「G」という名の絶対者


『功二!とてつもないエネルギー反応だ!怪獣だぜ!』
『場所は?』
『地下だ!』


『うっ……!』

 突如として、G-1の真下から何本もの触手が飛び出した。触手はG-1の体を串刺しにし、抱え上げた。

『あ……あ?』
『人類に、滅びの時を……』

 G-1の活動が停止した。触手はG-1を叩き落とすと、再び地中に潜った。

「北川さん……」
「間違いありませんね。あれが第3の怪獣。かつてモスラ、バトラと戦った存在だ。」


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 けたたましい咆哮の後、地面が割れた。

『あれよ……私がいた世界を壊滅させた悪魔は……』
『悪魔……』
『始め、学校ではあれをゴジラと教えられたの。街を破壊した悪い存在だと。でも真実は違った。北川さんが論文を発表してからね。』
『論文?』
『ゴジラは人知れず内にあれに倒されていたという内容よ。あの絶対的悪魔、ガダンゾーアによってね。』
『ガダンゾーア……あれが……』


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


『北川さんは、私たちの文明を滅ぼしたのはあの怪獣だとおっしゃるんですね。』
「恐らく事実に違いありません。絶対的悪魔、ガダンゾーア。1万2千年前の文明を破壊し、眠りについていた。恐らく、モスラがバトラを北極海に封じたのは、バトラをあの怪獣から守る為、子孫を残す術があるモスラがそれを持たないバトラを守ったからだ。」
『つまり、ゴジラやモスラでは……』
「勝てませんね。恐らく。」


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 背中から生えている無数の触手。両肩からは虫のような頭をしている触手がある。
 正に悪魔だ。ガダンゾーアが全身から放つオーラに押しつぶされそうになる。

「ゴジラに成り代わる存在……ゴジラ以上に……」
「とにかく、放っていてはやられるんだ。あの悪魔を倒さなければ……」


ゴァァァァァァァァォン


 ゴジラはガダンゾーアに向かって熱線を放った。しかし、背中の触手が束となり、熱線の正面から突き出した。熱線は触手に阻まれる。

『強い?』
『だから言うのよ。ガダンゾーアは絶対的悪魔とね。』


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 今度はガダンゾーアから向かう。ガダンゾーアの触手がゴジラの両手両足を拘束する。ゴジラはそれを焼き払わんと口を開いた。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 しかし、残りの触手がそれを許さない。触手はゴジラの口の中に入り込んだ。ゴジラは口を塞がれ、何も出来ない。

ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ゴジラの全身放射のエネルギーも、触手に吸収された。ガダンゾーアはゴジラを高く抱え上げた。


カクゥゥゥゥゥン


 そこに来たのはモスラだ。モスラが放った超音波光線がガダンゾーアの触手に命中した。触手は本体に戻り、ゴジラは地面に叩きつけられた。

『アブソリュート・ゼロを再び使用する。麻生君!大変かもしれないが、あの触手を引きつけられるか?』
『多分無理ですね。あれだけの触手をガルーダⅡ1機で引きつけるのはほぼ不可能に近い。』
『そうか……』
『俺たちがやります!』

 そう言いながら前に出たデルスティア。当然、ガダンゾーアの触手が伸びる。

『どうだ!』

 デルスティアはその場で1回転し、斧で触手を切った。切断された触手が地面に落ちる。

『ん?』

 切断され、地面に落ちた触手はその場で固まった。

『あのエネルギー……まさか、』
『オリハルコン……』


「なるほど。そういう裏があったのか……」
「北川先生?」
「それなら、あの怪獣が本当の意味での黒幕になるな……」
「だから……何ですか?」
「私も感じる……あの怪獣が何を考えているのか。」

 何も分からず、困惑しているみどりとは対照的に、事を分かっている北川と未希、そしてコスモス。

「コスモス、どういう事なの?」
『あの神器、オリハルコンは恐らく、私たちの祖先があの怪獣の眠っていた地から掘り出したあの怪獣の肉片です。あの触手のものでしょう。』
「というと、あの怪獣がオリハルコンの?」
「本体ですね。あの怪獣のエネルギーがそのまま詰まった金属になるんだ。そのエネルギーの影響を受けて怪獣化するのもうなづける話だ。」
「恐らく、I-Eはその事実を過去に行った時に知った、いや、教えられた。ガダンゾーアに。」
「え?」
「利用されたのよ。ガダンゾーアに。自分が眠りについているであろうこの時代に。自分の分身にも等しいオリハルコンを使用させ、それが発するエネルギーで目を覚ます。I-Eは、その手駒でしか無かった。」


『自分の肉片で生物を怪獣化させてしまう……まるでゴジラ細胞だな……』

 黒木の記憶の中にもあった。ビオランテの事が。今の事実は、それを思い出させる話だった。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは切断面から新たな触手を生やした。それだけで無く、切断された触手を再び体内に吸収した。

『オリハルコンを餌に……』
『パワーを得てる?』

 ガダンゾーアはデルスティアに目を向けた。そして、両肩の触手をデルスティアに伸ばす。


キィィィィィイ


 両肩の触手はデルスティアの左腕に噛みついた。デルスティアはそれを必死に振り払う。

『コイツも!』
『駄目!』

 触手を再び切断しようとした健を睦海が止めた。

『どうしてだ?』
『さっきと同じ事になる!敵を切断するという事は、敵にエネルギーを与えるのと変わらないわ!』
『くっ……』

 デルスティアは触手の根元にレーザーを放った。触手がデルスティアから離れる。

『この!』

 デルスティアは片方の触手を掴んだ。そして、その顔を思いっきり殴る。触手は悲鳴を上げるが、ガダンゾーア本体は平静としている。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは背中の触手をいくつかに束ねた。すると、束ねられた触手の間に薄い膜が張られていく。ガダンゾーアは、触手とエネルギーで翼を形成した。

『な?』
『あんな事まで……』


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアはそのまま空に飛び上がった。デルスティアは触手を掴んだままだ。

『おじちゃん!?』
『ここでやる!』

 触手を伝い、ガダンゾーアの本体に張り付いたデルスティア。尻尾をガダンゾーアの尻尾に巻きつける。

『この野郎!』

 そこでガダンゾーアに思いっきり殴りかかるデルスティア。腹に、顔にデルスティアのパンチが入る。

ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは高度を下げた。地面スレスレの高度に取る。

『ハッ……』


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 デルスティアの体はビルに叩きつけられている。それだけでは満足しないのか、ガダンゾーアはデルスティアの体を地面にめり込ませる。

『イヤァァァァァ!!』
『睦海!』

 臨海副都心の中を飛び回るガダンゾーア。容赦ない痛みがデルスティアを、睦海を襲う。

『やめろぉぉ!』

 デルスティアは尻尾の斧をガダンゾーアの背中に振り下ろした。何回も何回も振り下ろす。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは海上に出ると、デルスティアを海中に沈めた。そして再び陸地に着陸した。

『睦海?』
『……大丈夫だから…………』
『睦海、繋がりを絶つ事は出来ないのか?』
『無理よ……デルスティアが完全じゃなくなる。』
『そんな……』

ゴァァァァァァァァォン


 着陸した隙狙ったゴジラの熱線がガダンゾーアに命中した。ガダンゾーアはゴジラに向かう。

 ゴジラはガダンゾーアに再び熱線を放った。ガダンゾーアは構わずゴジラに向かう。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは触手を元に戻した。そして触手でゴジラの熱線を阻んだ。

ゴァァァァァァァァォン


 ゴジラはその瞬間を狙った。束ねられた触手を瞬時に掴み、ガタノゾーアを投げ飛ばす。


ゴァァァァァァァァォン


 ガダンゾーアの触手を離さず、何回も投げ飛ばすゴジラ。しかし、やられてばかりいるガダンゾーアでは無い。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 掴まれている触手をそのまま伸ばし、ゴジラに巻き付かせるガダンゾーア。ゴジラはそのまま触手を離さない。

『なるほど……考えたじゃないか。桐城君!麻生君!チャンスは今しか無い!』

 ガダンゾーアの背後に回った大戸号とガルーダⅡ。デルスティアもガダンゾーアの背後を狙う。

『大戸とガルーダⅡでガダンゾーアを凍らせる!とどめはデルスティアで頼む!』
『はい!』
『行くぞ!冷凍兵器、』
『一斉発射!』

 大戸から、ガルーダⅡから全ての冷凍兵器がガダンゾーアに向かった。冷凍ミサイルが、超低温レーザーが、アブソリュート・ゼロがガダンゾーアを凍らせる。

『終わりだ!』
『デストロイキャノン!』

 最大級のエネルギーで、デルスティアが光弾を放った。ゴジラをも飲み込みそうな大爆発がガダンゾーアを包んだ。

『やった……のか?』
『わからない、アブソリュート・ゼロが浸透していれば、粉々になっている筈だ。』
『確かめてみます。』

 デルスティアは、未だ爆風が消えぬ爆発地点に寄る。ガダンゾーア。姿は見えない。

『ガダンゾーア、肉眼で確認できません……』
『危ない!』

『ハッ……』

 突然、無数の触手がデルスティアを襲った。全身に触手が突き刺さった。

『うっ…………』
『あ……ああ……』

 健は無事だった。触手が刺さった衝撃こそはあるが、健のいる場所へ伸びていた触手は、間一髪でデルスティアが掴んでいた。しかし、健はそんな反応はしていない。

『睦……海……お前……』
『…………』

 応答が無い。デルスティアも機能を失った。睦海が意識を失った事の現れだった。そして、健も意識を失ってしまった。

 爆風が消え、触手の主、ガダンゾーアが地中から姿を現した。どこにもダメージを受けてなどいない。
 ガダンゾーアはデルスティアをビルに投げつけた。そして、自分の後ろで倒れているゴジラに触手を向けた。


カクゥゥゥゥゥン


 そこに、横から体当たりしてきたモスラ。しかし、逆にガダンゾーアの触手に捕まってしまう。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 首を絞められるモスラ。もがいて離そうとしても離れない触手。とうとうピクリとも動かなくなった。

ゴァァァァァァァァォン


 起き上がったゴジラは、右手にエネルギーを込めた。そして、ガダンゾーアの胸に爪をえぐり込ませる。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 悲鳴を上げるガダンゾーア。しかし、すぐに光線を放ってゴジラを吹き飛ばした。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアは続けて光線を放つ。しかし、今度は両肩の触手からも光線が放たれる。3つの光線は混じり合いながらゴジラに直撃した。


ドォォォォン


 ゴジラは海まで吹き飛ばされた。今の爆風で大戸とガルーダⅡもバランスを失った。

『な……なんて破壊力だ……』


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアはガルーダⅡにも光線を放った。光線はガルーダⅡのエンジン部分に直撃した。

『うわぁぁぁぁ!!』
『麻生君!』
『将治!』

 ガルーダⅡは制御出来ないまま墜落した。爆発はしていないものの、再飛行は絶望的だ。

ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 ガダンゾーアの触手が大戸号に迫る。船体に巻きつき、締め付けてくる。

『うわぁぁぁぁ!!』

 ガダンゾーアは大戸号にも光線を放った。触手も離れ、推力を失った大戸号も墜落する。


ガグゥゥゥゥゥゥゥゥン


 残ったのはガダンゾーアだけだった。再び廃墟と化した臨海副都心にガダンゾーアの影だけがのける。
23/27ページ
スキ