‐Gift‐ オノゴロからの贈り物
「春華さん、あっちの絵見て来ていい?」
「うん。いいよ、葵君。でも、あまり遠くに行かないでね。」
「オレ飽きた~。ゲーセン行きてぇ~。」
「う~ん・・・もうちょっと興味持とうか。火輪(ひわ)君。学校の課題もあるんだから。」
「ババルウ事件」から一ヶ月。
一部を除いた人々から事件への興味も記憶も消え失せた中、京都府・臥龍町の公民館で、「G」をテーマにした絵画のコンクールが開催されていた。
今、京都市在住の大学生・麻生春華が昔からの友人である地元の中学生・五条葵と青木火輪を連れ、2人の中学生からの宿題の消化も兼ねてコンクールの絵画を見て回っていた。
ーーそれにしても、かなり独特的な絵が多いけど・・・この「G」をモデルにしました、って見てすぐに分かる絵はあまり無いかな・・・?
ううん、私の美的センスがまだまだ及ばないのかもしれないし、そもそも「G」が場違いなモノの総称なんだから、一目で分からないモノぐらいでいいのかもしれないし・・・!
「G」と言う題材に対する分かりやすさの判断に悩みながら、春華は絵画を見て行く。
それぞれの画家達の、各々のセンスと腕前と「G」へのイメージによってキャンバスを舞台に描かれた数々の絵画は、どれも個性を放ちながら壁に飾られていたが・・・やはり多くの人々は芸術に分かりやすさを要求してしまうからか、巨大「G」の筆頭であるガメラや「朱雀」、2012年・韓国及び北朝鮮での民主化市民革命以降、昨年巨大「G」・ヤマタノオロチや謎の白銀の巨大ロボットが現れたエジプトを始めとして、世界中の紛争地域に出没している謎の流浪の革命家「三十郎」を題材にした絵画に人が集まっている。
ーーやっぱり、みんなガメラとギャオスや三十郎さんが大好きなのね。
私は・・・「最珠羅」を描いた絵画とかは無いのかな・・・
「あ~、いいなぁ。この絵。何か知らないけど、すごくいいなぁ・・・」
『キミもそう思う?分かってるねぇ~☆あたしもこの絵が、一番お気に入りっ!』
「?」
ふと、ある一枚の絵画を賞賛する声が耳に入った春華は、その絵画に近付いてみる。
絵画を賞賛していたのは、ネイビーブルーのツナギーー同じ町の水族館「アクアマリン・アクアリウム」の制服ーーを着た、左胸のネームプレートに「浅月 戴波」と書かれた青年と、異様にカラフルな服と手に持った金色の杖が目立つ女性だった。
ーーあの男の人、あそこの水族館の従業員さんだ。
あの女の人は・・・ファッションデザイナーの人?
どんな絵なんだろ・・・っ!?
春華も絵画を見てみるや、隣の青年・女性と恐らく全く同じ感情を抱いた。
それは心の底に響くような、深い歓喜と感動・・・おいそれと全てを表現する事が出来ない、つい簡単な言葉しか出て来ない、溢れ出る思い。
「・・・いいですね、この絵・・・!」
その絵画は一ヶ月前、淡路で再び人々の前に姿を現したバランを題材にしたものであり、諭鶴羽山を思わせる緑が生い茂る山を背景に、古墳の壁画のようなテイストでバランの横顔が、その中にパステル調で7人の男女と一つの風車が、白いシルエットで描かれていた。
絵画の下のプレートには、タイトルと作者の名前が書かれており・・・
「オノゴロからの贈り物」
ラズリー・T・スピリーズ
ラズリー・T・スピリーズ
そう、この絵画はラズリーが「ババルウ事件」での出来事を元に描いた、姉やマインだけで無く特捜課の3人、そしてアンバー・アーク・バラン・・・隼薙への感謝と、巡り合えた感激を形にした作品であった・・・
第二章番外編・終
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