本編


「能力者は逮捕できたらしいね。」


特捜課。一仕事終えた3人を、コーヒーを煎れた倉島が出迎える。


「はい。先程公安に渡しました。」
「これで葛城は晴れて自由の身。送検前に検挙できて本当に良かったです。」
「とは言っても、伊吹さんが事件を持ち込まなかったら事件の黒幕すら察知できませんでしたが。」
「ご苦労様。ほら、飲み給え。」
「ありがとうございます。」


上司の煎れるコーヒーの何気ない一杯が、3人を労う。できれば伊吹と共に飲みたかったが本人が拒否するだろう。


「あの…」
「…なに?」


凌は綾に聞き辛そうに話を振ってきた。


「他人に意識を乗っ取られるのはどんな感じでした?」
「そうね……良い気分じゃなかったわよ。記憶もないし。それに気がついたら手錠がかけられていてかなり驚いたんだから。」
「…すいません。」
「仕方ないわよ。私に春野が宿っていたんだから。まさか憑依の能力だったとは思いもしなかったし。唯一の救いは私達3人が能力を宿している事実を春野が知らなかった事。」
「もし凌が憑依されていたら?」
「東條君の能力は…私達じゃ相手にできないわね。」


一同は再度コーヒーを啜った。


「さぁ、落ち着いた所でエジプトの一件を調べ直しましょう。」
「ぶほっ!」


エジプトの一件。そう聞いた瞬間、倉島がコーヒーを吹き出した。


「…二階堂君、一体何の事かね?」
「係長も黙認しているのでしょう? 皆で直接見た方が早いですよ。」
「…君には敵わんよ。」


倉島は参った様子で自分の回転椅子に座って残りのコーヒーを啜り、一樹はパソコンに向かい合って座りキーボードに触れた。
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