「G」という名の絶対者


1時間後




 異様な光景。と言ってしまえばそれまでだ。お台場のとあるビルの回りを取り囲むガルーダⅡ、大戸号、デルスティア、モスラ。
 大戸号は船体をゆっくり下ろし、突入準備を整えた。その中には、突入部隊を乗せている。エミーとMー11はもちろん、新城と佐藤の姿もあった。

「司令官自ら突入とはな……」

 艦長席に座る黒木がつぶやく。自分には真似できない事をやってのける人間を前にした皮肉なのかもしれない。









『桐城、聞こえるか?』
「麻生?」

 ガルーダⅡからデルスティアに通信が入る。

『お前がまさかこんな最前線にいるなんて、想像しなかった。』
「俺もだ。けど、嬉しいぜ。」
『嬉しい?』
「ああ。これから俺たちは、みんなを守る為に戦う。それがとにかく嬉しいんだ。」
『お前は常にそういう考えなのか?』
「お前は違うのか?」
『……迷っていた。祖父の影響を受けて入ったGフォースだったけど、僕はお祖父さんに認められたかっただけかもしれない。』
「麻生……」
『僕は桐城を見ていて、自分の中の当たり前が次々に壊されていくのがわかった。桐城と出会って、僕も変わったよ。僕は麻生孝昭の孫だが、それ以前に、麻生将治という人間である。僕という存在を知らしめるべきなんだと。そう考えるようになった。君は自己主張が強い人間だが、それは僕が一番見習わなければならなかった事なんだ。』
「お前も苦労してたんだな。」
『僕は真っ直ぐな気持ちで戦いたい。あの時、弥彦村をゴジラから守る為に戦った桐城のようにな。君はあの時、守りたいという事以外は考えなかったろ?』
「んん~……」
『いや、それでいいんだ。それが今一番必要な事だから。』
「そうだよな。変な事考える必要が無いんだよ。」

……俺は俺でいる。それだけだ。



 Gフォース司令室では、残った未希達が作戦を見守っていた。

「新城さんと佐藤さん大丈夫でしょうか?」
「あの2人、ああ見えて企業マフィアの支社を壊滅させた経験があるんですよ。侵入事なら心配いりません。」

 そんな会話をしている未希と寺沢をよそに、北川と藤戸、麻生も例の遺跡の話を続けていた。

「そもそも、オリハルコンとは現代でいう核と変わりは無い。怪獣を生み出す神器、恐らくそのエネルギーは、先住文明ではエネルギー源としての役割を担っていたに違いない。」
「麻生さんとは話が合いそうだ。そう。怪獣を生み出す力が使用されたのはモスラとバトラだけだが、それ以外にはあらゆる場面で使われていたと考えられる。」
「いえ、それは無いでしょう。コスモスも神器として呼んでいるほどの代物です。その存在は稀少だったと思われます。」
「では、北川先生はどうお考えで?」
「進んだ文明は必ず滅びる運命にある。それが私の持論でして。」
「はぁ……」
「進んだ文明が必ずする事。それは自然界への介入と暴走です。それはコスモスら先住文明も例外では無かった。これまでの調査結果の上では、それによって地球の怒りを買い、誕生した怪獣がバトラでした。しかし、私はそうは考えていません。」
「第3の怪獣?」
「ええ。実を言うと、私はI-Eの真の目的はコイツの復活じゃないかと思っているんですよ。」
「え?」
「オリハルコンを新たに現代に持ち込む際、I-Eはこの第3の怪獣の存在を知り、これを利用して世界の破滅を果たそうと目論んだ。」
「しかし、I-Eは世界を破滅させる役をゴジラに託したのでは……」
「I-Eはある誤算に気づいた。それは、ゴジラが人類の味方になっているという事実でした。先代ゴジラなら、まだその可能性はあった。しかし、ベビーから人類と接してきた現ゴジラを人類の敵にするのは極めて困難だった。」
「だから変えたのか……それに、DO-Mを利用してゴジラを抹殺する事も考えたのか。」
「しかし、その第3の怪獣が復活する要因とは……」
「原発事故に怪獣の戦い。更にはオリハルコンの使用。もしかしたら既に……」




「行くぞ!」

 大戸号のドリルが回転を始めたそしてその先を地面に向け、進み始めた。

「このまま進めれば、敵の中枢に突入できる。」
「しかし、敵はこのままでいるでしょうか?」
「え?」
「この大戸号が来る事なんか、容易に想像がつく。何もしない訳が無い。」
「それじゃ……」



『私は歴史の流れの中で古代の力を理解し、実行する。完全なる存在を。』
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