「G」という名の絶対者
G対策センター
江ノ島での戦いから数時間。佐藤が藤戸と北川達を連れて到着し、モスラ、デルスティアも帰還した。そして……
「研護さん……」
「心配かけてすまなかったな……」
「お父さん!」
研護に抱きつく和美と美歌。和美の目には涙も浮かんでいる。
「健は……」
「健なら……」
「父さん。」
もちろん、健の姿もあった。しかし、健はずっとうつむいたままだった。
「健、しばらく見ない間に立派になったか?」
「うるせえ!」
健は研護に向かってパンチを繰り出した。それを片手で受け止める研護。
「健。」
「どこ行ってたんだよ!心配かける真似ばっかししやがって!」
「……お前たちを危ない目に合わせたくなかったからな。まさかここまで深入りしているとは思わなかったが。」
「…………」
「今回の事が済めば、また家族一緒にいられる。あともう少しだ。」
「……ああ。さっさと終わらせてやらないとな。」
大会議室
これまでのメンバー全員が一度に集まった。極めて壮観だが、翼や美歌までいるのは不思議と言える。
まずはじめに研護が始めた。
「私はある時より、中東の災害を調査しておりました。そしてその過程で中国に渡り、再び中東まで向かった。」
「一体どうして……」
「あの災害、皆さんは藤戸さんから聞いたでしょう。タイムマシンが起こした大爆発が原因だったと。しかし、事実は違った。」
「え?」
「博士は始め、その時持ち帰ったオリハルコンの実験をしたんです。そして誕生したのは、マジロスだった。」
「え?」
「タイムマシンの爆発だけであれほどの大災害にはならない。あのマジロスが地中を進んだ事による大爆発だった。」
「じ、じゃあ、あの原発事故もマジロスが?」
「いや、マジロスはその直後、タイムマシンでこの時代の弥彦村に送られたんです。それが最初のマジロスだった。」
次はエミーが話し始める。
「あの原発事故は奴らの実験でした。連中は原発事故が起こった時の人々の動きをシミュレートしていたんです。」
「桐城さんが中国で放射能汚染を疑ったのは、マジロスがいたからですか。怪獣には大体が放射能がある。」
「しかし、放射能は無かった。核により生まれた怪獣では無かった事を彼は突き止めた。つまり、彼が調べていた事は全て連中にとって都合の悪い事だった。タイムマシンが使用された事を察知した私たちはすぐにこの時代に来て、桐城さんを保護しました。」
「そして密かにエマーソン博士を調べた……」
「藤戸さんの調べた通り、エマーソン博士の作り出した人口知能、コードネーム『I-E』が暴走し、彼をも殺害するまでに至った。タイムマシンを使用し、1万2千年前からオリハルコンを大量に持ってきたI-Eとその部下であるアンドロイドは、自らの目的を果たそうと動き出した。」
「そんな事が……」
次に立ち上がったのは亜弥香だ。
「タイムマシンが使われた事による次元の波はすぐに伝わりました。というのも、私たちの時代である異変が起きたんです。」
「ある異変?」
「ゴジラが消えたんです。そして、新たな別の存在が現れた。その原因は、あの人工知能です。」
「どういう事?」
「正確には、人工知能一味が八神に作らせたDO-Mです。人工知能が誕生し、DO-Mが作られ、そしてゴジラは倒れる。私はその事象を食い止めるべく、今から20年後、建さんと睦海のいる時代に向かった。私がやろうとしている事に睦海の協力は必要不可欠だった。私はタイムマシンを貸し出し、先に睦海だけ向かわせました。」
「覚えてる。その直後に奴が来て……亜弥香は次元転移で逃げるように言ったけどおじちゃんはそこであいつに……」
「I-Eの暴走を止めるという意味では、私とエミーさんの目的は一致していた。けど、睦海の記憶は消えてしまい、結果としてDO-Mの誕生は防げなかった。」
「とにかく、今我々がしなければならない事は只一つ。I-Eの破壊だ。」
最後に立ち上がったのはもちろん新城だ。
「敵がこちらの戦力を調べていたというのなら、お望み通り、全戦力を向けてやろうじゃないか。麻生のガルーダⅡ、黒木さん達の大戸号、デルスティアにモスラ。後は……」
『ゴジラなら心配いりません。必ずやってきますよ。』
そう言ったのは、藤戸達の前に立っていた小さな来訪者。コスモスだった。
「各員出撃準備!以上!」
戦闘要員はすぐさま準備の為に部屋を出た。健も出ようとする。
「行くのか?」
研護に呼び止められ、立ち止まる健。
「当たり前だ。全部ちゃんと守ってやんなきゃいけないからな。父さんに母さんに美歌、翼やみどり……弥彦村のみんな。俺や睦海、みんなの未来を守ってやんなきゃいけない。」
「……たけにぃ……」
「私は構わないわ。」
「和美!?」
「研護さん。あなたがいない間に、確かに健は立派になった。あなたがいない間、家族を守るって必死だったの。いつだって無茶ばかりだったけどね。」
「…………健。」
そっと立ち上がり、健を振り向かせ、抱きしめる研護。
「俺もこうして帰って来た。絶対に帰って来るって約束しろ!」
「ああ。死ぬなんて馬鹿な真似はしない。」
「兄貴……」
「たけにぃ!ガンバレ!」
「ああ!!」
翼と美歌にガッツポーズを決める健。翼も美歌も、サムズアップで返す。
「よし……」
そう言って振り向くと、そこにはみどりが立っていた。
「健…………」
「みどり、いつもお前に説教ばかりくらってたけど、もうそうは……」
「バカ!…………何なのアンタ!心配して待たなきゃいけない方の身にもなりなさいよ!」
誰よりも、いつだって一番健を心配していた。単に弟みたいに世話の焼ける存在では無くなってきている。弥彦山で助けてもらった時からずっと。いや、それより前かもしれない。
「みどり……お前もしかして……」
健が言い終わる前に、みどりは健の頬に口づけした。健は言葉を失った。
「勘違いしないでね。健が思ってるような事は考えてないから。」
「……あっそ。」
「気をつけてね。」
「ああ!!」
健は走って格納庫に向かって行った。