受け継がれし「G」の名




・・・ゴォォォォ・・・



と、その時一帯に再び地震が起こった。
左前足を振り上げて健を叩き潰そうとしていたマジロスは動きを止め、ショックの余り両手で顔を覆っていたみどりはゆっくりと手を除ける。



「こ、今度は何・・・?」



やがてマジロスの左側のコンクリートが割れ、裂け目から青い光が瞬く。
その光は核反応時に発生する特殊な光、「チェレンコフ光」と酷似していた。
何かが迫って来ると察したマジロスは両前足の棘を手刃「セイバルド」に変えて出現に備えるが、その刹那、裂け目から飛び出して来たのは強烈な青い光線であった。



グァゥゥゥウン・・・



マジロスは咄嗟に光線を両手で防御したが、光線の勢いは意図も簡単に守りを崩し、マジロスを後方へ弾き飛ばした。
朦朧とした意識の中、その光景を目にした健は何とか正気に返る。



「な・・・何が・・・」



目の前で起こった出来事に疑問を抱く健に、今度は右から何かがこの地面から出て来るのが見えた。
そして舞い上がった土煙が晴れた時、現れた者の正体に健は驚愕した。



「まちがい・・・ねぇ・・・お・・・お前は・・・!」



ゴガァァァァァァァオン・・・



岩石の様な漆黒の体、背中から生える鋭い無数の鰭に引き摺られた長い尾、精悍な爬虫類の顔。
そう、この怪獣こそ誰もが過去の存在と認識していた怪獣の王、その名も・・・ゴジラ。






スーパーXⅢ内に搭載された鎮火弾の発射準備をしていた黒木達もまた、ゴジラの登場に手を止めた。



「隊長・・・ゴジラが、現れました・・・!」
「ゴジラだと!?・・・まさか、13年前のジュニアが・・・」
「外見は13年前のジュニアと差異はありますが・・・そうであると思います。」
「完全な成体となった、か・・・」



このゴジラは13年前、メルトダウンを起こして消えて行った親の放射能を浴びて急激な成長を遂げ、その後何処かへと消えていたゴジラジュニアが十数年の月日を経て完全な成体となった姿であり、13年前の時とは体付き、顔付きなどが違っていた。
どの部分も親のゴジラと非常に似ており、未熟さを思わせるパーツは全く無い。



グヴァアアアアアアアウウウン・・・



ゴジラの青い光線「放射熱線」の直撃を受け、ずっと昏倒していたマジロスはようやく立ち上がると次の敵となるゴジラを睨み付け、ゴジラを牽制する。
しかしながら当のゴジラは怯みもせず、右手を軽く突き出してまるでマジロスを挑発するかの様に手招きに似た動作をする。
それに激怒したマジロスはグリッド・バイラでゴジラに攻撃を仕掛けると両前足を振り上げながらゴジラへ素早く突撃し、右前足のセイバルドでゴジラを切り付けた。



グヴァウウウ・・・



確かに、マジロスのセイバルドはゴジラの胸部を正確に捉えていた。
が、ゴジラはセイバルドのダメージを受けてもなお、その表情を崩していなかった。
更にマジロスが怯んだ隙にゴジラは体を回転させ、その太い尾をマジロスに叩き付ける。
マジロスはゴジラの強い一撃に耐えかね、再び地面に伏した。





「凄い・・・同じ怪獣なのに、強さが全然違うわ・・・」



その頃、ゴジラとマジロスの闘いを見ていたみどりはこう呟いた。
マジロスへの恐怖は何処へやら、みどりの目線は見上げた先のゴジラに向いている。



「・・・昔見た通り。やっぱりゴジラは強いのね・・・」



と、みどりの背後から砂が流れ落ちる様な音がした。
突然の音に一瞬肩を震わせるみどりだったが、その音で何かに気付いたのか、すぐに後ろを確認する。
みどりの後ろには美歌が閉じ込められているコンビニがあり、よく見ると微妙に瓦礫の位置が変わっているように見える。



――・・・気のせいじゃない。
中から、人の声が!



みどりがコンビニへ駆け寄ったその間に、ゴジラの攻撃で倒れていたマジロスが起き上がった。
ゴジラは直ぐ様尾で攻撃を仕掛けようとしたが、二度目は通じないとばかりにマジロスはアルマジロの防衛行動の一つである全身を丸めた防御体勢を取り、ゴジラの尾を受け止める。
マジロスはそこから元の体勢に戻ってグリッド・バイラをゴジラへ撃つと、地面を掘って地底へ潜った。
姿を消したマジロスをゴジラは辺りを見渡して探すが、もう地上にはマジロスはおらず、ゴジラがマジロスの存在に気付いたのは自らの足場が沈下した時だった。



グルルルルル・・・



驚く間も無くゴジラは足を踏み外し、地面に吸い込まれる様に転倒した。
そのすぐ近くの地面からはゴジラを転倒させた張本人であるマジロスが現れ、ゴジラに向かってグリッド・バイラを乱射する。
マジロスの光弾は激しい土煙の先にいるターゲットには確認に命中しており、この光弾の連撃で相手は怯んでいると踏んだマジロスは土煙へ一気に突っ込みながら体を丸めると、必殺のグリッド・アタックをぶつけようとした。
しかしその先にあったのは怯んだゴジラの姿では無く、逆にこちらに向かって振るわれる黒い尾だった。



グァオオオッ・・・



このカウンター攻撃にマジロスは体勢を崩してしまい、そのまま村の土産屋を下敷きにする型で地面に叩き付けられた。
一方のゴジラは砂埃を払うかの様に顔を数回振るわせ、平然とした顔でマジロスを見ると背中の鰭を青く光らせる。



ジュゴォォォォ・・・



みるみる内に背鰭は青色に染まって行き、ゴジラの口からも青い炎が漏れ出す。
そしてゴジラは大きく口を開き、蓄えられた灼熱の青きエネルギーを放った。



ゴオオオオオオオォォォォォ・・・



熱線はマジロスに抵抗させる間も無くマジロスの唯一のウィークポイントである内腹を突き、マジロスにとてつもないダメージを与えていく。



グヴァウウウン・・・!



マジロスは最後に断末魔の悲鳴を上げ、爆発四散した。



ゴガァァァァァァァオン・・・



高らかに勝利の雄叫びを上げるゴジラ。
この闘いを間の当たりにしていた健は全身の痛みも忘れ、軽くマジロスを葬り去ったゴジラをその目に焼き付けるかの如く見つめていた。



――すげぇ・・・
あのデカブツを、あんな簡単にぶっ飛ばしやがった・・・
スーパーXⅢが・・・俺が出来かった事を・・・あいつはやってのけた。
あいつが・・・ゴジラがこの村を救ってくれたんだよな・・・?
そう信じて・・・いいんだよな?
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