「G」という名の絶対者


デルスティアはゾエアの頭を掴み持ち上げた。想像を超えた力に戸惑う健。

「最高のケンカだぜ!」

 もう片方の腕でゾエアを殴るデルスティア。デルスティアは続けてミサイルを放つ。


グゴォォォォォ


 ミサイルはゾエアに命中する。しかし、ゾエアにダメージを与えられてはいないようだ。

「外骨格は異様に固い。おじちゃん、ちょっと私に任せて。」
「あ、ああ。」

 デルスティアは目からレーザーを放つ。レーザーは絶え間なくゾエアに浴びせかけられる。

「思った以上に頑丈ね……」
「でも見てみろよ。」

 ゾエアの体にひびが入りだした。ゾエアも、体を小刻みに揺らしている。

「まだよ……まだまだ。」


グゴォォォォォ


 ひびは外骨格全体に広がった。ゾエアの動きも止まった。

「今よ!」
「よっしゃ!」

 デルスティアはゾエアの外骨格に渾身の一撃を食らわせた。外骨格は一気に砕け散った。

「こいつを……」

 ゾエアを持ち上げるデルスティア。

「危ない!」

 その時、背後から別のゾエアが現れた。デルスティアの後ろにのしかかっている。

「2匹?」
「隠れてたわね!」

 ゾエアはデルスティアに口を突き刺した。

「うっうう……」
「睦海?」
「いいの。それより……」

 デルスティアは背中のゾエアを離し、投げ飛ばした。デルスティアの前には、2匹のゾエアが並ぶ。

「ふぅ…………」
「な、なあ睦海、もしかして……」
「私は大丈夫よ。それより、あまりいい状況とは言えないね。」
「ああ……」

 ゾエアが2匹。個体としての戦闘能力だけならデルスティアが圧倒的しているが、健はまだ若干動きが慣れていないという障害もある。


グゴォォォォォ


 ゾエアが2匹同時に飛びかかって来た。

ドォォォォン


 何が起こったのか。空からの光線がゾエアを撃ち落とした。

「い、今のは……」
「おじちゃん、あれ!」


カクゥゥゥゥン


 空から降りてきた。宇宙に飛び立っていたモスラが今、戻って来たのだ。

「モスラよ!」
「あれが……みどりが言ってたモスラ……」

 モスラは倒れているゾエアに鱗粉を浴びせている。鱗粉に耐えられず、悶えるゾエア。



「駄目だ!モスラを下がらせないと!」

 司令室で突然叫びだした研護。それに続き、その横でつぶやくエミー。さっき司令室に到着した。

「そうね。このままだと連中の思う壺だわ。」
「どういう事です?」
「連中が何故、世界中に怪獣を出現させたのか。その理由と関係あります。」
「何だと?」
「つまり、敵はこちらの戦力を計っているんです。昨日だけでガルーダⅡに大戸号、ゴジラ、デルスティアの戦力を測定された。そしてモスラです。」

「それには心配いらないでしょう。」

 黒木とセバスチャンがメカニックラボから戻って来た。黒木は先にセバスチャンに呼び出されていた。

「ミンナ!敵の基地見つけたヨーグルト!」
「本当ですか?」
「新城さん。敵の本拠地は東京臨海副都心にあるようだ。」
「なっ…………」

 東京臨海副都心。先代ゴジラのメルトダウンで一度死の街になったエリアだ。

「そんな場所に、どうやって……」
「簡単だ。臨海副都心復興工事のどさくさに紛れたんでしょう。」
「そうなの?」

 エミーは、Mー11が抱えているγに問いかける。しかし、素直に答えないγ。

「そう思えばいい。どのみち我が命ももう無い。」
「臨海副都心にあるのね?」
「それは……うっうぁぁぁ!!」

 γは最後の叫びを上げた後、爆発した。それを察知してMー11がとっさにγを抱え込んだために、ほとんど小規模ですんだ。

「間違いない。敵は臨海副都心だ。新城、都心から半径20キロ圏内に避難命令だ。」
「はい。」





横浜労災病院



「モスラが来たか……」

 一晩中北川らと話していた藤戸。テレビでデルスティアとゾエアの戦いが中継されていた。雅子はすっかり眠っている。

「北川さん。あなたの仮説が本当かどうか確かめに行きませんか?」
「ええ。もし本当なら、今以上に大変な事になりかねませんから。」
「はい。しかし……」

 何しろ、一睡もせずに話していたものだから、佐藤も玲奈も真一も眠ってしまっている。



Gフォース宿舎




「おばさん!姐さん!美歌ちゃん!」

 女3人で寝ている部屋にドアを叩いて呼びかけている翼。その騒音とも言える音に耐えかねたみどり。

「うるさいわね!朝から何?」
「親父から電話があったんすけど……色々ありすぎて……」

 すっかり落ち着きを失っている翼。パニック状態な翼に呆れ顔のみどり。

「だから?」
「順番に話すと、兄貴が昨日のロボットに乗って今怪獣と戦ってるんすよ。」
「健が!?」
「あと、敵のロボットが現れた、と思ったら別の未来人が現れて……そうだ!兄貴の親父さんが帰って来たっす!あとモスラも来たっす!」
「ええ!?」
「嘘!?」
「研護さんが……」

 今の言葉で皆目を覚ました。

「翼君、今どこにいるの?」
「今、司令室にいるっす!」
「お父さんが帰って来たの?」
「すぐに行くわよ。」



カクゥゥゥゥン



 モスラの鱗粉に動きを封じられているゾエア。デルスティアはゾエアに狙いを定める。

「睦海、必殺技をかましてやろうぜ!」
「いいわ。デストロイキャノンね。」

 デルスティアのエネルギーチャージが始まった。モスラは更に光線をゾエアに向かって放つ。ゾエアはほぼ瀕死状態にある。

「とどめね。一気に行くわ。」
「発射!」

 モスラはゾエアから距離を取った。その直後に、デストロイキャノンがそれぞれゾエアに着弾した。
 デストロイキャノンの爆発がゾエアを消し去った。モスラはデルスティアの方に振り向いた。

「モスラ……」


カクゥゥゥゥン


 モスラはデルスティアに視線を送った後、つくばに向かって行った。

「流石はモスラだ。」
「おじちゃん、私たちも一旦戻ろ。」
「なあ睦海、デルスティアの受けたダメージって……」
「デルスティアのシステムと直結しているから、私にも……」
「…………」
「でも、私は平気だから。健は思いっきり戦ってね。」
「ああ……」
16/27ページ
スキ