「G」が導く未来 ~「GODZILLA」VS of FINAL~







「ごめんね、美歌。なんかこれが、新婚旅行みたいな感じになって・・・」
「いいよ。これはこれで中々無い、私達っぽいハネムーンだし。」
「毎度ながら慣れてると思うけど、うちの恋人がほんとごめんなさいね・・・さっ、もうすぐ到着よ。」



結婚式から一週間後の大晦日。
翼と美歌はみどりの同行の元、ヘリでベーリング海・アドノア島に向かっていた。
当初は青木・桐城両夫妻も同行したいと言って来ていたのだが、自分達がいない大晦日くらいは夫婦水入らずで過ごして欲しいと言う翼と美歌の意見で、同行しない事となった。
更に今回の事情を考慮して未希もあえて同行せず、翼・美歌・みどりとヘリの運転士のみで向かうと言う、目的地を考えれば無謀ともいえる人員であった。
この危険だらけなツアーが実現したのも、三枝未希以来となる希代の才媛と言われた、博士号を取得し東都大学環境情報センターでの研究員を経て、二十代半ばでG対策センター環境研究部門副主任の職に就き、アドノア島周辺環境の変化推移調査を調査する為に幾度と無くアドノア島を訪れている、みどりの実績と信頼が成せた技に他ならない。



「これが、アドノア島・・・」
「何だか、寂しい感じがする島ね・・・」



暫し後、一行はアドノア島に到着。
かつて不法投棄された使用済核燃料の影響で何処にも草花の無い、岩肌が剥き出しになった巨大な岩山しか目立つ物の無い殺風景な光景に、翼と美歌は人類の業を感じつつ、岩山の中腹に埋め込まれるように建設された観測基地に入って一息する。
それから再びヘリを飛ばし、2人は観測基地のちょうど裏の平原に佇む、この島の「主」と出会った。



ゴガァァァァァァァオン・・・



「わぁ・・・!」
「・・・こんなに近くで見るのは、初めてだよ・・・ゴジラ・・・!」



そう・・・かつて母が世話をし、先代の命と思いを受け継ぎ、健と心を通わせて人口知能と絶対悪魔から世界を守り、今や人類の敵で無くなってこの島で密かに暮らしている、怪獣王にして健の友。
そして翼にとって、兄のような存在でもある・・・ゴジラだ。



「す・・・すごいね、翼。あんなすごいのと、健兄さんって話したり、顔面を殴ったりした・・・んだよね?」
「う、うん・・・」
「翼君、ゴジラに話しかけてみる?」
「えっ?」
「最近あいつが来るようになってから、梓さんと三枝さん以外の人の言葉にも興味を持つようになったのよ。だから、あいつの一番弟子の翼君にも興味を示してくれると思うわ。」
「で、ですけど・・・」
『翼!そのヘリに乗ってんだろ?だったら、ゴジラに話しかけてみろ!もうあいつにお前の事は話してある、後はお前次第だ!』
「!!」



と、そこへ突如ヘリのスピーカーから聞こえて来た声に、翼は驚くと同時に萎縮していた気持ちが消え失せていくのが分かった。
兄のように思っているとは言え、あくまで思っているだけであり、今までちゃんと会った事も無い巨大過ぎる存在である、ゴジラへの萎縮。
それが消えた翼はヘリのドアを勢い良く開き、ヘリを・・・自分を見るゴジラへ叫んだ。



「ゴジラーーーーーっ!!おれは桐城健の一番弟子で、君のお母さん代わりの青木梓の子供の、青木翼!!
だからおれにとって、君は兄みたいな存在で!
おれの兄貴の友になってくれた君に、会いたいって思ってたんだぁーーーーー!!」



必死に叫ぶ翼を見て、ゴジラは初めて健と出会った10年前の弥彦村での事を思い出していた。






『・・・止めろ・・・止めろ・・・止めて・・・くれ・・・!』



後に友となる健が、地面に伏しながら村をこれ以上壊されないように絞り出して叫んだ、必死の懇願。



「・・・あにき~!!どこっすか~?おれっちが、助けに来たっすよ~!!」



それと同時に、遥か彼方から健を救う為に翼竜型の機械に乗ってこちらへ向かって来る、1人の少年の姿。






グルルルルル・・・



ゴジラは理解した。
この青木翼こそが、あの時健を助けようと決死になっていた少年の、今の姿なのだと。
同じ女性の愛を受けて育ち、同じ男の生き様と魂に共感した者同士・・・
ゴジラが翼を受け入れる理由など、それだけで良かった。



ゴガァァァァァァァオン・・・



「・・・!」
「翼、これって・・・」
「うん、間違いない。翼君の思い、ゴジラに伝わってる。梓さんも喜ぶと思うわ・・・!」



――・・・きっと10年前のおれだったら、こんな事は出来なかっただろうな・・・
この10年でおれは強くなれて・・・君と、話せる男になった。
ありがとう・・・そして・・・


「これから、よろしくね・・・ゴジラ!」
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