「G」の去った夜に
日本某所、何者の侵入も拒む雰囲気を漂わせる山々の奥、ひっそりと佇む山小屋の前に、1人の男が立っていた。
「・・・」
茶色い外套を全身に羽織ったその男は何かを思い出す様に、一点の曇りも無い青い空を見上げる。
その固く閉じられた口からは決意と後悔の意思が滲み出ていたが、男は何も語らない。
暫くの間、そうしていた男はふと近くにある白いテーブルに置かれた新聞に目をやると、手に取ってそれを読む。
新聞のトップに書かれていたのは、昨日起こったマジロスによる弥彦村襲撃事件の記事だ。
男は記事を静かに、だが幾度と無く記事を読むと、こう呟いた。
「・・・健。」