Time axis of「G」
何とか触手から逃げ切った2人。ライダーは森の中にバイクを停めた。亜弥香もバイクから降りる。
「さて。あんな場所で何をしていたんだ?」
「それより、お互い名前を名乗らない?せっかく出会ったんだし。」
「そうだな。」
ライダーはヘルメットを取った。彼の素顔が明らかになる。
「俺の名前は桐城健。」
「遠野亜弥香。よろしく。」
現地人との最初の接触だ。慎重にしなければならない。
「遠野亜弥香か……どうしてあんな所に?」
「色々とね。調べものがあって。」
まず、現時点で現地人と接触してしまった事はまずかった。彼女の任務は、自分のいた世界の技術の一部をこの時代に持ってきて、それを技術者に伝える事。そして、その技術を使う為のキーとなる存在、高性能アンドロイドを探し出す事にあった。
「あの怪物、あれ一体何なの?」
「この世界をこんな風にしてしまった元凶だよ。」
「……ガダンゾーア……」
「え?」
ほんの一瞬、亜弥香が漏らした名前。健はそれを聞いて、驚きの表情を見せた。
「確かに、あの悪魔をガダンゾーアと呼ぶらしい。北川氏の論文がそう言っている。しかし、あの論文は巨大生物対策協議会の関係者しか目を通す事が許されない代物だ。何故あんたが?」
コードネームGと呼ばれる悪魔ガダンゾーア。それに関する文献は亜弥香の時代にはいくつかある。ガダンゾーア出現と同時に現れた。
「ま、まあそれは……」
「おじちゃん?」
「お?」
健をおじちゃんと呼ぶ声。その主が森の奥から現れた。
「お?睦海、どうした?」
「心配になった。おじちゃん1人でアイツを止められるはずが……」
「止められなくたっていい。人を助けられればな。その成果はちゃんと出た。」
亜弥香の事を言っているらしい。睦海は亜弥香に近寄り、まじまじと全身を眺める。
「ねえ、彼女は?」
「ああ、ええっと……」
「私の名前は……シエル。シエル・シスよ。」
「シエル……けど、今彼は睦海って……」
「…………」
聞いてはいけなかったか?しかし、睦海という名前は外見と合う名前では無い。むしろシエルの方が自然だ。
「こいつもあの悪魔の被害者さ。」
「被害者?」
「奴との戦闘で自分を失ったんだ。今のコイツは仮の姿って言えるかもな。」
亜弥香の感が働いた。そのキーを握っているのは、恐らく目の前の少女だ。
「ねぇ。もしかしてあなた達、弥彦村から来た?」
「え?まあ……な。」
「で、ひょっとしてシエルって、アンドロイド……?」
「ああ……」
唐突に全て見抜かれ、健もシエルも困惑した。しかし、何はともあれ、亜弥香の目的はこれで達成してしまった。
「なるほど……こんな事ならデルスティアをもっと早めに使えるようにしなければいけなかったわね……」