第二章 ジラクノオモイ


 外は再び、雪が降りだしていた。店から出て、あの坊主と少女を付けていく事にした俺達は、2人を見失わないように歩き出す。

 しばらくして、河原の近く、周りには何もない道に入った。この雪の下は、畑か水田なのだろう。そして俺は、2人の前に出た。

「待て坊主!」
「あっ、さっきの!」
「レン、この人は?」
「あ、ああ、さっきのレストランにいたおっさんだ。」
「おっさんと言うなって言ったよな?」
「そっちこそ、坊主はやめろよな。」
「大人に対する話し方を知らんのか……最近の子供は……」
「で、何の用だよ?」
「隆文、いい?」

 2人の後ろにいた蘭子。振り向いた坊主はしばらく固まっていた。多分、蘭子に見とれていたのだろう。

「……」
「レン?」
「あ、あんたたちは……」
「私の名前は、渋川蘭子。彼は、川崎隆文。とりあえず、お話しない?」
「いいですよ。」
「そっちの彼は、能登沢憐太郎君よね。あなたは?」
「守田紀子と言います。」

 どうやら、この場においては女性陣の方が落ち着いて話せるらしい。俺も、とりあえず平常心を取り戻した。

「私達が、この街の人間じゃないのは分かるわね?」
「はい。」
「私達は、あるものを調べるために来たの。この街に調べもので来るという事、あなた達には心当たりがあるはず。」
「……いいえ。知りません。」

 俺も蘭子も確信した。この2人は、意図的に隠している。しかし、次の瞬間に蘭子がとった行動は俺も驚いた。
 蘭子は、この2人に自分の力を見せてしまった。坊主の足元の雪を破裂させたのだ。
 唖然とする2人。俺もそうだ。蘭子がこんな強行手段に出るとは思わなかったからだ。

「私、嘘を言われるのは嫌よ。知ってるんだから。この街に4年前、巨大なカメの怪獣が現れている事。そして、今もこの街のどこかにいるという噂があること。そして、さっきあなた達はレストランで、ガメラと言っていた。それが、カメの怪獣なんでしょ?」
「そ…それは……」
「……すいません。そこまでご存知とは思わなかったもので……」

 この少女は強気だ。しかし、話がしやすいというのは良いことに違いない。蘭子は俺の隣に来た。

「ガメラについて話す前に、こっちも教えてほしいことがあります。蘭子さん。あなたのその力……」
「そう、「G」よ。私は、破壊の能力を植え付けられた能力者。」
「爾落人ではないんですね。」
「ええ。」
「そうですか……」
「次はこっちから質問させて。まず、あなたから。紀子さん。あなたは何者?」
「……気配で分かるんですね?」
「そうね。爾落人に近い感じだったけど……」
「正確には、爾落人ではありません。私は……」
「ちょっと待って紀子!いいのか?こいつらに話しても…」
「大丈夫よ。能力者の人なら、私の事、理解してくれるはず。」
「……」
「簡単に説明します。私は、ガメラと精神面で一体化し、その力を目覚めさせる役割を持つ、巫子と呼ばれる存在です。」
「初耳だな。爾落人とは違い、能力者でもない。」
「でも、肉体を「G」化させているのですから、爾落人に近いです。」
「……その経緯についてはいい。俺達は、「G」の命を求めて旅している。」
「!?」
「ある人から聞いたんだ。「G」の力を取り去るには、命を持つ「G」のそれを捧げるしかないってな。」
「もしかして、蘭子さんの力を取り去るために……」
「ああ。だから、選んでくれ。あんたが死ぬか、ガメラを呼ぶか。」

 銃を取り出した俺を見た瞬間、坊主の顔色が変わった。そして、すかさず俺と紀子の間に立つ。

「ふざけんな!勝手なこと言うな!紀子は絶対に守る!」
「だから選ばせてやる。その子か、ガメラか。」
「ガメラも、俺達の大事な友達だ!殺すなんて許さない!」
「友達?「G」が?馬鹿を言うな!人間とは全く違う存在である「G」が友達だと?」
「そうだ!巫子の紀子も、ガメラも、大事な存在なんだ!」
「坊主、「G」って奴をお前は分かってないよ。知ってるんだろ?「G」がどんなに危険なのか。」
「おっさん……」
「そんな「G」の力を植え付けられた蘭子は可哀想だ……俺は、蘭子から「G」を取り除きたい!だから……」
「ちょっといいですか?」

 また言い争いをはじめた俺と坊主の間に入った紀子。怖くないのだろうか?俺の銃口は、紀子に向いたままだというのに。

「何だ?」
「……あなたは間違っています。彼は、レンは言ってくれました。「G」になった私を見てもなお、私に対する想いは変わらないと。」
「だから何だ?俺達とは何の関係もない。「G」を肯定している奴の意見をまともに聞くつもりはない。」
「そんな……」
「悪いな。今の俺は、蘭子を救う事しか考えていない。そっちにいくらまともな意見があっても、聞き入れられる耳を持っていないんだ。」
「紀子!」

 坊主が紀子の手を強く握った。するとどうだ。紀子の胸元で何かが光った。

「なっ!?」
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