第二章 ジラクノオモイ


「隆文?」

 街中の、とある喫茶店。無精ひげを生やした男性と、体付きのいい女性が窓際の席に座っていた。男性の方は、ぼーっと外を眺めていた。

「ん?ああ、悪い。」
「やっぱり、信用して無いんじゃない?あの2人の言う事。」
「さあな……でも、他に当ては無いだろ?」
「……隆文、こんなに私の為に必死になって……」
「それは言わない約束だ。気にしないでくれ。」

 女性、渋川蘭子は凄く心配した。この男、川崎隆文はどこまでやるつもりなのか。あの2人の言う事に振り回されてはしないかと。

 隆文が接触した2人の人物の事を蘭子はあまり知らない。片方の人物とは直接会ったが、もう片方の人物とは会った事が無い。隆文だけが接触したと言う。

「情報は……確かだと信じよう。でなければ、また彼女の元を訪ねれば済む話だろ?」
「うん……」
「お前は、見ているだけでいい。」

 隆文は、ある目的のためにこの街を訪れた。ある人物に導かれた。この街に、「G」の能力を有する人、爾落人がいると。その人物の名前は北条翔子。裏社会における「G」の第一人者と言われる彼女に、隆文は蘭子を連れて訪ねた。

「爾落人の居場所?」

 いきなりそれを問われた翔子。事務所を開いて数年経つが、こんな依頼は初めてだ。

「君、自分の言ってる事がどういう事か分かってる?」

 翔子は、隆文の言う事を聞き入れるつもりは無かった。というのも、翔子の営業方針とはまるで異なる依頼だったからだ。

「私の営業方針は「G」による直接的被害を秘密裏に防ぐ事にあるんだ。一般人であるあんたにそんな事できるはずが無いだろう?」
「一般人……ですか。」
「?」

 ふとした事だった。翔子はその瞬間から、隆文の隣に座っている女性、蘭子に興味を持った。

「……なるほど。一般人というのは早とちりか。観察を誤ってしまったのは謝罪しなければならないな。」
「え?」
「君らの目的は分からない。しかし、爾落人の情報、確かに、たまに入って来るんだ。だから教えようと思えば教えられる。」
「それじゃあ……」
「まあ待て、仕事とあらば、私も人間だ。爾落人のいるという情報を授けるが、信用性に乏しいというのは念頭に置いていてもらいたい。私自身が仕入れた情報だが、その真偽を確かめる暇は無いんだ。」
「構いません。俺が真偽を確かめます。」
「なるほど……」
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