受け継がれし「G」の名







一方、ここは茨城県・つくば市にあるG対策センター。
1992年、元々は度重なるゴジラの被害に国際連合が設置したゴジラへの対策や対応を担う機関であったが、今は怪獣への対策や対応を主にしている。
その中にある戦闘司令室では怪獣の出現や兆候を日夜観測しているが、そこでは数日前から不審な現象が観測されていた。



「司令官、これを。」



1人の隊員が軍服を着た男に紙を渡した。
司令官と言われたその男は紙を受け取り、真剣な眼差しで見ている。



「・・・これはやはり、怪獣が地底を通った後だと見るべきだな?」
「そう思います。震源が断続的に動くなんて、通常では考えられません。」
「『動く震源』・・・発生源は大阪で、そこから南へ動いているな。」
「我々としても何か対策を立てたいのですが、もし怪獣だとしても何処で姿を現すのか、見当も付きません。」
「ひとまず、各方面にこの移動する震源に対しての警戒を通達しておいてくれ。」
「了解。」



隊員は男に軽く会釈し、持ち場に戻って行った。



「うーむ・・・」



男は隊員が去ってからも震源のルートが記された紙を見続けていたが、そこにまた違う隊員が話し掛けて来た。



「そう固く考えんなよ、功二。これは怪獣で決まりなんだろ?」
「佐藤補佐、業務とプライベートはわきまえろ。私は仮にもGフォース司令官だ。」



そう、この男の正体はGフォース新司令官・新城功二。
14年前の対スペースゴジラ戦の際に対G兵器・MOGERAに乗ってスペースゴジラと闘った経験があり、その経緯もあって去年付で司令官に任命された。
そんな新城に軽々しく話し掛けているこの男は司令官補佐の佐藤清志。
彼もまた新城と共にMOGERAに乗っており、新城とは古い仲である。



「すまんすまん。つい癖が・・・」
「本来補佐なら、司令官よりしっかりしてないといけないんだぞ?」
「分かってますよ、新城司令官殿。とにかくいつ怪獣が現れてもいいように気をつけておきましょうぜ。」
「・・・全く。」






同刻、Gフォース隊員の宿舎の一室で、何者かがノートパソコンを操作していた。



「・・・やはり、日本海から移動する謎の震源がある・・・この震源と、大阪からの震源のルートを予想すると・・・」
「将治、入るぞ。」



と、そこに60代過ぎのとても厳格な顔付きをした男が入って来た。
彼の名は麻生孝昭。かつてはGフォース司令官としてゴジラと闘った事もあるが、去年司令官の座を新城に譲って引退し、今はその経験を生かしてGフォース隊員の教官をしている。
そしてノートパソコンを操作していたこの眼鏡の少年こそ、孝昭の孫である麻生将治。
15歳と言う若さながら祖父譲りの才能と人並み外れた知能を生かし、Gフォース仮隊員に認定されている。



「お爺さんか。どうだった?今日の僕。」
「操縦技術に関しては文句無しだが、緊急回避行動はまだまだ詰めが甘いな。」
「相変わらずお爺さんは厳しいな。」
「当たり前だ。たとえ孫であろうとも手抜きなど出来るか。」
「まぁ、お爺さんはそういう人なのは分かりきってるけどね・・・あっ、そうだ、ちょっとこれを見て。」



孝昭は将治に言われた通りにノートパソコンの画面を覗き込んだ。
画面には日本列島のCG映像が映っており、その列島には北上する赤いラインと南下する青いラインが入っている。



「何だ?これは。」
「僕が予想した動く震源のルートさ。この赤いラインが例の震源で、この青いラインは微弱ながら観測されている『第二の震源』。」
「第二の震源・・・」
「そしてこの二つの震源のルートをシュミレートしてみると・・・この辺りでぶつかる。」



画面のシュミレーションが示した結果は、二つのラインが新潟県で重なるものだった。
そしてそこから導き出される結論に、孝昭はすぐ気付いた。



「・・・震源同士の衝突、怪獣の出現か!」
「そう。多分日本海側の震源も怪獣のものだと思うから、ここで必ず姿を現す。まだ正確な位置は分からないけど、予想は付いてる。」
「それは何処なんだ?」
「いや、たかがGフォースの仮隊員なんかの邪推にお偉いさんを振り回すわけにはいかないさ。僕が直接確かめに行ってくるよ。」



そう言うと将治は席を立つと壁に掛けられた鞄を持ち、部屋を出ようとした。



「待て、それが参考になるかもしれんのだぞ。」
「お偉いさんなんてどうせ僕の事を『祖父の七光』くらいにしか思ってない。それに僕は自分の考えた過程が正しいのか、自分で確かめたい。」
「・・・お前は一度行動すると決めたら必ず実行する奴だからな・・・分かった、行って来い。」
「ありがとう。お爺さんは僕の誇りだよ。あっ、あとスーパーXⅢくらいはいつでも出動出来る様に言っといて。じゃあ、行って来る。」



将治は孝昭に敬礼するとノートパソコンを鞄に仕舞い、部屋を出て行った。



「・・・全く、上手くおだてよって。Gフォースの仮隊員とは言え、無茶だけはするんじゃないぞ・・・」
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