「! ……まさか、その力は」
「俗に言うところの「G」の力だよ? 今俺は、お前らに俺を殺す事はできないと言った。だから、お前らはもう俺を殺す事ができない」

 銀河は立ち上がる、砂丘を登りながら拳銃を構えたまま動けない男に言った。

「悪い、俺は元々この世にいちゃいけない存在なんだよ? だから、今更立ち去る先なんてものもないんだろ?」

 砂丘を登りきった銀河は自分に銃口を向けたままいる男を見上げて言った。男は言う。

「……爾落人か」
「へぇ、その名前を知っているんだな? 如何にも、俺は心理の爾落人だ」
「先ほど、ガザと言ったな。噂で聞いた。サンジューローとは、お前か?」
「あぁ、そんな呼び名もあったな?」
「………そうか、お帰りなられました」
「へ?」

 キョトンとする銀河の前で、ラクダから降りた男は銃をしまい、彼の足元へ跪いた。

「お、おい? なんだよ?」
「……やはり、お姿も変わり、記憶も封じられておられますね。今のあなたは、ラーでもありません、その仮の姿、ホルスの化身とも申しましょうか」
「その呼び名……ガラテアを知っているのか?」
「ガラテア様を知っている。……やはり、あなた様でしたか。ガラテア様は魔都でお待ちになられております。しかし、あなたはまだ本当の力を取り戻されていない」
「どういう事だ?」
「百聞は一見にしかず、魔都へお近づき下さい」
「魔都?」

 銀河は男に言われ、彼の見つめる先を見た。砂丘の先に、ピラミッドが聳えていた。

「あれが、魔都? ……ん? なんだ? 俺は、アレを知っている?」

 既視感に囚われた銀河は目を凝らしながら、魔都に近づいていく。盗賊団はそんな銀河の様子を黙って眺める。

「………ダメだ、思い出せない! なんだ? 俺は、なんでここを? この景色を? 知っている? ………来る!」

 銀河は突然、足を止めた。体が警告を発しているのを理解する。危険が自身に迫っている事を、全身で感じ取っている。

「……上か?」

 銀河の周囲に影がかかる。月が何かに隠されたのだ。銀河は空を見上げた、そこには巨大なコンドルがいて、銀河に襲い掛かってきた。

「大コンドル! くっ!」

 銀河は護符を取り出そうとするが、体が震えて上手く動かない。

「……何で? くそぉおおお!」

 銀河は叫び、間一髪のところで地面に伏せ、大コンドルの攻撃を避けた。

「な、なんだ? ……なんで、動けなかった?」
「それが、あの大コンドルの、魔都の守護神の力だからだ」
「力?」
「大コンドルは魔都へ近づく者を襲い、魔都へ何人たりとも入れない。そして、見た者に自らを攻撃する事ができないようにする力を持っている」
「だけど、ガラテアはあそこに行ったんだろ?」
「ガラテア様は、『神々の王』の力を持っています。あの大コンドルと同じ力を。だから、大コンドルからも攻撃されることはありません。あなたも、本来は攻撃されない存在です」
「………あなたは一体?」
「ムハンマド・ビン・アッダウサリー、墓守の一族の末裔にして、この団の長です。あなたは?」
「そうだな、砂山三……いや、後藤銀河だ」
「銀河、『神々の王』の帰還の儀、その第二の方法を用いる。私に着いてきてください」
「第二?」
「第一は、問題なく魔都へ進んだ場合です。あなたは進めなかった。ですから、第二の方法を用います」
「『神々の王』ってなんだ?」
「その答えも、この第二の方法でご説明いたします」

 次々に浮かぶ疑問を投げかける銀河に、ムハンマド・ビン・アッダウサリーは言うと、ラクダに乗った。銀河にもラクダが近づく。

「へ?」
「ラクダです。この地では車よりも頼りになります。お乗り下さい」
「あぁ」

 銀河はラクダに恐る恐る乗った。しかし、不思議なことにラクダに乗るバランスをすぐにつかめた。

「意外に乗りやすいんだな?」
「それは、体が覚えているからだ」
「……?」
「では、参りましょう」

 銀河に告げると、ムハンマドはラクダを歩かせ始めた。銀河も他の盗賊団の面々とともに歩き始めた。




 
 

 病院に日本人が訪ねてきたのは入院して3ヶ月が経過しようとしていた頃だった。

「エジプト考古学博物館の考古学者、サーリム・アッドゥーヒーですね?」

 サーリム・アッドゥーヒーは確かに、個室のベッドで横になっている彼の名前に違いなかった。
 日本人は50歳前後の男と車椅子に乗った10代の少女であった。
 男は人払いをすると、サーリムのベッドの脇に座った。

「突然、個室に移させたり、医療費を全額出資したのはあなたですか」
「あなたに是非協力して頂きたいことがありましてね」
「……聞くまでもないですね。魔都についてでしょう?」
「お話が早くて助かります」

 サーリムが聞くと、男は上っ面の笑顔で返した。車椅子の少女は窓辺におり、黙って外を眺めている。

「あなたが何者かは知りませんが、魔都へ行くのはやめた方がいい。魔都に何があるかを知っているなら、なおさら」
「麻美帝史」
「え?」
「私の名前です。日本「G」リサーチ株式会社という会社の社長をしております。これで何者かはお分かりになりましたか?」
「J.G.R.C.?」
「ご存知でよかった」
「この数年、考古学の研究費で一番の大口出資をして頂くのは「G」関連の組織や企業ですからね。お陰で金策の苦労は減りましたが、同時に純粋な考古学的な価値への注目も薄れた。今の考古学は大航海時代に逆戻りですよ。発見は、イコール金になっている」
「確かにその様に考えている企業も多くありますね。しかし、私は単純に金と結びつけての出資ではありません。金は「G」の研究の先、そこからの技術開発で初めて得られるものですから」
「……魔都についてどれくらい知っているんですか?」
「あなたと同等、もしくはそれ以上です。私の目的は魔都の発見ではありません。魔都に隠された、真実の人類殲滅の書に書かれた呪われた聖剣を求めているだけです」
「なぜそれを?」
「「G」についての情報は、世界一を目指している社のトップに立っているので」
「……行くのは自由です。しかし、あそこには大コンドルが護っている。近付くものを容赦なく襲う。そして、攻撃しようとしても、奴にはそれが出来ない」
「簡単にですが、お話は聞いています。昨年末、あなたはもう一人の方と魔都へ行った。そして、大コンドルに敗れ、命からがら逃げたものの行き倒れ、その地を護る一族の長によってこの病院に運ばれた。それ以降、退院の許可が下りない」
「随分詳しいですね?」
「あなたを退院させないようにしているここの院長に直接交渉したので」
「?」
「お話下さい。あなたは何を見たんですか?」
「見たも何も……俺を魔都へ案内した男は、魔都手前で現れた怪鳥に向かって対戦車砲を構えた。しかし、彼はどうしても引き金を引くことが出来ず、次の瞬間には目の前で断末魔を上げていた。そして、その衝撃に俺も吹き飛ばされ、砂の大地を転がりながら逃げようと我武者羅になった。しかし、足は縺れ、吹き飛ばされた時のダメージで頭はふらつき、砂漠に倒れた。遠くなる意識の中で、ラクダとそれに跨る黒い布で全身を覆った男を見た。……次に意識が戻った時には、この病院の大部屋だ。俺を運んだのはアッダウサリーという墓守の一族で、この病院は彼らの息がかかったところであり、俺は回復したにも関わらず退院させてくれない。そんなところだ」
「それで十分だ。むしろ、あなたには感謝したい。あなた方が魔都を発見してくれたお陰で、歯車が動き出したのだから」
「どういうことだ?」
「まもなく、私達は人が「神」になる時に立ち会えるんだ。そして、その神になるのは、私だ。既に退院の許可は得ている。魔都まで案内をしてもらうよ、サーリム君」

 麻美は椅子から立ち上がると、事情の呑み込みきれていないサーリムに言った。


 


 

「………そして、二本の剣は世界のどこかへ封印され、セクメトから抜かれた剣は手にする者に不滅の王の力を与えると伝えられ、その剣はいつしか呪われた聖剣と呼ばれる様になった。……これが、真実の人類殲滅の書だ」

 夜が明け、車に乗り換えたムハンマドと銀河達は一路、ルクソールへ向かった。

「人類殲滅の書は二つ存在した。一つは、世の中へ公表されているセティ1世の墓に遺されていたもの。そして、もう一つは口伝として我が一族に伝わり、パピルスの紙に一族の長が書に写すことのみ許される今の伝説です。この伝説が外部に漏れることは長い歴史の中、幾度かありました。我が父の代、わずか12年程前の話ですが、パピルスが盗み出され、魔都が発見される直前でした。しかし、その際は大コンドルの目撃をした人物による殺人事件が起こり、うやむやなまま事は落ち着き、ガラテア様も『神々の王』の帰還の儀を行わずに時は過ぎ去りました。しかし、今回は違います」
「俺が着たから?」
「それもあります。しかし、それだけではなく、具体的な目的を持って剣を狙う者の影があったからです。恐らく、前回の事件で真実の人類殲滅の書を何らかの方法で知った人物なのでしょう」
「つまり、その呪われた聖剣を狙って、『神々の王』っていうのになろうとしている人物がいるってのか?」
「そういうことです。着きました。行きましょう」

 車が止まり、ムハンマドは銀河に言った。

「ここは?」
「ルクソール博物館です。既に連絡を入れております。こちらの通用口からお入りください」

 銀河はムハンマドに先導されるがまま、ルクソール博物館の中へと入った。

「つまり、人類殲滅の書に記されているセクメトがガラテアで、それを生み出した『神々の王』ってのが俺の前世で、俺はその記憶をなんにしても取り戻さなきゃならないんだな?」
「ご理解が早くて助かります。しかし、今の銀河はただの爾落人にしか過ぎない。あの方にお会いして頂き、記憶を取り戻して頂きます」
「あの方?」
「……2002年にエジプトへ帰国し、現在はこちらで展示されております」
「展示? って事はまさか」

 ムハンマドは展示場内へ出ると、その前に銀河を案内した。

「ラムセス1世様です」

 ムハンマドが銀河に見せたのは、ラムセス1世のミイラであった。銀河はラムセス1世の前で立ち尽くす。

「……俺は、こいつを知っている。痛ぅ! 左目がぁ!」

 突然、銀河は左目を押さえてうずくまった。周りを観光客達が不審な目で見る。しかし、ムハンマド達と共に博物館の警備員もいる為、何か行動に出る者はいない。

「……なっ! 左目が見えない!」
「元々存在しなかった左目だが、その姿になる際に左目が存在すると言葉を紡いだのだ。だから、後藤銀河の左目は存在した。そして、今まで見えているつもりでいた。しかし、今、銀河はホルスの化身、つまりファラオとしての器を持つ人の存在から、本来あるべき『神々の王』に還ろうとしている。やがてその偽りの眼も消滅する」
「うぅ……」

 銀河は床に倒れ込んで、呻く。そして、その意識は断片的ながらも彼の知るはずのない過去の記憶を追憶していく。

「………ガラテア? 蒲生村? 母さん? 戦争? プルガサリ? クマソガミ? 大コンドル? 龍? 鎧? 魔都? 俺は…一体、誰だ?」
「銀河!」
「!」

 その声を聞いた瞬間、彼の意識は一気に遠い太古の昔から現代の後藤銀河へと戻ってきた。そして、光を失った左目の痛みも引いていき、苦痛の治まっていく。
 ゆっくりと立ち上がった時には、左目が見えないこと以外の身体的な異変は治まっていた。そして、改めて顔を観光客の人垣の中の一人に向ける。

「元紀?」
「銀河」

 そこにいたのは、幼馴染の蒲生元紀であった。10年以上も会っておらず、大学生であった彼女も30歳の女性になっていた。しかし、銀河には一瞬で、彼女が元紀であるとわかった。
 銀河は恐る恐る立ち上がると、元紀に近付いていく。元紀も人垣から出て、銀河に近付く。

「元紀」
「銀河……ぬんっ!」
「っ!」

 元紀は歩み寄ってくる銀河の頬に、渾身の右ストレートパンチをお見舞いした。綺麗な放物線を描いてぶっ飛ぶ銀河。

「銀河ぁ! 何、世界中フラフラとしてんのよ! 一回くらい銀じいちゃんに会いに行きなさいよ! 今はまだ元気だけど、いつぽっくりいって、後悔しても知らないけどね! じいちゃんにさびしい思いをさせてみなさい、わたしがただじゃ済まさないんだから!」
「痛ぅ……グゥはないだろ?」

 床に突っ伏した銀河は、殴られた左頬を押さえて文句を言った。

「じゃあ、蹴って欲しかった?」
「なんでそうなんだよ?」
「再会の感動をこうして身に染みて欲しかっただけよ! 何? 銀河、文句でもある?」
「大アリだ! 痛みで身に染めるなんて、趣味は俺にはねぇよ?」
「まぁまぁ、強がりなさんな。わたしだって、銀河に聞きたい事がたくさんあるんだから」
「……この女性は?」

 突然の出来事に呆然としていたムハンマドがやっと口を開いた。
 銀河は伏目がちに言った。

「俺の幼馴染」
「全く、課長もなんで事態をややこしくしてくれるんですか? あなたはサーリム・アッドゥーヒーを病院に運んだ墓守の方ですね? 俺達はなんだかわからないが、暴走気味の社長を止めようと考えている善良なるJ.G.R.C.の社員です」

 人垣から出てきた榊原が名刺を取り出し、ムハンマドと銀河に渡した。

「J.G.R.C.……どっかで?」
「多分、朝鮮でガンヘッド関連で聞いたんじゃないですかね?」
「あぁ! あの時の! ……という事は、その社長って確かアサミとかいう男の人?」
「え? 知っているの?」

 銀河の言葉に思わず、元紀は驚いた。

「うん。確か、韓国で一度……そうそう、彼の車に轢かれたんだ。懐かしいなぁ」
「………」
「……課長、こいつが本当にサンジューローで旅人なんですか?」
「残念ながらね」
「待て、お前達はこの方の正体を知っているのか?」

 溜息混じりに言う元紀にムハンマドは聞いた。内容によっては、今ここで殺しかねない様相だ。
 しかし、榊原は平然とした様子で答えた。

「正体と言っても、あなたよりも知っている事は少ないと思いますがね。でも、彼がこの姿になっている事情については、我々の方が詳しい自信がありますよ」

 榊原はムハンマドに言うと、二枚の写真を手渡した。それを見てムハンマドは目を見開いた。

「こ、これは!」
「そっちが中学卒業時の後藤銀河さん。そして、こっちが中学卒業時の麻美帝史社長の写真です」
「へ? 俺?」

 愕然としているムハンマドの手から写真を取り、銀河も写真を見た。
 その顔は一瞬にして青ざめた。

「どういうことだ?」
「銀河、あなたのその姿の正体よ。その姿は麻美社長のクローンよ」
「………へ?」
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