「G」という名の絶対者


「そんな……」

 絶望的な空気だ。誰もが黙り込み、沈黙している。

「新城、応答しろ!将治!応答しろ!応答せんか!」

 気絶していると思われる戦闘員に呼びかけている麻生。未希も大戸号に呼びかける。

「功二さん!起きてください!功二さん!」
「佐藤!黒木!」

『モスラ……』

 祈りを捧げているコスモス。そんな中、みどりはゆっくりとマイクに寄る。

「何してんのよ……そんな事で戦う気が失せるような男じゃ無かったでしょ……」
「姐さん……」
「みどねぇ……」

 そんなみどりに続くように、翼と美歌もマイクに呼びかける。

「兄貴!目を覚ましてください!喧嘩番長桐城健がこんな事で負ける訳ありませんよ!」
「起きてたけにぃ!このままじゃみんな死んじゃうよ!守ってくれるって言ったのはたけにぃだよ!約束を破るようなたけにぃじゃないでしょ!」


「あ…………う……」

 ガルーダⅡの将治も目を覚ました。機内には、将治を呼ぶ孝昭の声が響いていた。

「お……爺さん……」
『将治!無事か!?』
「あ……ああ。ガルーダⅡは無理みたいだけどね……大戸は?」
『応答が無い……』
「……桐城?ゴジラ?」

 将治は外に出て、回りを見渡した。誰もガダンゾーアに向かう者がいない悲惨な光景が目に入るだけだった。

「デルスティアは……戦えるはずだ!」

 将治は機内に戻ると、無線機のスイッチを入れた。

「桐城!聞こえるか!ガルーダⅡは駄目だ、多分、大戸も動かない!もうお前しかいないんだ!」

 デルスティアからの返答は無い。将治は続けて呼びかける。

「桐城!起きろ!お前しか出来ないんだよ!こんな所で負けるな!そんな事で負けるお前じゃ無かったはずだ!お前がやらなくて誰がやるんだよ!」


「たけにぃ!」
「兄貴!」

「桐城!」

「健………私嫌よ、アンタが負けて世界が終わるなんて。守るって約束したんなら、ちゃんと果たしなさいよ!あいつを倒して、もう一度帰って来てよ!健!!」






「…………みどり?」

 デルスティアの中で意識を取り戻した健。みどりに続けて、美歌と翼、将治の声も届く。

「うっ……みんな……」
『兄貴!』
『たけにぃ!起きた?』
「あ、ああ……」
『健…………』
「みどり?」
『兄貴!大丈夫ですか?』
「ああ!!俺は大丈夫だ!」
『バカ……バカァ……』
「みどり?」
『桐城、デルスティアは動かせるか?』
「麻生?ああ、動かせるぜ。」
『怪獣を除いた戦力ではお前しかまともに機能しない!』
「こっちも絶望的だぜ……睦海、睦海!」

 睦海は相変わらず意識が無い。

『どうだ?』
「ダメだ、睦海が起きないとデルスティアはまともに機能しないんだ。睦海!起きてくれ!睦海!睦海!」




……私を呼ぶおじちゃんの声。あの時もそうだったっけ……



ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアに襲われそうになった健をかばい、生身の睦海は瀕死の重傷を負った。

「睦海!睦海!死ぬなぁ!!」

 医療部隊が到着するまでの間、健は声が枯れるまでひたすら呼び続けていた。それがあったからこそ、睦海は自分の意識を失わずにいられた。




……そうだ……おじちゃんがいる限り、私は死なない、死ねないんだ……おじちゃんの未来を守る。そのためにここに来たのよ!あいつに……あの悪魔にやられるために来たんじゃない!

『おじちゃん……』
「睦海!大丈夫か?まだ戦えるか?」
『うん。ありがとう。』
「俺たちはまだ負ける訳には行かないんだ。」
『そう、みんなの未来を守るために、おじちゃんの好きなゴジラを守るためにもね。』
「誰一人死なせない。お前もだ睦海。」
『ねぇ。未来のおじちゃんの奥さんがどういう人か、知りたい?』
「……何だよいきなり。」
『……この時代に来ても、2人は相変わらずだった。それが凄く羨ましかった。』
「よせ。そういう話は勝った後だぜ。」
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