受け継がれし「G」の名







一方、日本海・佐渡海峡の空は雨雲に包まれ、降り注ぐ豪雨を遮って凄まじい爆音が海峡に響き渡っていた。
爆音の発生源である爆発はどれも一ヶ所から起こっていたが、その爆発の中から何かの振動波が周囲へ広がって行ったかと思うと、爆発が一斉に停止した。



キェルルルルルルルルルルルルル・・・



爆撃の中にいたのは先程G対策センターが発見した銀色の怪獣だった。
長い二又の尾と首を持ち、それぞれ2対の尖った鰭と布の様な鰭、黄緑色をした6対の突起を胴体から生やしており、頭部には目と思われるものは無い。
中世代に生息していた海竜・プレシオサウルスに似たその怪獣はまさにそのプレシオサウルスが突然変異を起こして生まれた海悽変異獣・プレシオル。
爆撃は発見と同時に出動した海上部隊によるものだったが、突如爆撃が止まったのはプレシオルが放った超音波の光線「超音波ブレス」によって大砲等を統制していた機械が一斉に故障し、爆撃はおろか移動すら出来なくなったのが理由だった。
技術の向上によって最近の兵器は砲台の操作から船体の機能全般の統制も機械が担うようになったが、それが仇となった。



「な、何が起こった!」
「全機能停止、全く動きません!」
「何っ!?」
「何らかの原因により、船体の統制機器が破損しています!」
「恐らく、先に放たれた振動波が影響していると思われます・・・!」
「くっ!至急非常回線に繋げ!手の空いている者は修理を・・・」



と、その時プレシオルの額にある角が橙色に点滅し、プレシオルが角を海上部隊へ向けたと共に角から極太の光線が発射された。
光線は放射状に拡散しながらみるみる内に海上部隊の周囲をオレンジに染め、光線を浴びたもの全ては消え失せた。
この光線は「極超音波」と呼ばれる異常なまでの振動数の音波を光線に転用した「マグニチューム光線」であり、受けた物全てを分子にまで分解する脅威の光線である。
極超音波を発生させるまでに数分の時間が掛かるのが唯一の欠点だが、超音波ブレス一発で全ての船体が動かなくなった海上部隊相手には十分の余裕があった。



キェルルルルルルルルルルルルル・・・



海上部隊を殲滅したプレシオルは駆逐艦の僅かな残骸をすり抜け先に進もうとしたが、そこにまた起こった爆撃がそれを阻む。
攻撃したのは、瞬率いる応援部隊だ。



「あの怪獣、どうやら厄介な光線を放って来るようだな。」
「隊長、どうなされますか?」
「極力怪獣と距離を取り、遠方から爆雷攻撃。機械の破壊を考慮してフルメタルミサイルも甲板に準備。」
「了解。」



瞬の指示を受け、隊員達は即座に行動を開始した。
プレシオルの頭部や首の根元などを狙って砲撃を加えつつ、他の隊員達は甲板に小型の砲台と金属で出来た重厚な弾丸を運ぶ。



「怪獣の被弾率68%、雨による影響が大きいと思われます。」
「構わん。怪獣とて的確に弱点を突けば、勝機は見えて来る筈だ。フルメタルミサイルの準備状況は?」
「只今78%完了。あと5分で・・・」



キィィィィィィィ・・・



しかしプレシオルも黙って爆撃を受けてくれるわけが無く、超音波ブレスで反撃して来た。
瞬の部隊は後退しながら攻撃を加えていたので光線の影響は先頭の駆逐艦程度で済んだが、やはり全機能停止の被害は大きい。



「先頭の駆逐艦が!」
「慌てるな!被害を受けた艦からフルメタルミサイル発射!手の空いた者は負傷者の搬送!」



被害を受けた艦では砲撃を担当していた隊員が超音波に倒れた隊員を医務室に運びつつ、残りの隊員が金属の弾丸を砲台に装填し、砲台のレバーを引く。
拳銃の要領で砲台から発射された弾丸・フルメタルミサイルはその名の通り金属のみで構成された弾丸であり、発射機の運動エネルギーで動き、対象を貫通する。
その威力は何層にも重ねられた鋼鉄のプレートを意図も簡単に貫き、豪雨で威力こそは落ちているものの炸裂したプレシオルには十分なダメージを与えた。



キィアアアアアア・・・



「フルメタルミサイル、対象に直撃!」
「よし、このまま後方からの爆撃も加えて・・・」



するとその時、丁度部隊とプレシオルの間の海面が突如波打ち、そこから巨大な水柱が現れた。
水柱は見る間に高くなって行くと砕け、おびただしい水渋きを立てながら何かがその姿を現す。



「あれは・・・!」



ゴガァァァァァァァオン・・・
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