本編











一方、遥か空の上を飛ぶバランの掌の中で、アンバーは目を瞑りながら、これまでの出来事・・・そして、これから待ち受ける日々への思いを心の中で呟いていた。




――隼薙と穂野香が戻って来て、わたくしが再び白虎となった時。
わたくしは「G」として、皆様と別れなければならないと、ずっとそう考えていました。
ですが、わたくしを受け入れてくれる存在が出来た今、それは杞憂に終わるのですね。
たとえ、年月が皆様とわたくしを引き裂いても、皆様はわたくしの心の中で永久に在り続ける。
もうわたくしは、ひとりでは無い・・・わたくしに訪れる、永遠の明日。
そうですよね・・・隼薙。




勾玉を握り、アンバーはそっとバランに問いかけた。
バランもまたゆっくりと頷き、アンバーの右手に付いたアークも風車を回す事で、自らの存在を促す。




『バランに相談するのも悪くは無いが・・・私もまた「G」。私に聞いた方が良い事があるかもしれない。』
「そうですね。ありがとうございます、アーク様。では、アーク様は如何にして生まれ、風車の「G」となったのですか?」
『・・・私の出生は、また別の機会にさせてくれ。だが、後者の回答をするのなら、私は風になりたい・・・そう願ったからこそ、風車(かざぐるま)となった。この程度の返答で申し訳無い。』
「いえ、ありがとうございました。また心の整理ができたら、全てを話して下さい。なのでそれまで、わたくしと穂野香の体を守って下さいね。アーク様。」
『了解している。』
「それから、バランも。」




グァウウウ・・・




バランはアンバーとアークをその目で深く見つめ・・・隼薙として、笑みで答えた。




――あと・・・これは、わたくしの心にだけに秘める想い。
・・・愛しております。隼薙。
貴方を心から、永遠に。










こうして目覚めを果たした、天照す風神・バラン。
その心が、真(まこと)の安らぎの時を迎えるのはまだ先の話・・・




グウィゥゥゥゥゥゥゥゥウウン・・・










第二章・終
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