受け継がれし「G」の名




スーパーXⅢは先程発見した健達の救助の為、向きを変えて健達がいる所へ向かう。
しかし、黒木達はとある事に気付いていなかった・・・そう、マジロスが凍り付く直前に硬質化していた毛を元に戻していた事に。
それは再び発熱現象が起こせる状態である事を指しており、段々とだが確実に氷は割れ、氷結の拘束が解けていく。



・・・ヴァウウウウウ・・・



そして黒木達がマジロスの活動に気付いたのは、索敵レーダーに異様な高温反応が観測された時だった。



「た、隊長!強烈な熱源反応が!」
「なにっ!?」
「熱源、こちらに接近!回避間に合いません!」



時既に遅し、スーパーXⅢが回避行動を取ろうとした時には飛び上がったマジロスの回転攻撃「グリッド・アタック」がスーパーXⅢの左辺に直撃した後だった。



「ぐっ・・・!」
「機体バランス、急激に低下!航空維持不能!」
「極力機体バランスを保ち、郊外へ緊急着陸!」



機体から煙を上げ、スーパーXⅢは郊外の野原に墜落にも似た形で着陸する。
大破こそしなかったが、スーパーXⅢの人工ダイヤモンドは強烈な打撃に対する想定は全くなされていなかった為、再起動は困難な状態であった。



グヴァアアアアアアアウウウン・・・



スーパーXⅢが消えた事を確認したマジロスは土砂を撒き散らしながら地底に潜り、付近の建物を続々と倒壊させて行く。
地盤も崩れ、中心地は再び火に包まれようとしていた。





そんな中、健とみどりは美歌を助け出そうと、今だ中心地にいた。
スーパーX3とマジロスが闘っている最中も必死に2人は瓦礫を除け続け、ようやくコンビニの入口にあるマットが見えて来た。



「健、これ・・・!」
「コンビニの入口だ!って事は、この先に美歌がいる!」
「ええ。早く助け・・・」



と、その時2人の後ろから何か巨大な物が割れた様な、凄まじい轟音が響き渡った。
そのすぐ後に土砂が2人に降り注ぎ、一体何が起こったかを2人は悟る。



「た、健・・・」
「ああ・・・デカいのが来やがった・・・」



振り返った2人の目に映ったもの、それはあまりにも巨大なマジロスの茶色い肌だった。



「ど、どうすんの・・・こ、こんな近くに来てるんじゃ・・・」
「・・・みどり、美歌の事は頼んだ。」
「えっ?」
「俺は・・・あの野郎をぶっ飛ばす!」



そう言うと健は立ち上がって眼前のマジロスを強く睨み付け、すかさずクラウチングスタートの体勢を取る。
それを見て健が何をする気かが分かったみどりは健に駆け寄り、健を引き止めるかの様に健の右肩を握った。



「何言ってんのよ!あんな怪獣に、あんたが敵うわけないじゃない!」
「でもやるんだ!このまま指をくわえて見てられるかよ!」
「馬鹿言わないで!あんたがいくら腕っぷしが強くても、出来る事と出来ない事くらい・・・」
「出来るとか出来ないとかじゃねぇ!俺は、みんなを困らせてる奴が目の前で偉そうにしてるのを放っておけねぇんだ!」



みどりの手を強く、だがゆっくりと払い、健は勢い良くマジロスへ向かって行った。
尋常では無い早さで健は走り、そのまま飛び上がって渾身の力を、思いを握った拳に込める。



――俺達の村は・・・大切な妹は!お前なんかに奪わさせねぇ!


「うおおおおおおおおおおおおっ!!」



怪獣の鳴き声にも負けない雄叫びを上げ、健はマジロスに殴り掛かる。
だが、健を待ち受けていたのは軽く振るわれたマジロスの巨大な左手だった。



「ぐああっ・・・!!」



己の力の全てを込めた健の拳はマジロスの左手であっさりと弾き返され、コンビニから左遠くの方向に飛ばされた健の体は道路に叩き付けられる。
その様子はまるで健が今まで追い払って来た、村の不良達の様だ。
これが、人間と怪獣との違い過ぎる力の差であった。



「たっ・・・健!!」
「ぐっ・・・ああっ・・・!」



全身を走る激痛に、身動きすら出来ない健。
しかし、そんな健に本能で敵意を抱いたマジロスが迫る。
古代を生きたマジロスにとって、たとえ何であろうとも自分に向かって攻撃を行って来たものは敵なのだ。



「ち・・・くしょ・・・う・・・・・・!」



苦痛の声しか出せない健に向かって、マジロスは容赦無く迫る。
それを一番悔しがっていたのは誰でも無い健だったが、体は健の言う事を聞かない。



――こんな所で・・・寝てる場合じゃねぇんだ・・・!
俺はこいつをぶっ飛ばして・・・美歌を助け・・・ねぇと・・・!
みどりも助けて・・・みんなで家で・・・母さんを・・・!





・・・くっそ・・・意識が・・・遠くなって・・・きやがった・・・
俺・・・このまま・・・あいつに・・・
翼・・・みどり・・・母さん・・・美歌・・・
・・・父さん・・・!
すまねぇ・・・俺にもっと・・・力が・・・あれ・・・ば・・・






12/28ページ
スキ