‐Gift‐ オノゴロからの贈り物











ーー・・・勝手に、大往生しようとしてんじゃねぇ!
この、ナンパ医者野郎!


「!!」




走馬灯から覚めた、マインが見たもの。
それは、彼から見て西側・・・夫婦(めおと)となったイザナギとイザナミが降り立ち、「くにうみ神話」が始まった地であると伝わる小島・沼島(ぬしま)より吹いた、力強くも心を震わせる「風」。
その両腕で、ババルウごとパラグラーを弾き飛ばす、圧倒する「力」。
マインだけでは無く、スピリーズ姉妹と特捜課達も釘付けにする、巨大なる「声」。




グウィゥゥゥゥゥゥゥゥウウン・・・




「・・・ようやく、お会い出来ましたね・・・隼薙さん・・・!」




そして、マインの両目から自然と涙がこぼれ落ちる程に、彼が待ち焦がれていた「存在」・・・白虎・バラン。
その心に宿りし、本物の「風使い」・・・初之隼薙が、そこにいた。




『ほ・・・ほんものだ~っ!!』
『ほんと、主役は遅れてやって来るってわけね・・・♪』
「ウソ、だろ!?」
「間違いないわ、あれが伝説の巨大「G」・四神の内の一体・・・」
「白虎・・・バラン・・・!」




スピリーズ姉妹と特捜課も、各々でバランに対して違う反応を見せる。
スピリーズ姉妹はマインと同じく、旧友との再会に心を震わせているのに対し、特捜課は同じ巨大「G」でも全くの初遭遇だったパラグラーとはまた違う、存在や名前は前々から何となく知ってはいたが、本当に実在する感覚が無かった者と出会った・・・さしずめ、「神」を見たかのような実感を味わっていた。






「な・・・なななな、なんで本物のバランがこんな所にいるんだあああぁ!?」




一方、バランの指先一つで林に投げ出されたババルウはこれまでに無い程に酷く動転し、バランの拳を顔面に受けて諭鶴羽ダム付近に叩き付けられたパラグラーは、起き上がって自分を意図も簡単に圧倒した相手を確認するや、目を見開いて仰天する。




「え・・・えぇい!!奴らが油断している内に逆襲だ!行けぇ、パラグラー!!」




ギィィゥゥゥゥゥウウ・・・




ババルウは尚も自己中心的な計画を達成しようと、前髪を掻き上げてパラグラーに命令しながらやはり異様な歩幅の走法で林を抜け、一行に二度目の攻撃を仕掛けようとする。
パラグラーもまた、ババルウに加えて同類ながら自分とは格が違うバランに萎縮しつつ、いきなり顔面を殴ったバランへの少々の怒りを糧にして、体の両脇から皮膜を広げて飛び上がり、殆ど同じ体勢を取りながら自分の領域(テリトリー)である諭鶴羽山の頂上を陣取るバランへ向かって行く。




『あっ、またまたへんたいがこっち来る!』
『ほんと、しつこいわね!』
『空気も読めないとは・・・!男の風上にも置けない人ですね!』
「あんのパチモン、今度こそ思いっ切りぶん殴ってやる・・・!」
「それには及ばないわ、宮代君。私達、パラグラーを相手にしなくて良くなったし。」
「いや、綾さんは休んでて下さい。ここは俺が・・・」






「アーク様、ご協力お願い致します!」
『承知した、アンバー殿。』




ババルウを迎え撃たんと、凌が右手を構えたその時。
透き通るような美しさと凛とした強い意志を兼ね備えた声、淡々とした事務的な機械の声と共に、一筋の風が表参道から吹いた。
風はまるで何かに導かれるかの如く、一切の無駄の無い軌道でババルウへ向かうと、ババルウの全身を包み込んでその動きを封じる。
逆に近くにいるマイン達には、不思議と心地好さすら感じる微風しか当たらず、一行は驚く。




「う、うごけ、ないっ!?」
『この声、もしや・・・!』
『こんなにいい風を吹かせられるのは、多分・・・』




しかし、マインとスピリーズ姉妹は違う理由で驚いていた。
風と共に聞こえた声に、つい先程バランと再会した時と同じ感覚を覚えたからだ。




『も、もしかしなくても・・・アンバ~!!アーク~!!』




表参道から現れた、風と声の主。
それはマインとスピリーズ姉妹が、心の中でバランと並んで再会を待ちわびた存在・・・白銀の髪と白い玉肌をした琥珀の瞳の女性と、右手首に付いたもの言う機械の風車。
バランと一心同体である白虎の巫子・初之穂野香の体に宿りし白虎の心・アンバーと、現在一時的に彼女の相棒となっている人工「G」のアークであった。
そう、今ここに「ジャイガー事件」に関わった全ての者達、「旧友」の再会が実現したのだ。




「こんにちは・・・いえ、もうこんばんは、でしょうか。お久し振りです、マイン様。ラピス様。ラズリー様。」
『1100日振りの対面だな、そなた達。』
『アンバーさん・・・アークさん・・・!お久しぶりです。』
『やっぱり、まだそのままの筈よね・・・!久しぶり。』
「・・・JD、だよな?やたら大人っぽくてお姫様っぽくて綺麗だけど、女子大生だよな?」
「一樹、本音全部漏れてるぞ・・・」
「そう言う東條君も、声が震えてるけど?それより、あの機械がちゃんと会話をしている事に驚かないと・・・ラズリーさん、なるべく簡単に説明してくれる?」
『え~っと・・・アンバーは白虎の心で、はやてのいもうとのほのかの体を借りてるんだよ!で、アークははやての「かいぼう」でだれかが作った、「G」のマシーンなんだ~!』
『「相棒」ね、ラズリー。まぁ、話すと長くなるので詳しくは全部解決してからにしますが・・・要は右京さんと亀山さんの体が入れ替わって、伊丹さんがサポートで特命係にいる状態なんです♪あっ、亀山さんは神戸さんでも甲斐君でも冠城さんでもいいですよ?』
「・・・大体分かったわ。」
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