「G」という名の絶対者
横浜労災病院
藤戸との面会が認められ、佐藤と北川達は病室に入った。
「あ……」
「…………あなた方は?」
藤戸のそばに付き添っている女性に佐藤は心当たりがあった。
「もしかして、手塚さんですか?手塚雅子さん。」
「ええ、そうですよ。」
みどりの母である彼女。国際環境計画局に勤めている人物だ。
「Gフォースの佐藤です。こちらは、応林大学の北川先生です。」
「北川です。それに、助手の神崎さんと中村君です。」
「どうも……」
「こんにちは。」
北川達も次々に挨拶する中、肝心の藤戸はまだ眠ったままだ。
「今も昔も、手を焼かせっぱなしで、変わり映えも無くって……」
「手塚さんと藤戸さんって、ご夫婦ですよね?」
「勘違いしないでください。籍上は元夫婦です。いつまでも家庭をほったらかしの男とは、しばらくくっつきませんよ。」
「藤戸さんは、みどりさんに嘘をつきたくなくって……」
「だから?私もあの子も、3人で……暮らす事を望みましたよ。国際捜査官だか何だかわかりませんが、そっちの方がずっと幸せでしたよ……」
この言葉。藤戸に直接語りかけているように思えた。
「ご主人は、いつ目を覚ましますか?」
ここで北川が、この和やかな空気をぶち壊す一言を言い放った。
「さあ……処置が終わったらすぐに寝ましたから……」
「そういえば、手塚さんもインファント島に行かれたんですよね?」
「ええ……まあ……」
「という事は、あの遺跡もご覧になった!」
「あの、だから何です?」
「これを……」
と北川が言っている間に、玲奈はローマでの調査資料を並べて見せた。
「これ、モスラとバトラじゃありませんか?」
「その通り。」
雅子は、自分の記憶を可能な限り掘り出した。あの時見た、モスラとバトラの壁画と瓜二つだ。
「あのインファント島以外にも、モスラの言い伝えが残っている場所が?」
「いえ。1万2千年前のどの遺跡を見ても、共通の壁画がありました。それが、モスラとバトラの絵でした。」
「…………つまり?」
「あのインファント島はモスラ、いや、オリハルコンを使う場所としての聖地だったんだ。」
北川の声では無い。雅子が振り向くと、ゆっくりと起き上がる藤戸の姿があった。
「そうですよね?北川先生。」
「藤戸拓也さん。初めまして。私の事はご存知のようで。」
「ええ。世界を股に掛ける考古学者。」
「今から私が話す事は只の仮説ですが、聞いてください。」