「G」という名の絶対者
デルスティアは、最後にモゲラを収納していたドックに収納された。亜弥香の指示で点検作業が行われている最中だ。
その様子を見ている健達。睦海は建に小さな端末を渡した。
「これは?」
「次元転移装置。タイムマシンとはまた違うの。まあ言い換えれば、瞬間移動する装置かな。」
「へぇ……」
「ほら。」
睦海は健の手を強く握り締めた。
「スイッチを押してみて。」
「あ……ああ。」
頬を赤く染めながら、健は転移装置のスイッチを押した。すると、健と睦海が一瞬の内に消えてしまった。
「健!?」
「桐城?」
「あれ?たけにぃどこ?」
「兄貴……」
『ここよ。デルスティアの中枢。』
外部に音声を流している為、よく聞こえた。声が聞こえた瞬間、一斉にデルスティアに振り向く。
「本当に……」
「瞬間移動だと?テレポーテーションか……」
「ここは?」
いつの間にか、見知らぬ場所に移されていた健。不思議な空間だ。戦闘機の操縦席ほどの狭さのはずなのに、広く感じられる。
「デルスティアの中枢。操縦席よ。」
「睦海?」
「おじちゃんには私といっしょに、デルスティアとして戦って欲しいの。」
「え?」
「MーRinkシステム作動。」
健の背後に立っていた睦海。ハッと気付くと、両手と両足の先に機械が取り付けられていて、健の手と足を埋め尽くしていた。
「おじちゃんの動きがそのままデルスティアの動きになる。そして……」
睦海はそう言うと、いきなり上着を脱ぎはじめた。健は思わず、睦海から目をそらす。
「…………」
「ん?どうしたの?」
「なっ何で脱ぐんだよ!?」
「別に平気よ。私アンドロイドだし。」
「そういう問題じゃねぇ!」
そのまま服を脱いでいく睦海。体中にコードを取り付ける差込口がある。
「いいわよ。」
「ほ……本当かよ。」
「いいから、振り向いてよ。」
そ~っと振り向く健。しかし、そこに睦海の姿は無かった。
「え?あれ?」
「今、私の体とデルスティアを繋いだ。そして、おじちゃんの中枢神経にもね。」
睦海は今、デルスティアの中枢の別の空間にいた。首、両手両足、背中にコードが差し込まれている。
「感じない?今私とおじちゃんは文字通り一心同体になってるの。」
「……よくわかんね。」
「だと思った。MーRinkシステムは、アンドロイドとロボット、そして搭乗者を直接繋ぎ、ロボットの完全動作を可能にしてくれるの。」
「……え?」
「デルスティアは私がこうして操縦系統と繋がるだけでも動作は可能なの。けど、物理動作情報は完全じゃない。つまり、動きが鈍る訳。そこで、生身の人間の動きの情報を私のようなアンドロイドを介してデルスティアに送るの。」
「簡単に言ってしまえば、俺の動きがそのままデルスティアの動きになるんだな?」
「そう。そして、おじちゃんが飛びたいとか、ミサイルや光線を撃ちたいって思えば、私がそれを実行する。」
「思えばいいんだな?」
「狙う場所もちゃんと考えてね。じゃ、一旦MーRinkシステムを切るわよ。」
スイッチが切られ、健の手足の機械も離れた。中枢空間から睦海が出てきて、服を着るまで健は一歩も動かなかった。
「ふぅ。いいわよ。」
「まったく……」
「けど、どうして恥ずかしがるの?私なんか、もうアンドロイドとしての体でしか無いのに。」
「そ、そういう問題じゃねぇ!お前中身は女なんだから、恥ずかしがるとかしろよ!こんな男の前で堂々と……」
「……フフッ。未来のおじちゃんにも同じ事言われた。」
「え?」
「私がアンドロイドになったばかりの頃にね。まったく同じ事を。」
「そうか……」
メカニックラボ
「実験準備OK!!いつでもどうゾウリムシ!」
「……セバスチャン博士?」
いきなりセバスチャンに呼び出された麻生と新城。ラボの真ん中には、防弾ガラスに囲まれて眠っているアンドロイドαがあった。と言っても、再起不能なまでにバラバラだが。
「一体、何をなさろうとしているのか……私にはわかりませんが……」
「OK?テキは指令のデンパをアンドロイドに送っていルーマニア。それも世界中に。」
「ええ……」
「つまり、この電波受信系統ノミ復元したαにも電波は届屈斜路湖!」
「それを逆探知しようと?」
「それじゃ!YES!YES!」
「セバスチャン博士の意図は分かりました。しかし、いつ奴が指令を送るのか……」
「必ずキマス。怪獣を全滅させられて何もシナイ訳がナイ。」
「……では待ちましょう。新たな指令が来るまで。」