Z -「G」own path-




「バハムート、スタンバイ」
「出撃!」

 マリクの号令で、高機動型バハムートが出撃し、更に強襲型バハムート四機も続けて出撃した。
 今回の高機動型バハムートのターゲットは飛行能力を有するアルファこと翅付きの駆逐だが、加えて飛行しているだけでも十分に敵への牽制になる。
 翅付きは沖から巨大なソニックブームを発生させながら超高速で迫る高機動型バハムートに反応し、海岸線近くへ下がる。
 しかし、海岸に近づくと地上部隊の92式メーサー戦車による対空攻撃が阻む。
 海岸近くの道に溢れていたアンデットは、メーサー戦車の援護と16式機動戦闘車の砲撃により、確実に後退させられていた。
 そして、前進した後にはメーサー戦車と10式戦車が順次配置され、このように海岸の防衛に当たっている。
 退路を断たれた翅付きは海岸線に沿って西に移動する。しかし、対空攻撃によって陸地からの距離が離れていた。陸地に近い場所ではソニックブームの被害を避ける為に高機動型バハムートの展開ができないが、それを翅付きもそれを指示する達也こと統率者も知らない。
 高機動型バハムートは一度高度を上げ、翅付きを追い越し、臼碆埼灯台の西の沖合まで移動し、旋回すると翅付きに向かって急降下した。更に項羽からは自動追尾式のミサイルが既に放たれている。挟み撃ちされた翅付きは急降下するが、ミサイルが海面近いを追尾し、翅付きはギリギリのところを回避し、爆発。しかし、回避行動は即ち上昇。最早高機動型バハムートの敵ではない。

ギギギギギ・・・!

 高機動型バハムートは墜落を回避する為に翅付きよりも高い位置を通過するが、直撃をしていないだけである。マッハ10に達したバハムートにとって、体当たりが当たる当たらないは全く問題とならない。一定の距離よりも近くに存在するものは等しく破壊される。
 海面は離れた場所にあるにも関わらず吹き飛び、翅付きもまた同様に空気という常に周囲にある存在そのものが回避不可の凶器となって襲いかかり、一瞬にして再生不可能な程に粉砕された。

「アルファ、消滅」
「陸上のガンマ、デルタ、エプシロンも消滅しました」

 陸上部隊がカニ腕3体を倒したことも確認された。形勢は完全に一転した。
 残りのマーキングされたZ寄生体の集合体は17体。その内8体はイタチザメ型Z寄生体で、大きいものも混ざっているが、殆どが10メートル以下である。

「バハムートだけに活躍させるられん。海中の奴らは項羽がやるぞ。魚雷用意! ターゲットはサメ型の8体だ!」

 空の脅威が片付き、空は高機動型バハムートの独壇場だ。仮に翅付きがまだ潜んでいても迂闊に姿は出せない。
 次いで優先すべき殲滅対象が、攻撃手段が少なく厄介な相手であるサメ型だ。サメ型への攻撃は魚群も巻き込み、海中に潜伏している他のZ寄生体を炙り出す効果も期待できる。海中から姿を表せば、仮に高機動型バハムートの攻撃が出来ない海面でも強襲型バハムート4機と陸上部隊、そして項羽の敵ではない。

「ターゲットロックオン完了です!」
「よし、撃てぇ!」
「魚雷発射!」

 項羽から8発の魚雷が放たれる。
 更に第2射も時間差で発射された。
 四面楚歌に魚雷が映り、魚群の中に向かっていく。

「……着弾!」
「次いで第2射……着弾!」
「効果を確認!」
「………クシー、オミクロン、タウ、ウプシロン、消滅!」
「サメ型、4体は未だ反応あります!」

 今のサメ型4体はすべて5メートル程度であった。それより大きい個体は攻撃を耐えたらしい。爆発で完全に吹き飛ばさないと復活してしまう。特に水中の場合、その厄介さが際立つ。
 一方、バハムート4機はその直上へ間もなく達しようとしていた。
 タコ腕や他の巨人が反応して攻撃をしかける可能性が高い。

「あっ……一応、確認しておくか」

 マリクはラムダ以外の5機も怪鳥との戦闘をした後だということを思い出した。劉のことだから抜かりはないだろうが、艦長として確認は必要であったが、失念してしまった。
 劉に通信を繋ごうとするが、四面楚歌に映る5機のバハムートが目に留まった。他の補助はいるが、バハムートの動きの指揮は劉が行っている。こんな事務的な確認事項の為に作戦遂行を邪魔する訳にはいかない。

『あ、整備士長か?』

 メンテナンスに不備なしの一言を得るだけでよいので、直接格納庫の整備士長に連絡をする。

『んあ? 艦長か、作戦中にどうしやした?』
「事務的な確認だよ。出撃中の5機にメンテナンスで異常はなかったな?」
『当たり前でさ。……あれ? それは報告済みじゃないんですかい? 態々あんな装置付けさせて艦長はお人が悪い』
「ん? 何のことだ?」
『何って、逆流式畜エネルギー装置ですよ。確かにバハムートと四面楚歌のエネルギー供給フィールドのシステムを利用してバハムート内でエネルギーを逆流させて臨界まで溜め込めばヒロシマ型原爆のTNT15キロトンに少し劣るくらいの爆発になる。一機で半径2キロは焼け野原だ。それを5機すべてでやればあの半島諸共Zを完全に消滅できるだろうが、結局のところ自爆装置だ。頼むから使わないようにしてくれよ』
「おい、それはどう……」
「艦長、モスラが現れました」
「くっ! 後で詳しく聞く!」

 マリクは整備士長との通信を切り、四面楚歌を確認する。
 項羽より南西に50キロ弱、まだ四面楚歌の範囲ギリギリの洋上をモスラが飛んでいたが、真っ直ぐ渦中の足摺半島を目指している。
 モスラが現れたとなると、空を飛び交って牽制している高機動型バハムートをどのように展開するかの判断が迫られる。言わずもがな、機体の発生させるソニックブームはモスラにも大きな障害となる。現状の方針としてモスラは友軍扱いだ。マリクも含めて今のGフォース士官はゴジラやモスラとの共闘展開を想定した戦略訓練を行なっている。直接的な通信や連携は取れない為、士官側の解釈としては第三勢力として認識し、一般的な対国家、組織戦略で各国の軍がシュミレーションする際に用いる公的な同盟関係のない一時的な非敵対勢力の存在があった場合の想定をベースにしている。現代社会で成立すること自体がないが、言語交流のない現地勢力と敵勢力の戦闘に介入し、敵勢力を叩く考え方だ。
 つまり、Gフォース側のモスラに対してのスタンスは、決して邪魔をしないこと。そして、敵対する存在でなく友軍であることが明確な勢力展開とすることだ。
 危機はアシストし、攻勢には道を譲る。
 即ち、この場合の適切な判断は高機動型バハムートの撤退。4機のバハムートが既に洋上にいる為、海上でパージをする程の切迫はない。
 その命令をマリクが口にしようとした時、隊員が叫んだ。

「地上! 新たな怪獣の出現を確認!」
「!」

 それは四面楚歌でもはっきりと認識できた。海岸線で地上部隊に追い詰められていたアンデットの集団が次々に地中から湧き出た塊に飲み込まれ、スライムやアメーバ状と形容すれべき流動性を持つ塊が現れた。
 すぐにその怪獣に22番目のギリシャ数字のコード、カイが当てられた。
 陸上部隊の攻撃がすぐに行われているが、全く効果が確認できない。
 モスラの加勢を当てにする場面でもない。他の部隊もバハムートも削るのは新たなリスクを生む。ここでの最適解は一つだ。沿岸部ならサルベージも可能となる。

「高機動型バハムートをパージ! カイの殲滅に加われ!」

 マリクは迷うことなく命令を発した。


 

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――――――――――――――




 陸上部隊による制圧は時間の問題と思われていた。アンデットの数は多いが、個々の戦闘能力は民間人のそれであり、再生能力も胸部から頭部にかけての範囲を完全に破壊してしまえば再生する為のZの大部分を破壊でき、再生能力よりもZ自体の死滅が先に起きる為と考えられる。
 まもなくアンデットは出現場所である足摺岬近くの神社付近にまで後退しようとしていた。
 集落のある地区となり、道が複数に分岐しており、戦力は分散されているが、元々ローラー作戦を想定している戦力投入であり、県道以外の展開が道幅の問題で難しい92式メーサー戦車以外の戦力は、海岸線防衛に配置された10式戦車を除き、道路構造令第4条に該当する一般的な全ての車道に対応可能な車幅である装輪装甲車で構成されていた。
 これにより確実にアンデットを彼らは駆逐していた。

「まもなく目標地点を制圧できます」
「よし、地上の対象を殲滅し、穴を塞ぐぞ」

 士官が制圧した海の前に設置されている気象観測所敷地内に仮設した前線指揮所で指揮を取る。最前線の指揮の為、車輌に積載された機器と折り畳み式の机を露天で置いただけのものでテントすら設営していない。あくまでも肉眼で海上と陸上の両方を確認し、伝令でも指揮が可能な場所に陣を構えただけのものに過ぎない。

「伝令! 穴から何かが出てきました!」

 それを聞き、士官は情報の確認をする。
 穴の中から根が地面の中を這わせたかのように突然大地が隆起し、ゲル状の物体が現れたという。
 そして、周囲にいたアンデットを巻き込んで取り込み、現在流動しながらも立体的に膨らんでいるという。
 士官はその方角を見るが、木々と家屋の屋根しか見えない。
 通信機に呼びかける。

「状況を伝えよ!」
「対象、すべてのアンデットを飲み込みました。隆起を続けており、まもなく5メートルになります! 形態はゲル状。表面は流動しており、末端は伸縮を繰り返しております。現在の対象との距離は、100メートル。時折不快な腐敗臭が届きます。また光源の少ない為はっきりしませんが、全体は黒ずんだ紫色。隆起の中央正面部に縦長の赤い発色部が確認できます」

 不定形の集合体。それはこれまでとは全く勝手の違う相手だ。

「威力偵察を行え!」
「了解!」

 まもなく砲撃音が聞こえた。

「榴弾命中! 隆起箇所の半分を爆砕しましたが、すぐに形状を再生! 現在も地面から這い上がり続けています」
「メーサーを使え!」
「了解!」

 対象付近の空が光る。

「メーサー命中! 榴弾よりも効果あり。しかし、再生速度を越えられません! 対象、隆起範囲を拡大し、尚も上昇!」

 そろそろ見えるはずだと考え、士官はゴーグルを使う。
 家屋の先に海坊主の様な丸みのある塊が見えた。そして、ソレは動き始める。

「前進開始! 距離を維持しつつ、後退します!」
「警戒続けろ!」
「対象、前肢に近い構造の存在を確認! 四足歩行……いえ、四つ這いに近い動きで移動をしています」

 画像が送られてきた。
 士官がそれを確認する。対象は確かに人型Z寄生体の巨大化したモノがベースになっていると思われた。四つ這いするように前肢らしきものが内部にあるらしく、流体ではない。また、頭部に近い隆起した中心部に目の様な縦長の赤い部位が一つ存在する。しかし、流動性のある全身に人間の目玉の様なものが見える。実にグロテスクな姿をしていた。

「約10メートルで止まりました! しかし、攻撃が通用せず、厄介です!」
「攻撃を継続しながら、後退!」
「報告します! バハムートがパージし、合流し、対象への攻撃に加わります!」
「わかった!」

 轟音を立て、前方の洋上で高機動外装をパージし、海が爆発したかの様な水飛沫を上げる。
 一方、強襲型となったバハムートは直上から対象に襲いかかり、そのまま戦闘を開始した。
 バハムートはメーサーブレードを両腕に展開し、焼き付けながら攻撃する。
 目に見えての効果は見えないが、確実に敵の足止めは行っている。
 再生力が高く、また先のアンデットと異なり、明確に急所となる範囲の存在しない敵に苦戦は確実であるが、補給の必要としないバハムートの参戦は大きい。
 海上の敵戦力を殲滅すれば、集中砲火で駆逐が可能となる。勝算は残されている。

カコォォォゥン!

 そして、洋上彼方からモスラの咆哮が聞こえた。


 

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 モスラ加勢から1時間半が経過し、いよいよ海中のZ寄生体の数も削られてきた。
 海中の鱗の巨人とサメはそれぞれ連携行動を取り、ヒットアンドアウェイを繰り返し抵抗するが、項羽とその周囲に到着した海自戦力による魚雷攻撃が効果を出している。
 加えて、ゴジラも近づいている可能性が非常に高い。まだ、正確な位置特定はできていないが、推定される海域に変化が観測されている。恐らく夜明け前には到着するだろう。

「………庚、こっちに来てくれ」

 マリクは艦長席に瞬を呼ぶ。
 この予断を許さない状況下で態々彼が瞬を近くに呼び寄せる理由は一つしかない。瞬は何も言わずに彼の元に上がる。

「今、個人用メッセージに届いた」
「拝見します」

 マリクから端末を受け取った瞬はその画面を見る。
 たった一言だけのメッセージであった。しかし、送信主とその単語を見てすべてを察した。

差出人:麻生将治
劉宇翔

 瞬はゴクリと生唾を飲み込む。彼の頭の中には何故? なんで? という疑問しか浮かんで来ない。
 唯一その中で納得のできるのは、劉ならばZのことを知っているということだけだ。だが、それはイコールZの恐ろしさを最も知っている人間という意味でもある。

「どうしますか?」

 絞り出したのはこの言葉だった。
 彼がZを政敵である中華人民共和国政府へ提供した内通者であったとして、瞬達に今行える行動は限られている。Gフォースも軍事組織である以上、最も正当な手順は艦長のマリクが劉の拘束、尋問の後に司令部への引き渡し、そして軍法会議となる。しかし、現在この作戦遂行は劉の操るバハムートなしではなし得ない。
 それは将治が個人のメッセージで送ってきたことからも伺える。本来ならば司令部または本部、否G対策センター長官の名で劉の拘束が命じられる筈の案件だ。それがマリクにだけこっそり伝える手段を取った理由は一つしかない。まだ、上層部……否、長官、新城、将治の3名は劉の即時拘束を決定していないということだ。それは即ち、瞬と同様に劉なしでの作戦遂行は困難だと考えたからだ。
 そして、劉を作戦終了までどのように扱うかは現場の最高指揮官であるマリクに委ねるという将治からのメッセージなのだ。
 瞬はマリクを見る。

「庚、管制室で待機だ。……ただし、これを見てからだ」
「?」

 マリクは艦長席のモニターを瞬に見せた。モニターにはバハムートの図面が表示されている。本日のメンテナンス、交換記録らしい。
 そこには簡易の装置を追加した記録が記載されていた。瞬はその装置の役割を読んで、目を見開く。
 細工自体はとても簡単だ。単にエネルギーを逆流させることが可能になる切り替え装置を追加しただけに過ぎない。しかし、それだけで核兵器クラスの爆発を引き起こすとんでもない自爆装置と化す。

「これの指示は?」
「勿論、出してない。このメッセージを読むまでは意味がわからなかった」
「そうですね」

 言わずもがな、劉が艦長命令と偽ってこの自爆装置を付けさせた訳だ。
 有人機であれば首謀者の自決用と考えるのが一つ有力な可能性となるが、バハムートは10キロ以上離れた場所で展開している為、自爆しても劉は自決できない。
 そして、劉は自分が首謀者だと気づかれたことは知らない。恐らく、気づかれると考えて行った細工ではない。それならば、後に独断で自爆装置を付けさせたことは責められるとわかっていて、実行に移した理由は何か。
 マリクの言う通り、本人から聞かないと本来は意味がわからない行為だ。
 だが、首謀者が劉であったと知った今、瞬もその動機に気づいた。
 万が一、Zを倒せなかったら、その時は核兵器が使用される。それは確実といえる。だが、それが決定し、実行されるまでにZはどれほどの範囲に拡大するか? どれほどの範囲が核兵器の攻撃対象となるか? 考えるだけでも恐ろしい。
 劉はそれを阻止したいのだ。バハムートの自爆は原爆に匹敵する。現代の核兵器の範囲に比べればその範囲は非常に小さいが、今の段階で使用するなら、5機のバハムートの自爆だけでも十分にZを殲滅可能だ。敗北の危機が迫る、またはバハムートの対処が不可能な事態になった時、劉はバハムートを自爆させて自体の収拾を図る。
 彼自身は処罰されるだろうが、それでもZを殲滅することは達成できる。
 恐らく、初めからそれは彼の計画に含まれていたのだろう。ただ世界を滅亡させたいだけならば、もっと他に方法はある。彼はZを蘇らせつつも、その処分の最終手段まで考えて実行した。
 それならば、何故彼はZを中国に渡し、そして海に放つ工作を行ったのか? 海に放たれたのが本当に事故であった可能性は捨てきれないが、恐らく違うだろう。結局、最初の疑問に戻る訳だ。

「復讐……ですかね?」

 瞬にはそれしか思いつかなかった。
 政敵になる国に罪をなすりつけて、Zを海に放つ。そして、最後の始末をする。個人的な恨みによる身勝手な嫌がらせ、復讐としか思えない。

「それも一つだろうが、多分一番は無念を晴したかったんだろうな」
「無念?」
「あぁ。どの道、Zの正体や3年前の真相は確実に明るみになる。いや、劉なら既にその準備を済ませているだろうな。仲間の死の真相、憎い相手の正体を隠されてしまった無念。そして復讐を果たせない無念。……復讐は復讐でも恐らくその相手は組織や国でなく、Zそのものだろう。あいつは自分の手でZを倒したいんだ。ターゲットを中国にしたのはどの道罪を被らせる組織か国が必要だったから、利用しただけだろうな。最終手段の自爆の被害も鑑みると、他に選択肢はなかったのだろう」
「なるほど。確かに、それなら合点がいきます」

 口はしないが、彼は最終的にZを全滅させた後、自殺するつもりなのだろう。
 祖国への迷惑を考えると、首謀者であることは秘密し、バハムートの自爆装置の設置について辺りか、或いは全く異なる理由を捏ち上げての本来の意味を闇に葬る無意味な自殺。それでも彼はやるだろう。何故なら、復讐すべき相手はZだけではなく、自分の体の半分になったM-7もだからだ。そして、その体で生き残った自分自身への復讐でもある。

「……庚、管制室で待機だ」

 再びマリクは瞬に告げた。同じ言葉にも関わらず、先程とは全く意味合いが違って聞こえた。
 瞬は一言、「了解」と返して管制室へと向かった。
 それを見送ったマリクは、四面楚歌の示す戦況を眺めて大きく息を吐いた。瞬の姿を見たら劉は二つの可能性を考える。自爆装置の件か、首謀者とバレたか。しかし、前者ならば作戦の遂行に直結する話になる為、マリクからの通信で劉にコンタクトを取る。劉は態々管制室に来た瞬を見て、後者だと気づくだろう。
 果たして瞬にM-7を移植された劉を拘束できるだろうか。しかし、他に手段もない。作戦終了、劉が新たな敵として立ちはだからないことを願うしかない。

「ん?」

 その時、再び将治からメッセージが届いた。それを見て、正気か? と疑った。だが、それが本当なら劉を止められる唯一の人間と言えた。

差出人:麻生将治
M-6で桐城睦海がそっちに行く
 
 
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