第二章 ジラクノオモイ


 それから数週間が過ぎた。隆文と蘭子は街を去った。灯台での事件も、ふ頭での事件も捜査は打ち切られた。

 そして、夏休みもあっという間に終わり、今日から新学期。

「いいよ姉さん。後は任せて。」
「でも……真人だけじゃやっぱり不安よねぇ。」
「大丈夫ですよ。いざとなれば私がいますから。」
「ほら、早くしないと美奈に置いてかれるぞ。」
「それじゃ、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」

 そう言って玄関を出た真人と、高校の制服を身にまとった菜奈美。今日から、真人達の高校に通う転入生としての生活が始まる。

「おはよー!真人!菜奈美ちゃん!」

 1つ坂を下りた所には美奈が待っていた。

「やっぱり!ウチの制服、菜奈美ちゃんに合うと思ってたんだ!」
「うん!とっても可愛いよね。」
「勉強の事、分からなかったら何でも……」
「教えてもらうのは俺らだよ。自己紹介の時に言ってみろよ。4000歳の桧垣菜奈美ですって。間違いなくウケるぜ。」
「イ ヤ よ 。」
「ちょっと、のんびりしていられないわ。早く行こ!」

 美奈に手を引かれ、菜奈美と真人は学校への道を歩み出した。それは、菜奈美の新しい生活への第一歩の始まりだった。
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