「G」という名の絶対者


「どういう事だよそれ!」

 Gフォースの正面玄関に、健の叫び声が響く。健は翼の胸ぐらをつかみ上げている。

「睦海がさらわれたって……冗談言うな!」
「健やめて!青木のおじさんがいてもどうにもならなかったんだから!」

 必死で健を止めようとするみどり。健も多少落ち着きを取り戻したのか、翼を下ろす。

「兄貴、面目ないっす……俺っちがいながら……」
「……いや、いい。どっちにしろ、あいつは動いてくれない。」
「けど兄貴、確かにその女の人、すぐに戻るって言ってましたよ。ねえ、親父、姐さん。」
「ああ。彼女もまた、未来人なのかもしれない……」

 大人の一馬ですら、あの出来事には見ているしか無かった。常識では考えられない事ばかりだった。

「とにかく、この事を新城さんにも報告しよう。それに、大戸とガルーダⅡも帰還するらしいし。」

 一馬と翼は、さっさと中へ入って行った。健とみどりが、そのまま立っている。

「……なあみどり、未来の俺って、どんな男になっているのかな……」
「睦海ちゃん、あなたの事を命がけで守ろうとしてた。それくらい、大切な存在、としか言えないわね。」
「そういう男に俺はなれてるんだよな?」
「今だって……近づいているわ。そういう男に。」




数時間後



 大戸とガルーダⅡが帰還し、将治と黒木達大戸のクルーは、司令室に呼ばれていた。

「欧州、アジア圏は勝利した。しかし、補給作業終了後、北米での戦いが待っている。気を抜かないで下さい。」
「もちろん、気を抜くつもりなどありませんよ。」
「それと、大戸の艦長に会いたいという方がいて……」
「私に?」

 不思議そうな顔をして首をかしげる黒木。

「大戸開発に力を貸してくれた、セバスチャン・ジョックス博士です。」
「オウ!アナタガタガタが大戸のクルー?」

 新城の紹介と共に、なにやらテンション高めの外人がやってきた。新城は思っていた。多分間違いなく、黒木の苦手なタイプの人間じゃないかと。

「……は、初めまして。陸上自衛隊特将の黒木です。」
「イヤー!ウレシイ!!大戸の加齢ナル初戦を勝ちで終わらせてくれて!イヤー!果報は寝て待つとはこの事ヨ!」
「はあ……」
「セバスチャン博士には、例のアンドロイドの分析もお願いしたんです。」
「例のって、αとかβとか名乗っていたとかいうアンドロイドの?」
「ソウ!やはり現代技術でハ到底不可能ナ構造で知多半島!」
「…………で?」

 黒木は限界だった。1秒でも早くこの空間から脱したい。というか、セバスチャンを追い出したかった。

「彼らをコントロール、モシクは、監視、発信機のような機械が馬ってまし。電波を辿レバー、敵の本拠地の場所も分かる鴨!」
「…………ええ!?それは本当ですか?」

 あまり真面目に聞いていなかった黒木だが、今の言葉には反応せざるを得なかった。

「マア、手首長くシテ待てて!突き止めて見せ留守番電話!」
「…………とにかく、お願いします。」

 セバスチャンのノリはともかく、やっている事は一応まともそうなので安心はした。

「功二、モスラが来てるって言うのは本当みたいだ。宇宙レーダーを見てみろ。」

 宇宙レーダーは、地球に向かって来ている物体を捉えていた。

「モスラが…………みどりさん。確かあなたは……」
「はい。」

 最初にモスラが向かっているという情報を、未希から聞いた時、何とも言えない嬉しさと懐かしさが込み上げていた。

「そういえば、藤戸さんはどこの病院に運ばれましたか?」
「え……横浜労災病院ですが……」
「キヨ。ここはいいから、あの方々を藤戸さんと合わせてくれないか?」
「ん?」

 新城が指したのは、黒木が欧州から連れてきた北川達だった。研究生は北川が帰した為、今いるのは、北川と玲奈と真一だけだった。

「新城さん、藤戸ってまさか、藤戸拓也じゃ……」
「おや?藤戸さんをご存知で?」
「あの手の人間は考古学会では名前は知られるんです。貴重な遺跡を荒らす悪人としてね。」
「え?」

 みどりとしては、今の北川の言葉は複雑だった。自分の父親を悪人呼ばわりされて、引っかからない訳が無い。

「悪人って……言い過ぎじゃありませんか?」
「あなたは……」
「娘のみどりです!」
「娘さんでしたか……いや、考古学を研究している者としての意見なので……」
「確かに、父がやっていた事は、罪に問われるような事ではあります。けど、インファント島の遺跡調査には協力しましたよ!」
「おお!それそれ。やはりお父さんはインファント島の遺跡の調査に関わっていたんですね!?」
「は…………はい。」
「それについて、お父さんとお話したいんですよ。」
「はあ……」
「いや、確かに、彼の過去は考古学者としては許したくありません。しかし、今と過去は別として考えるべき時と、一緒に考えるべき時があるんです。」
「…………」
「私は、1万2千年前の文明を解き明かせるなら、彼の過去はとがめませんよ。」

 みどりに笑顔で力説し、北川達は藤戸の病院に向かう。
「何か、北川っておっさんも、セバスチャンって外人も、変だよな。」
「ああ……僕もそう思う。」

 そんな事を小声で話す健と将治だったが、孝昭に睨まれるとすぐに黙り込む。

「それより聞いたぜ。お前、1人でガルーダⅡで戦ってて、てんてこ舞いだったってな。」
「うるさい。そんなもの、補充訓練すれば何てことは無い。しかし桐城、お前はこれからどうするんだ?」
「決まってんだろ?まずは睦海をさらった奴が現れるのをだな……」

「功二さん!あれ見て!」
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