第二章 ジラクノオモイ


「ここか……」

 その頃、翔子はあの灯台に来ていた。警察による現場検証も終わっていて、誰もいなかった。内部の修繕作業は明日から行われるという事らしい。

「さて……」

 入口には、立ち入り禁止の札がかけてあり、ロープで入口は塞がれていた。しかし、翔子が用があるのは最上階のみ。

「……ふぅ……」

 転移の能力者。それが翔子だ。それから1秒も経たない内に最上階にたどり着いた翔子。しかし、そこにいたのは翔子だけでは無かった。

「そうか。貴様も辿り着いたのか。北条翔子。」
「お前が絡む事にはろくな事は無いよな……玄奘。」

 そう。翔子が知っている唯一の爾落人、加島玄奘だ。翔子は玄奘がいると知ってここにやってきた。

「何を吹き込んだんだ?」
「貴様に話す必要は無い。私は只、己の目的にのみ殉じて行動している。」
「それで迷惑している私の身にもなれ。お前の無責任な一言がこの結果だ。」
「無責任とは、心外だな。「G」についてよく知らぬ者が立てた勝手な憶測が招く結果に過ぎない。「G」を知らぬ者が「G」に触れる事こそ、無責任と捉えるべきだ。」
「はぁ……いいか玄奘。迷惑しているのは私だけじゃない、その爾落人もだ。」
「私の目的が何であれ、貴様に関わる話では無い。その爾落人を落とす事こそ我が目的。」
「消すつもりだった……いや、あの連中に消させるつもりでか……」
「実に容易い事よ。女に「G」の力を与え、それを消し去る方法を伝えれば、男はそれに殉じて動く。」
「なるほど……お前はあの男の気持ちを利用するに簡単に成功させてしまった訳か……変だと思ったのさ。まだ自分の力を正確に知り得ていない女と非能力者が私の元に来るなど。」
「無用な戦いは避けるべきだ。後はお前が如何にして、あの者達を導くか。」
「玄奘、貴様の目的は何なんだ?例の爾落人か?」
「お前に話す道理など、有りはしない。」
「なら、私はお前の邪魔をさせてもらう。何も知らない能力者同士が戦って得られる事など無いし、悲しむ者が出てくる。私には、それを防ぐ義務がある。」
「止められるかな?あの爾落人の力、並大抵のものでは無い。爾落人では無い貴様には、何もできない。」
「私の能力も、そこら辺の後天的能力者の比では無い。お前が一番よく知っていると思うがな。」

 翔子は自らが作り出した空間の裂け目に姿を消した。それを玄奘は追おうとしなかった。

「たわけが……」
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