「G」という名の絶対者


「うおお?」
「何だありゃ?」

 筑波に突然現れたデルスティアに、Gフォース職員もパニックになりかけた。新城の呼びかけがそれを阻止した。

「すげぇ……」
「こんなロボットが……」

 健達は、誰の制止も聞かず、デルスティアの足元までやってきた。

「睦海!いるんだろ?なぁ!」

 健がいくら呼びかけても、デルスティアからは反応が無い。銅像のように固まったままだ。

「どこからコックピットに入るのか……」
「よし、とりあえず登るぞ!」

 そう言って、デルスティアの足から登りだした健。それを見て誰もが溜め息をつく。

「たけにぃ、本当に登れる?」
「ったりまえだろ!」
「桐城、登ったところでコックピットに入れる保証はないぞ。」
「うるせえな!じゃあお前俺より先にコックピットに入れよ!」
「はぁ……」

「そんな事しなくても平気よ。桐城健さん。」

 後ろから聞こえた女性の声。振り向くとそこには、睦海を連れ去った女と、完全に復元されていたシエル、もとい睦海がいた。

「お約束通り、すぐに戻って来ましたよ。」
「ああ……あんた一体……」
「私の名前は遠野亜弥香。シエル……じゃなくて、睦海と同じ時代からやって来ました。」
「睦海と同じ時代?」
「正確には、もっと先の未来から、睦海の手助けの為に来ている。だから私、健さんの事もよく知ってますよ。」

 やはり彼女も未来人だった。しかし、健はそんな事はお構いなしに、睦海の元に歩み寄る。

「……外見は変わっていないようだけど……」
「うん。ほら、私頭は無事だったじゃない?だから、脳の部分だけを同じ型のアンドロイドに移植したの。」
「……よかった。」

 健はそのまま、睦海を抱きしめる。やはり、その体はどこか固く、冷たい。しかし、健は感じていた。鉄の塊かもしれないこのアンドロイドには、睦海という名の少女の心が宿っていると。




「つまり、状況を整理するとこういう事なんですね?一連の出来事を引き起こす元凶になった人口知能はどこかにいて、自分の手下にオリハルコンを使わせている。と。」

 新城は亜弥香と睦海にこれまでの事を話した。亜弥香には、これまでに睦海から状況を聞き出す時間が無かった。

「敵の本拠地は今、セバスチャン博士が特定している。ガルーダⅡ、大戸号、そしてあなた方のデルスティアによる一斉攻撃も時間の問題だ。」
「しかし、腑に落ちない事が1つ。」

 黒木だけは、亜弥香の訪問を快く思っていなかった。

「あんた未来人って事は、当然タイムマシンも所持している。違いますか?」
「ええ。」
「なら、エマーソン博士がオリハルコンを持ち込めないようにタイムマシンを破壊してしまうとかできたんじゃありませんか?」
「それは不可能でした。そもそも、未来には今回の一連の出来事は記録されていません。」
「え?」
「そもそも私達は、ゴジラを滅ぼそうとする者を止める為に動いているんです。しかし、人工知能がゴジラを倒すなんて記録はありません。それに、」
「それに?」
「エマーソン博士のタイムマシン実験には、私と睦海では無い、別の次元の未来人が関わっていました。」
「別の次元の未来人?」



寺沢邸


「国際捜査官だったのか。お前の感もたまには外れるんだな。」
『驚きましたよ……絶対怪しいと思ってたのに……』

 寺沢の電話の相手は、弥彦村にいたジャーナリストの志真哲平だ。弥彦村での取材の愚痴をジャーナリスト仲間桐城健吾の紹介で知り合った寺沢に聞いてもらっている最中らしい。

「俺も色々と関わってるよ。それに、桐城の事もあるから目を離せないんだ。今回の事は。」
『そうですか。じゃ、また面白い話があったらお願いします。』
「あいよ。」

 電話を切り、一息つく寺沢。

『寺沢さん、お久しぶり。』
「……ちょっと待てよ……」
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