受け継がれし「G」の名






ズァァァァァァァ・・・



一方、ゴジラはフォライドの起き上がり様に放った電撃状の緑色光線「スクリュー・レイ」を受けていた。
ゴジラが少し堪えた隙にフォライドは飛び上がってもう一度スクリュー・レイを放ち、ゴジラに予断を与えない。



シィアアアアアアアアアアアアウン・・・



濃霧でフォライドの姿が見えないゴジラは四方八方から飛んで来る電撃光線に耐えながらフォライドを探すが、決して薄くなる事の無い霧はゴジラの視界を阻み続け、ゴジラは反撃の一手を見い出せなかった。
しかしフォライドにははっきりとゴジラが見えており、ゴジラの迷いを見越したフォライドは両足の爪を立てながらゴジラの背後に回り、そのままゴジラに攻撃を仕掛ける。



シィアア!シィアア!



無論、フォライドの行動を読めぬままゴジラは甘んじてフォライドの爪を受けてしまい、ゴジラが慌てる間も無くフォライドは嬉々としながらゴジラに攻撃を続け、ゴジラの頭に傷が出来て行く。
この一方的な展開を脱しようとゴジラはフォライドの足に何とか噛み付こうとするが、フォライドは上手く足をすり抜けさせて噛み付かせてもくれない。



シュゴォォォォ・・・



怒りも頂点に達しかけていたゴジラは背鰭を光らせ、フォライドに熱線を放とうとする。
が、フォライドはゴジラが熱線を放つ直前にゴジラに急接近すると、長い両翼から凄まじい量の霧を噴射した。
フォライドがその身を隠す為にも使う濃霧「ディジーネス・ミスト」だ。



グルルルルルル・・・



いきなり濃霧にあてられたゴジラは熱線の準備を解除してしまい、またもフォライドを見失ってしまった。
慎重に辺りを見渡してフォライドを探すが、霧の向こうにいるフォライドは到底ゴジラには見えず、スクリュー・レイの乱発を受ける。
すっかり手詰まりとなったゴジラだが、ここでこの状況を打破出来る、一つの手に気付いた。



・・・



ゴジラが打開策を発見した事に気付かないフォライドはスクリュー・レイの応酬戦法を取っていたが、ふとゴジラの様子がおかしい事に気付いた。
ゴジラは蹲ったまま動かず、何か攻撃もしようとしない。



ズァァァァァァァ・・・



それをゴジラが観念したと解釈したフォライドは、再度電撃光線を放つも・・・その刹那、霧を裂いて飛んで来たのはゴジラの放射熱線だった。



シィィィィィン・・・



熱線はフォライドの右翼を直撃し、多量の羽毛が火花と共に弾けた。
ゴジラはフォライドがスクリュー・レイを放つ時に一瞬霧が切れる音がするのに気付き、あえてフォライドの攻撃を誘ったのだ。
形勢は、ゴジラに逆転した。



シィアアアアアアアアアアアアウン・・・



フォライドはもう一度起き上がろうとするも、ゴジラの放つ放射波動がフォライドを押さえ付け、霧も払われた。
地面に倒れたフォライドを目視したゴジラはフォライドに向かうとその黄緑の尾を掴み、溜まりに溜まった怒りを発散するかの如く何度もフォライドを持ち上げては地面に叩き付ける。
この数発で大ダメージを受けたフォライドは抵抗も出来ず、ゴジラによって山肌へと投げられた。



ジィゥゥゥ・・・



フォライドに止めを刺す為、ゴジラは背鰭を青く光らせると今度はそのエネルギーを両手に集め始めた。
皮膚を伝って青い炎は両手を包み、それは塊となっていく。
そしてゴジラは青き手腕を振り下げフォライドへ突っ込むと、蒼炎の一撃「B・クロー」をフォライドに喰らわせた。



シィィィィィン・・・!



青い火の粉を散らしながら放たれた左腕の第一打はフォライドの胴体に強烈なブローを浴びせ、右腕の第二打でフォライドの胴体を貫いた。
フォライドは悲鳴を上げて爆発四散し、残ったのはゴジラだけであった。



ゴガァァァァァァァオン・・・






一方、健達は無事に麓に到着していた。
途中ゴジラとフォライドの闘いの影響で何度か転倒しそうになったものの、怪我をする事も無くこうして弥彦山から出る事が出来た。



「・・・終わったか。」
「えっ?」
「ゴジラの闘いだ。あの叫びなら、もうあの鳥は焼き鳥だな。」
「ならよかったわ・・・もう、あんな思いをしなくて済むのね・・・」
「あ、兄貴~!」



と、そこに翼が息を切らしながら2人へ向かって走って来た。
健程体力が無い翼にとって、ここまで全力で走るだけでも持久走ものだ。



「おーい!翼ー!」
「ぜい、ぜい・・・兄貴・・・姐さん・・・助けに来たっす・・・」
「ったく、助ける方がそんなんでどうすんだよ。」
「も・・・申し訳無いっす・・・」
「翼君、誰もが健みたいな体力馬鹿じゃないんだから、本当は謝る必要なんて無いのよ~。」
「うるせ!とにかく翼が来たんだ、お前は美歌を連れて早く病院行けよ。あとみどり、これ。」
「・・・これって、美歌ちゃんの・・・!」



健がポケットから取り出しみどりに手渡したのは、美歌の鏡だった。



「約束、してたからな。じゃあ俺はそろそろ行ってくっか・・・!」



そう言うや否や、健はみどりに美歌を預けると弥彦山に向かってクラウチングスタートの体勢を取った。



「あっ、兄貴!?」
「ちょっと健!何しようとしてんのよ!」
「決まってんだろ?ゴジラを止めに行くんだ。もしかしたらこっちに来るかもしれねぇからな。」
「ゴジラを止めるって、あんた・・・」
「・・・あっ!だからおれっちを!」
「そうだ。分かってんじゃねぇか、翼。美歌とみどりは頼んだぜ。」
「健・・・!」
「・・・みどりの姐さん、兄貴は本気でみんなの事を守りたいって思ってるっす。どうか、分かってあげて下さいっす。」
「・・・」
「それじゃあ、いくぜ!!」



健は決意の眼差しを弥彦山へ向け、風の様に走り去って行った。
翼とみどりは、その背中をただ見守っていた。



――健の馬鹿、大馬鹿!
また大見栄切ったんだから、今度こそきっちり果たしなさいよ・・・!
・・・・・・絶対、無事で帰って来て・・・!
25/28ページ
スキ