「G」という名の絶対者
翌日
『怪獣出現!』
再び、司令室に鳴り響く警報。怪獣出現を知らせる警報だ。
「場所は?」
「相模湾、江ノ島付近です!」
『新城さん!』
「……健君か?」
デルスティアドックから聞こえてきた通信。健と睦海は今、デルスティアの足元にいる。
『デルスティアで行かせてください!』
「なっ……何を考えているんだ?素人に行かせる訳には……」
「新城さん。」
新城の後ろから、亜弥香が話しかける。亜弥香も最初は反対したが、睦海の説得に折れた。
「行かせてあげてください。睦海が言うんです。彼じゃなきゃ駄目だと。」
「しかし……」
「昨日の私のデルスティアでは、実力を発揮できていないんです。お願いできますか?」
「……デルスティアは安全ですか?」
「敵はゾエア。いざとなれば、睦海だけでも勝てる相手です。」
「よし、総員、デルスティア出撃準備だ!」
整備班に指令を通達する新城。
「すみません。」
「ん?」
格納庫
「…………目標補足。」
デルスティアの影から、健を狙う影。しかし、睦海も健も気づいていない。影は右手を巨大な剣に形を変えた。
「死を!」
一瞬の内に、影と健の距離が詰まった。睦海がそれに気づいた時には手遅れだった。
「健危ない!」
「え?」
「ぐはっ……!」
間一髪、何かが健を抱えて倒れ、何かが影の剣を止めた。
「オマエは…………」
「あなたは?」
健をかばった女性。かなり大人びているが、亜弥香と同じ感じがする。
「大丈夫?桐城健君。」
「あんた……誰?」
「エミー・カノー、未来人よ。」
「アンドロイド、M-11……」
「我々の数世代も後の型だと……」
状況がさっぱり読めない健。しかし、睦海は冷静に判断した。
……亜弥香、23世紀人が現れたわ。
『本当に現れるなんてね……』
「我々の予測を超えた出来事に、我々は私によって、対処する。」
「Mー5、γ。ソレデハ、カテナイ。」
γは両手を剣に変えて、Mー11に切りかかった。しかし、それを素手で受け止めたMー11。逆にγの左手を掴む。
「くっ…………」
必死に離そうとするγに比べ、Mー11は余裕の表情だ。笑ってすらいる。そのまま、γの腹を蹴り飛ばした。
「がぁぁ!」
γの左手は千切られた。Mー11はそれを投げ捨てると、一瞬でγの懐に入った。
「なっ…………」
Mー11はγの腹に一発パンチを入れた。γは今の一撃で致命傷を被った。
「流石、何世代も進んだアンドロイドだわ……まるで寄せ付けない。」
同じアンドロイドである睦海は、その圧倒的な力に見入っていた。
Mー11は更に、γの首を体から切り離した。本体の動きは完全に停止。Mー11は首を抱えてエミーの元に持ってくる。
「早かったわね。Mー11。」
「Sure 問題ありまセン。」
メカニックラボ
「キター!キタキタキタキタ北品川!」
γに送られていた指令電波を、見事にキャッチしたαの電波受信系統。セバスチャンは逆探知機を作動した。
「ヨシ!電波キャッチ!逃がさん象~。」
セバスチャンの機械は、すぐに場所を特定した。しかし、その場所はにわかには信じにくい場所だった。
「……トーキョー?」
「さあ答えなさい。あなたの本拠地はどこ?」
エミーは、文字通り手も足も出ないγに対し問い詰める。
「教えた所で所詮無意味にすぎない。」
「と、強情を張ってもしょうがないわね。あなた達の事は彼と共にあらかた調べ尽くしたから。」
「…………!」
「彼って、寺沢健一郎でしょ?あなたは亜弥香に、自分が寺沢氏の子孫である事を伝えた…………」
「22世紀のお嬢さん。」
エミーと亜弥香は前もって知り合っていた仲だったようだ。その事を、一部ではあるが、睦海は亜弥香から聞いていた。
「残念だけど違うわ。寺沢さんにはここに案内してもらっただけ。今頃、彼と一緒に新城さん達に会っている頃じゃないかな?」
「え?」
「あなた達は……」
「桐城研護さん!?」
未希は写真を見た事があったからすぐに分かった。寺沢と一緒に現れた男は、行方不明になっていた健の父、研護だった。
「三枝さん。桐城の奴はエミーに保護されていたんですよ。」
「エミー?エミーも来ているんですか?」
「驚きましたよ。Mー11も一緒なんですから。」
しかし、研護が現れた事の方が驚きだ。一体何が起こってこうなったのか。聞きたい事は山ほどある。
「エミーに保護されたって、いつからです?」
「タイムマシンの事故が起こった直後辺りですかね。エミーさんに「狙われるから」って。」
「色々聞きたい事はありますが……」
「その前に、和美と健は今どこに?……まず2人に会いたい。」
「和美さんは宿舎にいるかと。健君は……」
「健は?」
「睦海、今はとりあえずゾエアを倒そう!話はそれからだ。」
「え……ええ。そうね。」
エミーとの話を中断させ、睦海は健と手を繋ぎ、デルスティアの中に入った。
「このロボット……」
「MーRinkの原型とナったメカ……」
このMーRinkシステム。あのメカキングギドラにも似たような操縦システムが使用されていた。
「江ノ島まではどれくらいで着くかな?」
「0.5秒。」
「え?」
健が聞き返す間も無く、デルスティアは瞬間移動した。
「新城!デルスティアが消えたぞ!」
「麻生さん、江ノ島の映像を出してみてください!」
言われるままに映像を切り替える麻生。確かに江ノ島にデルスティアがいた。
「瞬間移動?」
「昨日も見せていました。」
「桐城さん。健君は、あの中です。」
「健が、あのロボットで戦っているだって……」
「おじちゃんはおじちゃんの思うままに戦えばいいから。」
「まさか……怪獣と本当に殴り合いができるなんてな……けど、」
「けど?」
健はデルスティアの両腕を気にしていた。銃の形になっている両腕では殴りにくい。
「デルスティアは肉弾戦主体に構築されたデザインじゃないから……一応変形はできるけど?」
「本当か?よし、それなら……」
グゴォォォォォ
そう言っている間に、ゾエアが先に仕掛けた。ゾエアはハサミを伸ばし、デルスティアの首を掴んだ。
「不意打ちかよ!えっと……こうか!」
デルスティアは慌てずに尻尾の斧でゾエアの腕を切断した。そしてそのまま、レーザー機銃を放つ。
「俺を怒らせると怖いぞ!」
健が念じると、デルスティアの両腕が変形した。健に似合う、大きな拳だ。
「睦海、ちょうどハードに動くけど、大丈夫だよな?」
「もちろん!」