本編
同時刻。
警視庁内に設置されている射撃訓練施設に特捜課の3人がいた。
捜査官の1人である宮代一樹は自動拳銃の弾倉に弾を籠め、安全装置を外す。勿論その前にゴーグルの装着を忘れない。
そして的の中心部を狙い、引き金を引く。
放たれた弾丸は錐揉み回転しながら的に当た…る事はなく、大きく逸れた。
「はぁ…、オレもういい。」
一樹は溜め息をつくと拳銃の安全装置を掛けて台の上に置いた。
もはや訓練に投げやりな一樹に一部始終を見ていた凌と綾が何度目になるか分からない説得を試みる。
「あのな、警察官にもノルマがあって射撃訓練で弾を消費しなければならない数が決まってるんだ。」
「じゃあオレの分を2人で撃って良いよ。」
「駄目よ。自分で撃って己の射撃の腕を磨かないとここ一番で外したらどうするの?」
「この前のツルクの時だって一発も当たってなかったじゃないか。」
「な、何でそれを…」
「鑑識の笹平が言ってたぞ。現場検証したら電柱に弾痕があった、念の為に発見された弾丸の旋状痕も調べたら特捜課の所有する銃と一致した、ってな。」
「そ、それは…」
「とにかく、もう一度教えるから聞いておけよ。」
「…頼む。」
凌は仕方なしにゴーグルを装着して自動拳銃の安全装置を外す。
そして照準器で的の中心部をしっかりと捕捉した。
「肩、肘、手首は反動を吸収するバンパーみたいな役割を果たす。これを利用して銃撃の反動を吸収させ、撃った時に照準がズレないようにする。」
そして凌は引き金を引く。弾丸は的のほぼ中心部分に命中する。
「さすが元SITね。」
「まぁ、今は銃がいらない事に身体だった事に気付きましたが。」
「…はぁ。」