Time axis of「G」


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


「な!?」
「この声は!?」

 その咆哮を聞いて、何も思わない者などいなかった。健とシエルはもちろん、亜弥香も聞いた声だった。

「まさか、俺たちを追ってここまで来たってのか?」
「おじちゃん!私が時間を稼ぐから、武器を!」
「ああ!」

 無事を祈る。そんな目をシエルに向けて健はバイクに乗り、どこかに走り去った。

「あなたも、死にたくなかったら逃げるか隠れるかして。」
「待ちなさい、あなただけであの悪魔をどうにかできるの?」
「あの場所から遠ざけられればそれでいい……」

 弥彦村の中で聞いた健の話。それがよりいっそう、村を守りたいというシエルの思いを強くした。

「……死なないでね。また会えたら会いましょう。」
「うん。」

 亜弥香は森の奥に向かって走った。それを確認した後、シエルは森の外に出る。

「あの2人だけには任せておけないわね……」



ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 地面を割り、その悪魔は姿を現した。今度は触手だけでは無く、本体も。

「悪魔め……」

 シエルの体を構成するアンドロイドのタイプは、戦闘にも長けているとは言えガダンゾーアに通じる武器がある訳ではなかった。

「ここから先には、足を踏み入らせない!」

 しかし、ガダンゾーアを引きつける事はできる。シエルは忍ばせていた小型メーサー銃を取り出し、ガダンゾーアに向かって放った。

 ガダンゾーアの注意は、シエルに向けられた。シエルは弥彦村とは反対側に向かって走り出す。

「こんな体でも、おじちゃんの為になるのなら……」

 シエルは目にも止まらぬ速さで走り出した。人間とは違う、アンドロイドだからできる事だ。ガダンゾーアはシエルの思惑通り、弥彦村から離れて行く。

 しかし、所詮ちっぽけな人間大の存在が絶対悪魔に太刀打ちできる訳がなかった。

 ガダンゾーアは触手を伸ばし、シエルの進路をふさぐように叩きつけた。シエルは衝撃で吹き飛ばされた。

「うっ……」

 今の衝撃で、手足を動かす回路に異常が発生したらしい。やはり、ガダンゾーアに刃向かうのは無茶だった。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 触手をゆっくりとシエルに伸ばすガダンゾーア。

「まだ、まだこんな所で死ねない……」

「睦海!!」

 巨大なプラズマメーサーがガダンゾーアに直撃した。健がバイクに大きな光線銃を抱えて走ってきた。

「この野郎!!」

 健は更にもう一発ガダンゾーアの顔に向かって放った。ガダンゾーアは顔に攻撃を受けた事で怯んでいる。
 健はその隙にシエルの元に駆け寄った。動けないシエルを抱きかかえる健。

「お前っ!動作回路が切れたか!?」
「ごめんなさい……やっぱり無茶だったかな……」
「まあ死ななければ平気さ!とりあえず逃げるぞ!!」
「おじちゃん!」

 ガダンゾーアの触手がすぐそばまで迫った。

「XEML発射!」

 ガダンゾーアの背後から、何かが攻撃してきた。後ろに振り向くガダンゾーア。そこには、得体の知れない兵器を抱えている亜弥香の姿があった。

「あの人……」
「Gから離れて!早く!」

 亜弥香は続けざまにガダンゾーアに攻撃する。ガダンゾーアでも耐えきれないような衝撃波が発せられる。

「おじちゃん……あの兵器は……」
「分からない……あんなのは初めて見た……」


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 亜弥香の攻撃に耐えられなくなったのか、ガダンゾーアは触手を使って穴を掘り、地中に姿を消した。

「さて……Gを撃退する事はできた……」

 亜弥香は肩に抱えていた兵器を下ろし、次元転位装置の前に置いた。次の瞬間、兵器は姿を消した。

「経費じゃ降りないわよね……XEMLは。」
「あんた……」

 さて、今起こった事の説明を求めて健とシエルがやって来た。

「あんた何者なんだ?」
「……その前に、彼女の故障を直すわ。ちょっと貸して。」

 亜弥香はシエルの首元の後ろにある蓋を開いた。二重になっていた蓋の中には、いくつもの回路があった。その中の1つが切れている。

「これを……繋いで……終わり。動かしてみて。」

 シエルの指が動いた。健はシエルをゆっくりとバイクから下ろす。

「もう……大丈夫なのか?」
「うん……平気。」
「信じられない……あの回路が切れたら、施設に持って行く他無いのに……あんた一体……」
「私は未来人。今から100年後から来たの。」

 普通は信じられない。唐突に未来人だと名乗られても。しかし、過去に未来人が日本に来たという記録があったり、目の前の出来事を考えれば、分からない話じゃない。

「私は未来に置けるゴジラ消失と、それに成り代わって現れたガダンゾーアについて調査に来たの。」

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